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我が征く道は18

凪子はライダーの攻撃を受けるのに使ったナイフをその場で落とし、地面に突き立てた。
戦う意志どころか、その逆を思わせる行動をとる不可解な凪子の行動に、ライダーの動きが止まる。凪子は更に、両手をあげた。
「そう怒んないで、君の作った結界を壊すつもりはないんだ。ちょっと変なもんを感じたから見に来ただけ。そしたら君が喧嘩売ってきた!だのに、姿見せないもんだから、こうやって話すためにちょいと買わせてもらったというわけだ。…でも、なんかその様子見るに、オタクの蟲じじいから私の事聞いてないね??」
「…ライダー、と貴女は私を呼びましたね。その上、私のマスターやその家族の事も、ご存知のようですね…」
ライダーは戦闘体勢だった姿勢を緩め、握っていた突型分銅鎖を再び消した。マスターやその周りの環境は散々な陣営だが、サーヴァントは一応話の通じる者のようだ。
「ん、まぁそれなりに。ていうかジジイの野郎私に軽く喧嘩売ってきたからね、他より調べちゃったというか…ていうかあんだけ汚物は消毒だー!してやったのに、私のこと話してないのかよほんとあいつ…説明の手間増えるじゃねぇか……次会ったら膝カックンして複雑骨折させてやる…」
「…はぁ……」
「おっと話がそれた。見逃してくれるんなら私はこのまま何もせずに帰る。誰にも言わないし、後々手出しすることもない」
「この結界がどういうものが分かっているというのに、本当に手出しをしないと?」
静かに、だかそれでいてどこか訝しむように、ライダーはそう尋ねる。
うん、と。凪子は臆面なく頷いて返す。
「聖杯戦争内で起こることは当事者がどうにかするもんだ、部外者の私が手出しすることじゃあない」
「多くの人が死んでも?」
「人間いつかは運命にのっとって死ぬもんさ。他のマスターに壊されることなく結界が発動して、君に食われて死ぬというのなら、ここの生徒たちは残念ながらそういう運命だったってことでしょうよ」
ライダーは凪子の言葉に、ふ、と小さく笑う。だが、すぐに残念そうに首を振った。
「…そうまで言うのであれば、貴女は普通の人間ではないのでしょう、その言葉には信憑性がある。……私としては、こんな結界を用意するくらい、ただでさえ供給魔力の少ない身ですので、無関係な戦いは避けたいのですが……」
「……あー、もしかしてさっきのでマスター君ビビっちゃった…?」
「えぇ…貴女を殺せ、と」
「…私と戦ったら君が死ぬ、君に勝ち目はない、と言っても?」
す、と凪子は目を細める。それだけで凪子のまとう雰囲気が、一気に冷たいものになる。
私に介入するなら容赦はしない。
その冷たい殺気は、ライダーの背筋すらも僅かに凍らせた。ライダーは困ったように笑う。
「負けるな、たまには役に立って見せろ、と」
「ワァ自分のがよっぽど役立たずなのにナンテ横暴。まがりになりにも間桐の血筋というワケ?んー困ったな…」
凪子とライダーの間に沈黙が流れた、その時。

「ならばそのケンカ、オレが買わせてもらう」

凛、とした声が校庭に響き渡った。
はっ、と先に動いたのはライダーだった。それもそのはず、どこからか現れたランサーがライダー目掛けて降ってきたからだ。避けられたもののー最初から、避けられることを前提としていたようだったがー降下の重力と全体重をかけた一突きが、勢いよく校庭の地面をえぐった。
「!ランサー」
舞い上がる砂煙の中、ランサーは凪子の方を向くことはなかった。かわりに、背中を向けたまま片手を向け、しっしっ、と追い払うように手を振った。
見たら相手をしないといけないから、視界に入らない内にどこかにいけ、ということらしい。凪子はランサーの厚意に甘え、さっさと校庭脇の植え込みに隠れた。
サーヴァント同士の対決がようやく始まるのだ、やすやすと帰るわけにはいかない。
「…あなたは、ランサーのサーヴァント…ですね」
「おう。あんまりにも無防備に突っ立ってるから邪魔させてもらったぜ。そういうテメェはなんだ?武器らしい武器もなく、かといって隠れもしねぇ、だが話はできる。ってことは消去法からいってライダーあたりか?あぁ、心配せずともここで殺しゃあしねぇよ、そういう指示だからな」
「…随分と自信をお持ちのようで」
「いいから始めようぜ。精々やれて人が目覚める夜明けまで、時間はそうあるわけじゃねぇ。……あぁ、ちゃんと生き残れよ?」
ランサーがそう言ったのと同時に、姿が消える。直後、ライダーの目の前にその姿はあった。
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