恋愛被害届

なにも知らないくせに

ぜんぶ知ってるみたいにわたしのことを抱きしめて、髪を撫でるの。


泣くの、我慢してたのに。

泣かないって、決めてたのに。





強く抱きしめられて
強く手を握られて


ねえ、そんなことされちゃうと
もっと好きになっちゃうよ。


ねえ、そんなことしちゃったら
勘違いされてもおかしくないんだよ。






ねえ、いまでもこんなにすきなのに
これ以上すきが大きくなったらわたし、どうしたらいい？


　

行かないで、も

傍にいたい、も

だいすき、も




なにも、言えなかった。




抱きしめられている間に
あたしは、ただ過ぎてく時間を
どうか止まってほしいと願うことしかできなくて


離れていく背中を
遠ざかっていく背中を

ただ追いかけて、行かないでと
そう言えばいいだけなのに


あたしは今日も、言えなかった。




あたしには、とおいよ。

あたしには、むずかしいよ。




甘え方も、引き止め方も
あたしにはまだわからないよ。



突き放されたら、
距離をとられてしまったら、

あたしにはそれこそどうしようもないから。




店長とアルバイトの関係を
ただただ守っていくしか、できないんだよ。

職業柄、社員さんが連続でおやすみをとるなんてことほんとうになくて。

二連休とかほんとうに、ほんっとうに稀なわけです。


今月の始め、社員さんのおやすみを回すことになって
久しぶりにゆうさんがまるまる2日おやすみだったわけでして。


ゆうさんがおねーさんと出会ったの、こんな感じのおやすみのときだったから
こういう風に、長いおやすみがあるとほんとうにこわくなる。

もしかしたら、また、知らないところで、遠くなってっちゃうんじゃないかって。


最初、旅行にいきたいって話してたからほんとうにこわかった。


まあ、いつも通りのおやすみを過ごしたみたいだけど。




おねーさんとは相変わらずなくせに

あたしを抱きしめながらゆうさんは「ずるいな〜」って笑うの。


本当にずるいのはどっちだよ、って話です。


ずっと抱きしめてほしかったの。

なのにそんなときに限って、汗かいてべたべたで、触って欲しくないのに
なのに抱きしめてくるからむかつく。笑


しかも誰のせいでこんな汗だくだと思ってんだ！ってはなしです。むかつく。笑







もういいやって、
もう知らないって、

何度も離れようとするのに
どうしてまた触れたくなるんだろう。

抱きしめてほしくなるんだろう。


そう思えば思うほど
すきが増えてっちゃうの、なんでなんだろう。

まいにち、
いつ、なんどきでも

すなおになりたいと
かわいくなりたいとおもっているのに


口から出るのは思ってもないことばかりで

必ずと言っていいほど
じぶんが言った言葉に後悔する。




言葉だけじゃないな、行動にも、後悔してる。




ああ、あのときああ言えばよかったのに

ああ、あのときああすればよかったのにって。




あとから後悔したっておそいのにね。