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メモ

柳連二(大学進学19)夢主(28)
母親の親友の子で一時預かる。一人暮らしは心配なのでルームシェアにした。
夢主は大まかに見て作家を名乗る。在宅業なので週に3回程知り合いのカフェを手伝っている。
蓮二とは小さい頃に会ったきり、
平屋の2LDK、大掃除と断捨離に一日掛かったが家賃折半に心揺らぐ。

幸村

幸村が入院して驚いた。そして意外な病状に驚いて少しだけ泣いた。あんなに輝いていた彼が二度と輝けないのではないかと思うと嫌々ながらもそれなりに楽しく部活のお手伝いをしていた私は、また彼のお気に入りのドリンクを作ってボトルを握り締めて唇を噛む。丸井辺りにあげてしまえばいいものを自分で飲んでお腹を下した。「見舞いに行かないか」「無理だよ泣いちゃうもん」柳に言われ真田に言われ仁王に言われたところではたと幸村の思惑かなと思った。仁王はそんなこと滅多に言わないだろうし丸井もなにやらそわそわしている、行かねばならぬか幸村はそんなに私の泣き顔が見たいのかと少しだけムカついた。会ったら泣いてしまうのは知っているくせに今、幸村がコートにいないだけで毎日泣いてしまいそうなのに、奴は鬼かと思うが会いたいだけかもしれないと少し前向きに考えて「今日は行くの?」と柳に聞いてみた。一瞬、驚いた表情を見せた柳だったが「ああ」と頷く、「私も行こうかな」と言えば「喜ぶよ」と柳は笑った。病院は注射のイメージしかなくて嫌いだ。病室に入ったら何て言えば良いのだろう?--久しぶりだね?--会いたかったよ?
どれもしっくりこなくて私は柳が扉を開けるまで悩んでいた。そんな表情の私に柳は優しく「大丈夫だ、お前が思っているほど弱っていない」と言った。ガラリと扉が開く、ベッドに座っているのは紛れもなく幸村だった。「やあ、よく来てくれたね」なんて幸村が力無く笑うから私はグッと唇を噛むしかできなかった。何か言わなくては、何か、何か、テニスが出来ないかもしれない幸村を前にして私はただ、ただ、スカートを握り締めて唇を噛むしか出来ないのだ。困ったように微笑む幸村、私の背中を軽く押した柳はすぐに病室から出ていってしまった。「ゆきむら、」「うん」「アンタのボトルで、私は何度腹を下したことか」「うん」「聞いて知ってるんでしょ」「まあね、部長だから」「ゆきむら、」「うん」帰ってきてよと力無く呟いて俯けばじんわりと視界が歪む、泣きたくないのに幸村を見ているだけで--本当は見られなくて俯いて駄々っ子のように幸村を呼んでいた。「キミが泣くとは思わなかったよ」「うそつき、本当は私の泣き顔見たさに呼んだくせに」「酷いなぁ」「ほれみろ!満足か!幸村のばかっ」ボタボタと頬を伝う涙、それに幸村は困ったように笑
うから私はだんだん悔しさから悲しみに変わっていくのを意識した。「ゆきむらぁ」「うん」「帰ってきて!立海に!もうドリンクボトルが一本多いの見たくないよぅ!」「うん」見れば幸村も涙を浮かべていていつの間にか二人でわんわん泣いていた。帰ってきてよ、帰りたいよ、部活の時お腹痛いのやだよ、それはキミの匙加減だろ、また嫌がる私を全国へ連れていってよ、連れていきたいよ、二人で言いたいこと言ってわんわん泣いていた。

感情的な二人もいいと思う。

彼はいつも私を心配している。幼馴染みと言えば聞こえがいいだろうけれど多感なお年頃である高校生になってまで干渉しなくてもいいのではないだろうか。病弱だったのは中学に上がるまでの話であり今はもう走り回っても何処も痛くならないのだ。なのに彼は私を心配して何かと声をかけてくれた。正直ウザったい。「蓮二、大丈夫だから自分を一番に考えなよ」「自惚れるな、お前は二番目だ」「二番目は彼女にとっておくものたよ」「?」キョトンとした彼はすぐにフッと微笑んで、いいんだお前は二番目だと言った。意味が分からない。「だから、私に干渉しないで彼女作りなよ」私だって彼氏を作りたいんだよ。「一から十まで説明しないと分からないか」「なに?」「お前は二番目でいいんだ」これは少しだけ自惚れてもいいのかな?

好きだと口にしない柳さんと幼馴染み。

「また、ひっついてるの?」テニス部になんの恨みがあるのだろうか、いや、恨みしかないのかもしれない。それは言葉を代えれば羨みか、黒い靄は払っても払っても無くなることはなかった。仕方がない、柳くんが悲しまない程度に靄は残すことにしようと決めた。決めたんだ。ジィ様に何を言われようと私の実力ではどうにもならないことが多々ある。そんなにやりたければジィ様が祓えば良いのだ。私はこれ以上増えないように毎日お祈りすることにしたのだ。「柳くん、ごめんね」怪我人は少なくなるだけだし風邪も然程流行しないぐらいにしか出来ないがそれでも彼は微笑んで「ありがとう」と頭を撫でてくれた。子供じゃないんだけどな、同い年にするあれじゃないよな。そのうち、柳くんがここを去る辺りになれば靄は少なくなるだろう。彼らは憧れの的になってしまっているのだから、それがいなくなればこれらは薄くなり消え行くと、思うのだ。

柳家の----彼の祖母は私の祖父の初恋のヒトらしい、彼のことを話したら「彼を巻き込むなど許さない」と言われた。仕方がないではないか、彼がテニス部でことの次第はテニス部に憧れたモノが始めたのだから。巻き込まれたのは寧ろ私の方だ。そんな理屈は祖父には届かず、入学式の写真を見せた私はなんて愚かだったんだろうかと頭を抱えた。仕方がないではないか誰かを守るなんて私のチカラではまだ出来やしないし祖父は連れてこいと煩いし。喧しいわ本当に。そこまで仲良く出来るほど私は目立つ存在ではないのだ、柳くんの目に入るような女でもないのだ。
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