横恋慕。
――――
「――ひ、あぁぁあああっ!!」
びくびくと、痙攣する肢体。
くすくすと、抑え切れない笑い声。
先程まで必死に髪を乱していた彼は、イった快感からかぐったりと浅い息を繰り返している。
ぺろりと手で受け止めた白濁を見せ付けるように舐め取った。
「あーあ、オレの手でイっちゃったね。結局快感さえ拾えれば誰でもいいんだ?」
「ちが……も、許し……」
潤んだ瞳。朱に染まる目尻。赤みを帯びた肌。紅の花が咲く。
震える喉から搾り出されたのは掠れた声。
(ああ、馬鹿な子。そんな風にしても相手を煽るだけだと教わらなかったのかい?)
「だぁめ」
びくりと強張った彼の身体に舌を這わせる。一々反応を返してくれるこの愛らしさ。
怖ず怖ずとこちらを窺う瞳には明らかな恐怖。それから身体が覚えてしまった微かな期待。
「な、」
言葉を遮るように膝に手を添えて大きく開かせた。
抵抗されるものの、それはあまりに微弱で意味を成さない。
元々彼はオレに抵抗なんて出来ないのだ。そのように昔から躾ていたのだから。
「ねえ」
助けて、と。彼と恋仲にある男の名前を呼びだした彼に気分が急降下していく。
そっと彼の秘所に指を滑らし、臍に唇を落とした。
曝された喉から引き攣った叫びが零れる。
「ここにオレの精液をたっぷり注いでさぁ……孕んだらあの人、どんな顔するかなあ」
くすくす、抑え切れない笑い声。
孕むことなど性別上有り得ないというのに、彼なら出来そうだなんて馬鹿らしい考えを持ってしまう。
「、やめ……」
「そうだね」
とうとうしゃくり上げ始めた彼ににっこりといつもと同じ笑みを見せた。
「あの人が帰ってくる前に終わらせてあげる」
希望を絶望に塗り替えて、闇に突き落として。あの人の手を振り払う彼を、オレが抱きしめてあげる。
(20090821)