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ハンジ

ぼそりと呟いた言葉が気に入らなかったらしいが、私には関係のない話だ。押し倒されているのも不本意であるし泣いてしまいそうな後輩の表情に私が胸を痛める必要はあるのだろうか。震える声で私を呼ぶ、何を呟いたのかはもう忘れてしまったが、二度は言わないと誓えば優しく鼻先に唇を落とされた。慈しまれるのが苦手だと知りながらこのような行為をする彼に私は噛み付くように口付けてやるのだ。

ハンジ

目の前の敵を倒すことに関しては一級だった。仲間が目の前で喰われ命を落としても表情を変えずに彼女はただただ敵の殲滅を試みて撤退の命が下る頃には返り血にまみれていた。「おい、やりすぎだ」「的確な働きだったと褒めて下さりませんか?」「隊を乱すな」「申し訳ありません、まだ調査兵団に慣れておりません故」いけしゃあしゃあと述べ、まるで気高い獣のようにギラついた目を兵士長に向けた彼女は、自身の何倍も大きな巨人に臆することもなく特攻し確実に急所を削ぐ--その戦い方は誰もが認めていたし頼りにしている。しかしその無鉄砲さを憲兵団や調査兵団の団長を初め彼女と関わりを持つ者の一部が危惧しているのを彼女は知らぬ顔をして、戻ればすぐに鍛練に勤しんで会議に参加するのはごく希、兵士長は彼女を心配するような素振りを見せる、上層部に囲われていると一部は噂をして転団、入隊して暫くは嫌がらせすら受けていたのだがそれすら、彼女は素知らぬ顔をしている。
「おかえり、」「ただいま戻りました」「無事で何よりだよ」「分隊長は心配しすぎです、私は死にませんよ」ここで彼女は初めて表情を崩した、分隊長と呼ばれた人は清めた彼女の髪に触れて「お疲れ様」と労う。彼女の表情は柔らかくなり、ふぅと溜め息をひとつついた。「また、何人もの同士が死にました」「うん」「助けに飛びましたが間に合わず、結果、囮として使うことになってしまいました、彼の奥方は来月、出産を控えているのに」「うん」彼女はこうして覚えている殆どの同士の死について分隊長--彼女の上司である--ハンジに報告していた。ハンジもただ頷いて彼女の話を聞いていた。本当は彼らの死を悔やんでいて、でも割りきって戦場では何も語らない彼女の居場所になれたことをハンジは内心嬉しく思っているのだ。「ハンジ分隊長」「ん?」「私、もっと強くなりたいです、リヴァイ兵士長を越えたい」「もう充分に強いよ」「あの方はもっとお強い、私はあの人にだけは守られたくない」「リヴァイはキミを守るかな?」「じゃあ、常に囮として特攻することを許して頂きたい」「ダメ、これ以上危険なことをするなんて、それは私が許さない」
「何も死にに行くとは言ってません」「そう?早く楽になりたいって聞こえるよ」「まさか、私は奴らとの問題を解消して平和を望んでるだけです。だから分隊長にも協力しています」「それは助かってるんだけどね、キミは隊長格にも等しいのに隊を成すことを拒んでいるだろう?」新しい隊を組む話はずっと前から言われているのは確かだったが、彼女はなかなか理由を教えてはくれなかった。「--あなたの傍にいたいからですよ、少しはヒトで在ることを許してください」「えっ?」「なぁんでもありませんわ、ハンジ分隊長」

ハンジ

可愛い子供のようだと思った。狂気染みた熱意は少しだけ他と違うベクトルに向いてしまっただけなのだから。私があの子のようになっていたかもしれない、誰があのようになっていてもおかしくない、ただハンジと言う私の後輩の一人がそうなっていただけなのだから。「あれ、こんなところでどうかしました?」「探してたんだよ」「私を?」「ええ、先日のレポートについて」「わ!見てくれたんですか」「あと、次の壁外調査は私も行くことになったから、宜しくね」「えっ?」「問題でもある?」「い、いえ」心配そうな表情をした後輩に大丈夫だからと言って肩を叩いた。何故、私以上にこの子が心配するのだろうか。何故、まるで自分の事のようにこんな悲しそうな表情をしてしまうのだろうか。ああ、何故?「特攻禁止ですからね!」「それが兵長の命令なら従うよ、ハンジくんは心配性ね」「だって」「はいはい、」
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