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月島

「バレーにハマった瞬間?」「そう」従弟くんってば、難しいことを聞くなぁと頭をかく、そんなの楽しいからに決まっているだろう。しかしそんな簡単な話をしてもきっとこの子は納得しないだろう。「私の場合は、ほら、この身長だからリベロなんだけどさ」「うん」「低い打点でリバウンド拾って繋ぐわけで」「うん」「一度だけ、トスを上げるチャンスがあったわけだ、そんでエースがスパイク決めて点取って、取り返して逆転できたことがあった。あの時はもみくしゃにされて喜んだね。スパイク打つより何より“繋ぐ”ことへの執着が完成したって言うかさ、私が立ち回らないと試合が勝ちに進まない、スパイカー達はチームは私がいないと二回目の攻撃ができないって言うかさ、驕りだけどそう思ったらリベロの大切さを知ったんだ。リベロは万能だってね」「そう」「トスを上げちゃダメだって訳じゃないし身長さえあればスパイクだっていいわけで、まあ、えーっと、万能であれと思ったら神にすらなった気分だったね」「ふぅん」「けいちゃんもそう思える時が来るよ、やっていれば、いつか。もしかしたら止める寸前かもしれないけどさあ」あ、言い過ぎた?けいちゃ
んは黙ってしまった。でも優等生なけいちゃんにはガツンと言わないと駄目なんだよね。逃げ道しか作ってないだろうし。「姉さん、ありがとう」「は?」「友達にも言われたんだけど、今、なんとなく、消化出来た気がする」「そう?ありがとうのほっぺする?」「しない」「あら」

月島

昼休み、月島君の教室に行ったら日向君と影山くんがいた。びっくり、いつの間に仲良しに----なったわけではないそうで、追い返しているのが見えた。補修の件かな?「先輩、遅かったですね」「え、ああ、なんかお取り込み中みたいだったから。見てた」「勉強教えろって」「大変ね、私でよければ教えるのに」「だめです」「え?」「先輩、すぐ優しくするから俺が嫌だけど引き受けたんですよ、努力を無駄にされると困ります」「はぁ、すみません」何故私が謝るしかないのだろうか、心配してるのかな、心配なんてしなくてもいいのに。「あいつら、人懐っこいから先輩すぐに仲良くなるでしょう?」「仲良くなりたいじゃん、可愛い後輩君だよ?」「ほどほどにしてくださいね」「心配しなくても私は----あ、なんでもない。ご飯行こうよ」「はい」あまり言うと怒らせちゃうから辞めておこう。うん。

月島

「先輩」「お、月島君じゃないか」「何してるんですか?」「ごみ捨て、ジャンケンで負けちゃってさ」いやはや格好悪いところをと笑えばサッと彼は袋を取ってくれた。驚いて固まると彼は振り返り首をかしげてまた「先輩?」と私を呼ぶのだ。「あ、ありがとう」「別に、このぐらい」「き、今日は何時ごろになるの?」「いつもの時間かと」「そっか、じゃあ待ってるよ。一緒に帰ろう?」「はい」月島君は良い奴だと思うし格好良いと思うのになんで私なんかを好きになったのかな。どちらかというともっと清楚な子の方がお似合いかと思うんですけど。それを言うと不機嫌になっちゃうから言わないけど、部活忙しいだろうに私なんかに時間裂いていいのかな。不安に、なる。今年からもうレギュラーになってるのに。私のせいで足を引っ張るようならさっさと言って欲しいものだ。邪魔者は泡となってその存在を消すのに。「余計なこと、考えてませんか?」「はひ?」「先輩は早く俺のことだけを見ていればいいんです。」ひそ、ひそ、耳打ちをするかのように声を潜める月島君に私の顔は茹で蛸状態だった。なんだそれ、なんだそれ!まるで私が月島君のこと好きじゃないみ
たいじゃないか!「心配しなくても、月島君しか見えてないから」ひそひそ「月島君も私だけを見ていなさい」ひそひそ、そんなことを言ったのに顔色ひとつ変えずに「当たり前じゃないですか」なぁんて返す彼、余裕綽々ではないか。「私は3年生だから」「はい?」「ひとつでも多くの試合を見せてね」「見に来るんですか?」「マネちゃんに声かけられてるから一緒に行くよ、試合となると忙しいし一年の子に教えなきゃいけないからってさ。大丈夫、中学の時バレー部だったからスコアボードもばっちり」「知りませんでした」「今言いました、え?私、音駒の時も居たじゃん」「臨時かと」「臨時だよ、ウチの親、部活嫌いだからね。高校は勉強勉強だし、進学しなくちゃならないし」家業を継ぐ、それでも月島君は「次男ですから」と言って笑ってくれた。「けいちゃん、ありがとうね」「学校では呼ばないでください」「あはは、ごめんごめん」

