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この街の太陽は沈まない37


┃ 7/8 04:07:41 ┃


セイバーの作戦が始まってから、3日が経った。特にこれといって怪しい動きを見せる者はなかった。また、ランサーの行方に関しても、明確な情報を得られていなかった。
「へーい大将〜この様子じゃもう内通者はいないんじゃねぇんですかねぇ?」
背もたれを前に抱え、つまらなそうにライダーが呟いた。ふむ、と、後ろに立っていたセイバーも小さく呟いた。
「…これは内通者はなしと見るべきか……」
「拙者とセイバー殿で連日見張ってるわけですけどこれっぽいことはなーんにも。怪しいのが出たら他三人に飛び回ってもらってんのもさすがに無理が出てくるのでは?」
「…うん、そうだね」
「実のところ、どう思ってるんで?まだいると?」
ライダーが、きぃ、と椅子をきしませながらセイバーを振り返った。セイバーはしばらくモニターを見つめたあと、視線をライダーに向けた。
「正直に言って、私は最初の予測が外れてはいないと思ってる。内通者はもう、とうの昔に処分されてると」
「まぁ、それには賛同しますなぁ」
「!そうかい?」
「でなかったらそろそろ尻尾掴めてるでしょう、拙者もこんだけマジに働いてるわけですし?」
「ふふ、そうだね。…なら、私はこう言うべきだね。内通者はもういない」
ライダーはセイバーの言葉に、にやっ、と笑った。かたたっ、と俊敏にキーボードに指を走らせ、街に出ている三人のメンバーと秘密通信を繋げる。
『あ?なんだ。疑わしきが出たのか』
最初に通信に応えたのはバーサーカーだった。その声にはやや疲労と苛立ちが滲み出ている。
バーサーカーはランサーがさらわれたことに対して責任を感じているようで、この3日、誰よりも休まず、そして誰よりも動き回っていた。
「バーサーカー、一旦司令部へ。内通者は、もういない」
『あ?言い切れんのか、そりゃ』
「あぁ、そうだとも。それに何より、いい加減君には休息が必要だ、いくら君が体力自慢であっても」
『なら、ランサーの手掛かりはなんか掴めたのか、あぁ!?」
スピーカーから突如、怒鳴り付けるようなバーサーカーの声が飛び出す。うげぇ、と言いたげな顔でライダーは仰け反り、セイバーは僅かに眉間を寄せた。
「バーサーカー。ランサーがさらわれたことは君だけの責任じゃあない。冷静になれ」
『…ッ、るせぇな……』
「バーサーカー。その通し名を生かすのは戦場だけだろう。役割をはき違えてくれるな」
『…ッ』
「……怖」
怒鳴り付けるわけではなく、だがそれでいて酷く威圧的に発された言葉に、バーサーカーが息を呑んだのがわかった。ぼそり、とライダーまでもが呟く。
セイバーは、こほん、と咳払いをした。
「…分かったら一度戻ってくるように。いいね」
『…………………分かった。あんたに従うさ』
バーサーカーは少しの間黙っていたが、考え直したか、大人しくそう言って通信を切った。
それから間を挟まずに、アーチャーが通信に応えた。セイバーはアーチャーにも戻ってくるように伝えると、アサシンの返事が来る前にライダーの方を振り返った。
「?」
なぜ自分を見たのか、ときょとんとするライダーに、セイバーは無言で距離を詰めた。
「な、な、な、なんですっ!?いやちょっとほんと何、」
無言で近寄ってくるセイバーに、先の言葉もあってか、ライダーは驚いたように後ずさる。セイバーはそれを気にもとめずにさらに近寄り、ぐい、とライダーの顔に自分の顔を近づけた。
「何?!なんなんですぅ!?顔が近、腹たつくらいイケメンだなアンタ嫌味か!?だから近…」
「ライダー。明日一日、もう一日だけ、モニターを続けてくれるか?」
セイバーはライダーの言葉を無視してその耳元に口を寄せると、そっとそう囁いた。鳥肌でもたったのか、ざわわ、と僅かにライダーは体を震わせたが、顔を見れば存外真面目な顔をしてセイバーを見ていた。
「…それは、秘密通信が傍受されてることも考慮して、ってことで?」
「そう。だからあえてさっきは言い切った。盗聴器がないとも限らない。だからすまないけどこうして囁いてる」
「囁いてる自覚あるんかい。しかし、拙者が裏切り者だったらどうするので?無意味でござろう??」
にやっ、とライダーは笑ってセイバーを見た。
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