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いつも慕われる側だったから恋慕うことを知らずに育った彼は初めての感情に戸惑っているように見えた。本能ですら律してしまう完璧な彼が、じわじわと愛を知る。想像しただけでも背筋がゾクゾクとした。孤独で完璧な彼が私に愛情に限り無く近い感情を抱いている。恐怖でしかないソレを彼はゆっくりと染み込むように知っていくのだ。愛はヒトを強くも弱くもするのを私は知っていて彼がどちらに転がるのかも私は知っている。彼は強くなるようなヒトではない。後者であろう。それでも私を殺せない、失いその後を考えるという恐ろしさを知って、行動に移せず、私に関しては立ち止まってしまっていた。今しがた儚く散った命にも愛する者が存在するのだと考えるようになってしまったら彼は二度と誰も殺せなくなってしまうだろう。闇の皇帝とやらは姿を消してしまうのだろう。私の手に掛かっているかのように思えたが、生きて償わせるには遅すぎてしまった。ようやく愛を知った彼は私を抱き締め、英雄に殺されに行ったのだ。これでいいのだと思った。どうあがいても、闇に落ち行く彼を救うことは出来なかった。彼の強い憎しみを拭うには遅すぎたのだ。それでも愛を
愛している、そんなチープな台詞で片付けられる程、簡単な想いではなかった。「貴方が欲しいの、すべて、血の一滴まで誰かの手に渡すなんて許さない」言ってみるものだと思った、その言葉が彼を本気にさせたのだから。本気になったのかどうかは正直、理解に苦しむが彼の緋色の瞳が私を映し、欲した。前とは違う彼の態度に嗚呼まだヒトの成りがあったのだと嬉しくも悲しかった。本当に闇がほしいのならばあの時に私を消すべきだったのだ。朽ちた彼を見て、私はようやく安心できたのだ。アルバス、私はようやく任務を終えることが出来たよ。可愛い可愛い我が子同然のあの子はようやく呪縛から解き放たれたんだよ。
ハリーは私を恨んでいるのだろうか、叔父の家には宛がわれずにのうのうと過ごしてきたのだから。スリザリンと言われた時もトロールに襲われた時も私は弟を守りたくて必死だった。ファミリーネームは養父母のものだけれど、アルバスオジサマはそれでも私をハリーの姉だと教えてくれた。だから私は言えなくても彼らと接触を試みた。邪険にされたが姉だと理解したハリーは嬉しそうで羨ましそうだったのを覚えている。ただ、私はハリーの代わりにはなれなかった。分霊箱はハリーだから、記憶に見た例のあの人は私にとっては初恋の人だったから。あのとき、あの冬に時空を越えた意味は分からないけどアルバスオジサマは話を聞いて、腕の印を見ても許してくれた。私は、私を愛してくれたトムがもういないと知りながらハリーに杖を向けた。「姉さん、何故!」「ごめんなさい」「行っちゃ駄目だ、姉さん!」悲痛な、弟のこえよりも甘く囁く愛しい人の手を取ってしまった。それが悪魔であろうとも私は幸せだった。
「リーマスはリーマスだよ」そんな言葉で喜んでもらえるとは思ってもみなかった。私がなんであっても友達でいてくれるのだから、こんな言葉は容易いのに。「キミは単純だからね」「ひどい、ジェームズなんでリリーに嫌われちゃえ」「ひどい!」嘗ての友達はこんなに優しくなかったが今回の友達は優しく暖かかった。時々、闇に堕ちてしまった友を思い出しては泣きそうになるがそれでも今の友を思うと気が楽になる。「キミはいつでも泣き虫だ」「リーマスまでひどい!」リドル、私にはこんなに優しい友が出来たよ。キミは何を思って私を突き放したのかな、悲しいよ、リドル。
先生、と遠慮がちに囁く声が聞こえる。東洋人の彼女は実家が怪しい薬品を扱う神社だと聞いており、彼女自身魔法薬学に富んでいた。蛇を祀るそこは彼女の聖域だと言っている。「先生は気味が悪いと思いますか」「くだらん」「そう言って下さるのは先生だけですよ、みんな気味が悪いと言います」あの人の部下だとかスリザリンの末裔だとか噂され相当参っているらしく冷たく発したスネイプの言葉にすら暖かみを抱いて少女は笑った。「わたし、山神さまのお嫁さんになるつもりでしたが、今はこちらのが心地好いんです」「疎まれているこちらが?」「マグルよりはマシなんです、魔法を使えることが何よりも嬉しい。強ければ--みんななにも言わないでしょう?」「さようですな」「わたし、強くなりたいんです、はやく魔法を覚えてみんなを守りたい」「守る?」「そうです、みんなを守りたいんです」おかしな子だとスネイプは笑う、疎まれ蔑まれているのに、彼らを守りたいと言うのだ。
誕生日 | 5月9日 |