一度でもぬくもりを知ってしまうと、ひとりの夜がとても長くて、寂しくて、苦しくなってしまう。
それでもあの日は、どうしてもゆうさんに会いたかった。ゆうさんの傍にいたかった。
だからシフト入れたの。
働いてたら時間なんてあっという間に過ぎていくだろうし、なにより一緒に働けるから。
営業が終わって、いつもみたいに
帰りの支度をしていく中やっぱり離れたくなくて一緒にいたくて。でもそんなの言えるわけない。
お疲れだったのか少しのお酒で酔っ払ったらしいゆうさんは急に甘えたモードになってあたしに絡んできた。
ぎゅーってしてくるから、思わず「そんなことされたら泣いちゃいます。笑」って言ってしまった。
そりゃそんなこと言ったらなにかあったと思うよね!笑
「なんかあった?」
「俺にできることならなんでも力になりたい」
そう言って、ゆうさんは強くあたしを抱きしめてくれた。
少し、ほんの少しでも素直になりたくて。
「ゆうさんが、いてくれるだけで十分です。」
ってあたしも強く抱きしめ返した。
すごく寒くて雪も降ってる中、ふたりで話しながら抱き合ってた。
何度かゆうさんの体が離れていって、ああさよならなのかなあって。寂しくなって、苦しくなって。
でも、また抱きしめてくれるゆうさんをあたしもまた強く抱きしめ返した。
まあ、結局そのあとゆうさんのお家にお邪魔してそういうことになったんだけど。
久しぶりに膝枕でゆうさんの寝顔を見た。
懐かしくて、とても愛おしくて。
たまたま見つけてしまったふたつ並んだ歯ブラシがおねーさんの存在を痛いぐらい突きつけてきた。
そう言われてみれば、ゆうさんのお家にはおねーさんで溢れてる。
おねーさんにもそうやって優しく触れたりするのかなあとか。
おねーさんともそうやって抱き合っているんだろうなあとか。
考えだしたらキリがない。
でも、いまこの瞬間にゆうさんの腕に抱かれているのは間違いないなくあたしで。
一生、このままふたりでいられたらいいのにって。
ずっとずっとゆうさんの傍で、ゆうさんを感じられていたらいいのにって。
これほどまでに朝が来るのが嫌でしかまなかったことなんて、ない。
ゆうさんが、
すき。
都合のいい女なら都合のいい女でいい。
なんて思ってみたりもするけど、きっと「都合のいい女」にさえもなれないんだろうなって。
あの日降ってたたくさんの雪が、 溶けて無くなってっちゃったみたいに
あたしとゆうさんのことも、またなかったことになるのかなあ。
あたしばっかりが、ゆうさんのぬくもりからいつまでも抜け出せないよ。