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ぼそりと呟いた言葉が気に入らなかったらしいが、私には関係のない話だ。押し倒されているのも不本意であるし泣いてしまいそうな後輩の表情に私が胸を痛める必要はあるのだろうか。震える声で私を呼ぶ、何を呟いたのかはもう忘れてしまったが、二度は言わないと誓えば優しく鼻先に唇を落とされた。慈しまれるのが苦手だと知りながらこのような行為をする彼に私は噛み付くように口付けてやるのだ。
目の前の敵を倒すことに関しては一級だった。仲間が目の前で喰われ命を落としても表情を変えずに彼女はただただ敵の殲滅を試みて撤退の命が下る頃には返り血にまみれていた。「おい、やりすぎだ」「的確な働きだったと褒めて下さりませんか?」「隊を乱すな」「申し訳ありません、まだ調査兵団に慣れておりません故」いけしゃあしゃあと述べ、まるで気高い獣のようにギラついた目を兵士長に向けた彼女は、自身の何倍も大きな巨人に臆することもなく特攻し確実に急所を削ぐ--その戦い方は誰もが認めていたし頼りにしている。しかしその無鉄砲さを憲兵団や調査兵団の団長を初め彼女と関わりを持つ者の一部が危惧しているのを彼女は知らぬ顔をして、戻ればすぐに鍛練に勤しんで会議に参加するのはごく希、兵士長は彼女を心配するような素振りを見せる、上層部に囲われていると一部は噂をして転団、入隊して暫くは嫌がらせすら受けていたのだがそれすら、彼女は素知らぬ顔をしている。
可愛い子供のようだと思った。狂気染みた熱意は少しだけ他と違うベクトルに向いてしまっただけなのだから。私があの子のようになっていたかもしれない、誰があのようになっていてもおかしくない、ただハンジと言う私の後輩の一人がそうなっていただけなのだから。「あれ、こんなところでどうかしました?」「探してたんだよ」「私を?」「ええ、先日のレポートについて」「わ!見てくれたんですか」「あと、次の壁外調査は私も行くことになったから、宜しくね」「えっ?」「問題でもある?」「い、いえ」心配そうな表情をした後輩に大丈夫だからと言って肩を叩いた。何故、私以上にこの子が心配するのだろうか。何故、まるで自分の事のようにこんな悲しそうな表情をしてしまうのだろうか。ああ、何故?「特攻禁止ですからね!」「それが兵長の命令なら従うよ、ハンジくんは心配性ね」「だって」「はいはい、」
誕生日 | 5月9日 |