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目の前の敵を倒すことに関しては一級だった。仲間が目の前で喰われ命を落としても表情を変えずに彼女はただただ敵の殲滅を試みて撤退の命が下る頃には返り血にまみれていた。「おい、やりすぎだ」「的確な働きだったと褒めて下さりませんか?」「隊を乱すな」「申し訳ありません、まだ調査兵団に慣れておりません故」いけしゃあしゃあと述べ、まるで気高い獣のようにギラついた目を兵士長に向けた彼女は、自身の何倍も大きな巨人に臆することもなく特攻し確実に急所を削ぐ--その戦い方は誰もが認めていたし頼りにしている。しかしその無鉄砲さを憲兵団や調査兵団の団長を初め彼女と関わりを持つ者の一部が危惧しているのを彼女は知らぬ顔をして、戻ればすぐに鍛練に勤しんで会議に参加するのはごく希、兵士長は彼女を心配するような素振りを見せる、上層部に囲われていると一部は噂をして転団、入隊して暫くは嫌がらせすら受けていたのだがそれすら、彼女は素知らぬ顔をしている。
長い眠りから覚めたかのような身体の痛み、自身の纏う服装からは懐かしい香りがした。「クリスタル、巫女、祈り…」沸々と浮かぶ単語を無意識に言葉にしていた。「破壊、神、堕ちた先…白い毛並み?」言葉を続けていくうちにズクンとこめかみの辺りに痛みが走る、何も思い出せないことに気付いてただ、茫然と立ち尽くしていた。「何者だ」「…」「怪しい奴だ、こちらに来てもらおう」「ここは、どこ なのですか?」「…記憶がないのか?」「わかりません、なぜ、ここにいるのかすら」どうしたらよいかと尋ねれば男はコウコクに保護されるべきだと言う。頷こうとすればまた神経に触れるように痛みが走った、何かが押し寄せてくる、津波のように何かを浚っていく、蹲ると男が心配そうな声色で何かを紡いたのが分かった。「あ、ああ、また、失敗す、る、呑まれてしまう」「お、おい?」「もう、繰り返しては、いけない、助けなくちゃ、」男から距離を置いて術を呟くと一瞬で空間を移動した。目指した光の先には黒い闇の欠片が転がり、爆発を起こしたかのような衝撃と共に再度意識を失った。
誕生日 | 5月9日 |