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未定

長い眠りから覚めたかのような身体の痛み、自身の纏う服装からは懐かしい香りがした。「クリスタル、巫女、祈り…」沸々と浮かぶ単語を無意識に言葉にしていた。「破壊、神、堕ちた先…白い毛並み?」言葉を続けていくうちにズクンとこめかみの辺りに痛みが走る、何も思い出せないことに気付いてただ、茫然と立ち尽くしていた。「何者だ」「…」「怪しい奴だ、こちらに来てもらおう」「ここは、どこ なのですか?」「…記憶がないのか?」「わかりません、なぜ、ここにいるのかすら」どうしたらよいかと尋ねれば男はコウコクに保護されるべきだと言う。頷こうとすればまた神経に触れるように痛みが走った、何かが押し寄せてくる、津波のように何かを浚っていく、蹲ると男が心配そうな声色で何かを紡いたのが分かった。「あ、ああ、また、失敗す、る、呑まれてしまう」「お、おい?」「もう、繰り返しては、いけない、助けなくちゃ、」男から距離を置いて術を呟くと一瞬で空間を移動した。目指した光の先には黒い闇の欠片が転がり、爆発を起こしたかのような衝撃と共に再度意識を失った。
「(次は、負けないと誓ったのに)」

未定

甲冑を身に纏うはずの騎士は偉大なる賢者の子と噂されそれを養子にした貴族としては小さいシュラル家は一気に権力を手にいれていた。魔術に長けた彼女は術を使うよりも剣を振るい剣に纏わせる魔法に軍は驚きを隠せなかったという、バロンは彼女を長とする騎士団を設け他の団よりも小さくとも秀でていた。シュラルはあの娘でのしあがったと言われても当家は変わらずの暮らしを送り、変わらず娘を愛していた。義弟は今年に入って赤き翼に入隊したと聞いている、三つの騎士団長は仲が良くお互いを高め合うかのように鍛練の時はよく一緒にいた。
「お呼びでしょうか」「お主にこれを渡しておこうと思ってな」「これは?」王より手渡されたのは小さな石の付いた首飾り、自身の出生の鍵になるかもしれないと聞いて彼女は大切そうに握り締めた。「お主だけにはと思ってな。お主を見つけた時、セシルを守るかのように抱き抱えておったのだ」「セシル、を?」「兄弟かと思ったのだが、少し違う。小さなお主は始め赤子であるセシルを守ると言ってワシに渡そうとはしなかった」「そう、ですか」「何かあるのだろう、セシルとお主には」「セシルにこのことは」「伏せてある、聡明なお主にだから話そうと思ったのだ」「あ、有り難き、幸せ」迷いに揺れる瞳、少しだけ希望に満ちた表情にバロン王は初めて彼女らしさを見た。養父母に迷惑を掛けぬよう努力し押し殺したように過ごしていた彼女を気に掛けていたのだ。

ローザ

「ローザ、大人しくしていてくださいね 」「どうして、貴女まで操られているの?」「偉大なる賢者はそのような術には掛かりません、私には私の計画があるのです。今ここで貴女を助けることは出来ませんが、大丈夫です、助けは必ず来ますよ」囚われの白魔導士に賢者はそう言って部屋を出た。クリスタルと交換、それをあの暗黒騎士は呑むだろう、しかし今先程の会話はこの先不利になってしまうと思い、記憶を消すことにした。それをおもいついた賢者はコホンと咳払いをして「それに、」と言葉を続けた。「望みはあなた方と同じなのです。違いは、その為には手段は選ばない、だけ。正義も悪も、私にはありません」「彼がやろうとしていることは、悪よ」「ならば私は悪すらも利用しましょう、いつか互いの道が交わることを」そう言って賢者は杖を向け術をかけた。眠りに浚われる白魔導士が最後に見たのは優しく微笑む賢者の「ありがとう」だった。

TA

「賢者の加護を」「ありがとう、でも賢者としてより同郷としても祝福してくれないかな」「国王は我儘でいらっしゃる。ああそうだ、セディルをバロンに任せたいのだが」「…ねぇ、やっぱりこの子の父親って」「立派な騎士にして欲しい、私はそちらの技術は全くでね。セディル、挨拶なさい」「セディルともうします、バロン王」「キミの教育は貴族も顔負けだね、いいよ、ローザも喜ぶだろうし。でも、時々は顔を見せにくることが条件だ」「ありがとう、セシル」「ところで、カインとは会ってないかい?」「今は子育てに忙しくミシディアにいるが、この子たちを産んでからは会っていないな」「そうか、便りを任せたかったんだけどな」「時が来れば嫌でも会うことになる」「予言?」「そうだな、双の月がまみえるとき、とか」「母様、それは父様に会えるときのおはなしではないのですか?」「そうだったな」クスクスと笑う賢者はセシルに息子を託し、城を後にした。ミシディアでは娘が待っている、もう少し大きくなったら住まいをあの山近くに移そうと決めていた。「一度くらいは、合わせてあげたいな」

TA

何かあったら頼ってほしいと言って、試練の山近くに住まう賢者の話をセオドアは思い出した。両親の戦友で血の繋がりがあると聞いていた、謎の男も彼女を知っていると言う。「母様に、なにか?」銀色の髪を揺らした少女が小屋から顔を出した、謎の男が少女の名を呼べば少女は嬉しそうに抱き付く。「こらこら、母の戦友を困らせるんじゃない」「だって!母様!」「あの、」「分かっているよ、大きくなったね、セオドア」「チカラをお借りしたいんです、賢者さま」「母様、セラも行きたいです」「セラル、」「セオドアはいいのに、セラは駄目なのですか?セラは三つもお姉さんなのに」「ミシディアの長老の具合を見る約束はどうするのだ?」「うっ、」「母はこの通り、友に頼られた。大切な友の頼みであるのはセラルも同じだろう?」「はい」母親らしい台詞に金糸の男は頬が緩むのを意識した、気付いた賢者はコホンと咳払いをして「支度をする」と奥の部屋に行ってしまった。「セラル、」「ふん、姉様のご用事じゃなかったらねだれるのに…ね、セオドア、セディルはどうしている」「もう立派にバロンの騎士だよ」「さすが!」「双子、なのか?」「はい。セラが
お姉さんなのに、ちょっと強いからってさっさと王様に引き抜かれたんですよ、あ!でも魔法はセラの方が強いです」「そうか」「会えばすぐにわかりますよ、王様はセオドアとセディルの仲をとても嬉しく思ってるって王妃様が仰っていましたから、懐かしいって」「まるで、国王自身とその親友を見ているようなのだろうな、待たせた」「…いや」「足手まといにはならぬよ、ミシディアを抜けてバロンへ行くのだろう?」「そのつもりだ」変わらない賢者に男は懐かしさを感じて、バロンの騎士だという彼女の息子にも会いたいと思った。
その夜、眠る子供たちを背に二人は火の番をしていた。「意外か?」「……」「簡単なことだ、私もヒトの子だっただけのこと」「父親は、」「さあ?一度きりの契りで成せるなら幸せなこと」「お前の考えは理解できない」「それは子供たちの話か?それぞれの得意分野を活かすためにこうしたんだ」「父親の話はしたのか?」「いつか、双の月がまみえるときに会えるだろうと賢者らしいことを言った、…いや、こんなことになるとはな」「?」「私の役目は終わったと思ったんだけどな、しかし、この子たちには背負わせないと決めている。父親の為にも」「ふっ、変わらないな」「当たり前だ、幸せになって欲しいと願うのは親の使命だからな。多分」
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