「うああんうああん」「‥また夜泣きかよ」
深夜の甲板から降りたのだろう仔犬はまん丸な月に向かい吠えていた。賭博師は初めこそ煩いと怒鳴っていたが最近は理由が知りたいと考えるようになっていた。
「独りで泣くなよ、こいぬちゃん」「あうあう‥」「逃げんなよ、もう怒鳴ったりしねぇよ」「‥ぐるる」「ほら、まあ、独りで泣きたい日もあるだろうけどよ〜‥そんな毎日毎日こっそり泣かなくてもいいだろ」「‥って」「ん?」「だって、迷惑かけたくなっい」「いいからいいから、ほら、来いよ」「せつ、」「じゃあ今日だけ特別、な?」「ふえ‥っセッツァーあぁん」
ヒトガタに戻るとぎゅうぎゅうと抱きつく、プルプルと震える身体に賭博師は言い表せない何かを感じてよろけながらもキツくキツく抱き締めた。
マッシュがいない夜に。そんな日があってもいいかなぁと