@排球

「好きです」校舎裏にそんな声が溶けた。私はやっちまったと頭を抱えて憩いの時間を終了しようかと立ち上がる。さっき見えたウチのリベロ、ノヤが告白されたと知って----なんとなく空を見上げた。気にならないと言ったら嘘になるが震えるような女子生徒の声を聞いてしまっては冷やかすなんて出来ないと感じて、立ち上がる。「よう、なにしてんの?」「やあ。モテる男は辛いね」「見てたのかよ」「いや、ここは私の憩いの場なんですけど」ノヤは何もなかったかのように私の隣にいて、部活の話を始めた。音駒戦、楽しみだな。とか今年の一年は良い奴らばっかりだな。とか、知ってるわ私はお前らの代のマネやってんじゃと言いたかったけど「そうだねー」と気のない返事しか出来なかった。調子狂うなお喋りなノヤは通常運転な筈なのに。「お前さ」「ん?」「ヒト嫌いなのにバレー部には優しいよな」「バレー好きだから」「そーだよな、じゃなかなったらマネなんてやらないよな」ノヤは私がバレーを辞めた理由を知っているから気が楽だ。飛べない私は今や頭脳派、本当は動きたくて試合したくてウズウズしてるのだけれど脚がそれを許してくれないのだ。「俺
がさ」「うん?」「今年か、来年か、全国見せてやるから」「ほう、弱気だね」「こ、と、し!」「よろしい、私も全力でサポートしましょう」「偉そうだな」「ノヤこそ、来年とか言わないでよね、スガさんたちと全国見るんでしょ?」「あたりまえ!」私と彼はこの温度が丁度良い。清水さんの美しさに翻弄されてスガさんたちと笑って、----なのに、顔も知らない女子生徒が少しだけ羨ましく感じた。ノヤの「ごめんな、好きなヒトいるから」という呟きが頭から離れない。清水さんのことだろうけど知っているけど、本当は私だって----「お前さあ」「ん?」「このままサボらない?」「嫌です、次は」「いーからいーから、たまには休もうぜ」「教頭に知られても知らないからね」「今日は出張だからオーケィ」「そ、そういうことならたまにはいいかなあ」揺さぶらないでよ、気を持たせないでよ、ノヤは私のことマネージャーとしてしか見てないくせに。友達としてしか見てないくせに。アンタの優しさは時々残酷なんだよ。「さっきのやつ、内緒な」「あらノヤさん、私は何も見ていませんし聞いていませんよ」「--さんきゅ」

一番聞かれたくない奴に聞かれてしまった、昼休みの呼び出しはどうやら、こいつは気にしてないみたいだ。良かったと思いつつサボり提案したらノッてきたし、もしかしたら具合でも悪いのだろうか。清水さんとは正反対な性格だし容姿も届かないのに気になってしまうのは俺だけではないらしい。一年もこいつの魅力に気付きつつある。厄介だなあ。全国見せて、優勝したら、----遅くとも卒業前には伝えなくちゃ後悔するんだろうこの思い、しかし今じゃない気がするんだよななんとなく気まずいし。「ノヤ、早く部活に行きたいね」「そうだな」「あと1コマかー次は家庭科だからいかなくちゃな」「なに作るんだ?」「甘い甘いクッキー、食べる?」「予約した!だから誰にもやるなよ」「たくさんできるんだから分けてあげなよ」「腹壊すのは俺だけで良い!」「失礼な奴だな」

リベロ

3年生になって新入部員に期待しつつ、今日も清水さんと部活の話に花を咲かせていた。あいつはどうするのだろう、さっさと戻らないと簡単に新入部員に取られてしまうのではないか、そんな心配が頭をよぎった。リベロ、それは特別な響きが混ざっているようで耳がくすぐったくなるのだ。「戻ってくるといいわね」「そうですね、エース共々どう説教してやろうかしら」「違うわ、そうじゃなくて」「え?」体育館の隅っこで私は今日も見えないリベロを目で追う。あいつなら床とボールにたった2センチの壁をその身体で作り、繋ぐことが出来るのに。床に伏しても高みを見上げることになっても、あいつは---- 「だって、見てる」「、何が?」「見えない何かを、貴女は見ているのでしょう?そんな顔してる」「だっ、ちが、あー!そうだ、スガくんと作戦会議してきまーぁす」
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