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刑部さんがスランプに落ちたらしい。嘆かわしいといいながら仕事部屋には籠らずリビングにいた。火傷の痕が残る身体を震わせて窓を閉めやれなんて小言を漏らしている。「黒田さんが泣きますね」「あやつの心配しか出来ぬのか、我は悲しや悲し」「趣向を変えてみたらどうですか?久々に官能小説とか読んでみたいです」「物好きよナァ」
「許可しない」「なんでよ、友達と飲み会ぐらいいいじゃない」「ワシも行くし心配いらないと思うが」「貴様が行くとなれば尚のこと、許可しない」「信用ないなぁ、仕事なんだから仕方ないじゃない」「っ、」「そんなに私のこと信頼できないの?ひどい」「あーあ、泣かしてしまったぞ、三成」「な、泣くな、そんなに行きたければ好きにしろ」「そんな言い方しなくてもいいじゃない!じゃあ、行かない!一人寂しく三成の帰りを待ってるもん!」「あーあ」「っ、た、楽しみにしていたのだろう、行ってくるといい」「ほんと?わーい!三成大好き!」「帰りには迎えにいく、家康に頼ることはない」「わかった!」「ワシ、そんなに信用ないかなぁ」「家康くんどっちのワンピースがいいかなぁ?」「困ったな、どちらも似合う」「もう、誉めたって何も出せませんよー」
好きです付き合ってくださいと屋上に女子の声が響いた。私は貯水タンク近くで昼御飯を食べていたのだついうっかり箸が止まってしまった。恐る恐る顔を出すと噂の権現さまと知らない女子がいた。困ったように頭をかく権現さま、ふと視線がこちらを向いて驚いたように目を丸くするのが見えてしまった。しまった、目が合ってしまった!と慌てて身体を持ち直せば、女子のひどい!という悲鳴じみた声にバタンッと扉が閉まる音。振ったのかとまた顔を出せばすぐそこに権現さまがいた。吃驚して悲鳴を上げそうになったではないか。「覗き見とはいい趣味をしているな」「そちらこそ、私の憩いの場をよくも」「仕方ないだろう、屋上が指定だったのだから」「普通、裏庭だよねー」病弱で滅多に学校に来られない私を知っていた権現さまに吃驚したが外でご飯を食べるなんて感心しないなと言われた。「友達なんていないから」「では、ワシが友になろう」「あ、そういうのいらない。どうせまた入院しちゃうし今日はたまたま学校に来られただけだから」「そうやって突っぱねることはないぞ、ワシはおまえを知っているからな」「私は、貴方を知らない」私は、私のために小さ
徳川くんが隣にいる。日誌を書いている私の隣で頬杖をついてなにやら楽しそうにしていた。先に帰っていてと言ったのに彼は日誌を届けるまでが日直だと言って離れようとしなかった。シャーペンを滑らせる手が震えるのを叱咤しながら早く終わらせたいと必死だった。「終わった!徳川くんは先に帰っていて」「一緒に行こう、片倉先生は部活だろうから」「あの、徳川くんもジムに遅れちゃうよ?」「構わない、駅まで送る」「えっ?」「迷惑か?」「まさか、そんな」優しい徳川くんは私を女子と認めてくれているのだろう、大丈夫だよと言っても聞いてくれなかった。私を襲うような人はいないよと言ったら世の中には女子なら誰でもいい奴もいるんだぞと叱られた。あ、少し傷付いたわ。「その、ありがとう、また明日ね」駅にはよく一緒にいる仲間が待っていたところを見ると、もしかしたら罰ゲームだったのかもしれない。ごめんねともう一度謝るとキョトンとされた。
「応援してるね」「あ、ありがとう」「大丈夫だよ、山口くんなら」「うん、今回ばかりは全力でいかないと」「試合、見に行けるかわからないけれど、頑張れ」「うん」
誕生日 | 5月9日 |