部誌ネタ

「あはっあはははははっ! いい、いいわ! 決めた、貴女に魔女の名をアゲル!」
「魔女……? 必要な、」
「私が死ぬまで貴女に不老と不死を約束するわ!」
「勝手に人を魔女にするな」
「どうして?」
「そもそも魔女は魔力を持つ女だろう。私はしがない薬師だ」
「貴女のもつ動植物から薬を作り出す能力は他にはないわ」
「これは私だけのものじゃない。一族の、」
「ええ、でも一族は貴女を残して死んだわ」
一番上の姉は聡明だったが家の道具である(嫁に行く)ために家を継げなかった。そして嫁ぎ先の男を×したために狂死した。
二番目の姉は懸命だったが心根が優しかったために家を継げなかった。そして道路に飛び出した幼子を×したために轢死した。
三番目の姉は図太くあったが体を動かす方が得意だったために家を継げなかった。そして戦場に赴き敵兵を×したために戦死した。
「これ、は……」
「気にしなくていいのよ」
甘ったるい声が脳に根を張る。
「貴女は今までの研究をし続ければいいの。私は勝手に貴女に投資するわ。気にしないで、私が明日死んだからと言って貴女まで明日死ぬわけじゃないの。リスクはない、ハズよ?」
「……でも」
「所詮魔力を持たない魔女なんて誰かが勝手に呼んでるだけのこと。人間の戯れに私が混じったところで問題ないでしょう?
だぁいじょうぶ。契約賃は私の先の寿命半分で賄えるわ。貴女が気にすることはないの」

「私が明日死んだら貴女は今までと変わらない生活。私が百年後に死んで、そのとき既に貴女が薬を完成させていたら貴女は永遠になれるわ」


「ねぇ、貴女を魔女という言葉で縛ってアゲル!」


その無邪気なまでの笑顔に、私は、手を伸ばしてしまった。


「 契 約  成   立」


にんまり。
三日月がふたつ。


(20100713)