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我が征く道は81

凪子が攻略本を読み終わり、ノートをまとめ終わる頃には、日は沈んですっかり暗くなっていた。
「…あ!?サーヴァント1体脱落してる?!」
そしてあまりに集中していたのか、ホテルに戻りついた頃になって、マナの変動が大変激しく起こっていたことに気がついた。そしてその減り方に、サーヴァント1体分くらいの魔力が減ったことにも。
「うっそだろ戦闘になってたらいくらなんでも気がつくはず…!ろくな戦闘にもならずに脱落したってことか!?誰が!?」
慌てて凪子はコンパスを床に放り投げた。冬木市をホログラムのように映し出し、床のコンパスと同じく床に置いた時計とを手早く魔方陣のような模様で繋ぐ。
「えーっと…10時間前からの魔力変動を表示しろ!10倍速で!!」
ギュルル、と時計の針がぴったり10時間遡る。それを確認したあとにホログラムへと目を写す。
ホログラムの中に、寒暖図のように魔力量が青から赤への色合いで表示される。しばらく大きな動きはなかったが、午後になって、ある一点が唐突に真っ赤になった。
「!学校の結界か!」
目に痛いくらいの赤い光を、ライダーの結界があった学校がある場所から発せられていた。が、その光はあっという間に終息し、同時にそこは真っ青になった。そして、一筋の魔力の塊が空を切り、アインツベルンの森に消えていった。
「!いくら10倍速っつったってあの学校の生徒全員吸い尽くすにはもう少しかかるだろうし、一瞬光ったときがあったから、少年か凛ちゃんかのどっちかがサーヴァントを令呪で呼んでるはず。だけどその後戦闘の跡はない……ってことは…脱落したのはライダーと考えるべきか?」
凪子がそう思考を巡らせているうちに、10倍速の再生は終わっていた。
なぜあっという間に戦闘もなく終息したのか。結界が戦闘なしに消えたことを考えても、恐らくライダーが、サーヴァント以外の手段で殺されたと考えるのが一番妥当だろう。
「そんなの誰が…。……まさか葛木か?」
真っ先に思い浮かぶのは、この前頸動脈を引きちぎってくれた男の姿。
ライダーの戦闘を見るに、ライダーは白兵戦にはそれほど強くはない。宝具を使うか、あるいは魔眼を使わない限りは、セイバーやランサーに勝つのはほぼ不可能に近いだろう。

つまり、それらを使わせなければ、使わせるほどの時間を与えなければ、白兵戦に特化していれば人間でも勝てる可能性は、ある。
とりわけライダーのマスターは臆病で、代理も含めどちらもあの学校の生徒だ。仮に、マスターが同じ場所に居合わせた場合、マスターを庇いながらであったのなら、なおのことだろう。

葛木なら、不意討ち戦法であり即死させる技が主技である葛木であるなら、できる可能性はある。

「…くっそしてやられた……まさか人間がサーヴァント倒すとはな。まぁ、ルール破りばっかりだからなぁ、サーヴァント同士だけが戦うとは限らなかったわけか……油断した」
大方の推理を終えた凪子は疲れたようにそういい、ボスン、とベッドに体を投げ出した。
戦闘を見逃したことはなにより、仮にもサーヴァントが人間に倒されるという面白すぎる場面を見逃したことが残念すぎた。
「…まぁあの結界に入るの正直嫌だけどさぁ…葛木サン強いんだなァ。まぁ私の首つかめるんだからなぁ…」
さす、と首筋をさする。傷跡などもちろん残っていないが。
はぁー、と凪子は大きくため息をついた。
「……ま、でも間桐のお嬢さんのこと思えば、早々に脱落してよかったねって感じだけど…ちゃんとサーヴァントの魔力は小聖杯のイリヤちゃんとこ行ったみたいだったし。ただ、あのじじいと負けず嫌いっぽいあの坊やがこれで大人しくなるかっていうのは気になるなァ…少し目を光らせるかなぁ」
めんどくさいなぁ、といいつつ、凪子は再び大きくため息をついた。
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