★まあタイトルの通りです。なんか長くなった割にはうーんって感じだけど。
邪霊剣との契約まで書いてます。前に考えていたのと場所が違うけどまあいっか。これが正史です。それ以外は分史世界です。時歪の因子壊さなきゃ
長いので追記にしまっておきます。見られなかったりしたら教えてください。なんとかします。たぶん。
追記
「国王命令だ、死ぬか殺されるか、どちらか選べ。」
「え…?」
突然突き付けられたその言葉に、シギルスは困惑した。何を言われているのか瞬時に理解することも、言われた言葉を受け入れることもできなかった。
「答えろ。」
「…オレは…兄貴の言ってること、わからないよ…」
「なら、俺はお前を殺すだけだ。」
そう言うと、アガマは斧を構えシギルスに斬りかかった。とっさに回避したが、攻撃はそれだけではなかった。
「なんで!なんでこんなこと…!」
「さっきも言っただろ、国王命令だって。お前がハーフで、邪魔だから消すんだよ。」
その言葉に、シギルスは何を信じたらいいのかわからなくなった。今まで自分は人間として生きてきたし、国に逆らうことなどしたこともなかった。訳がわからないまま、戦いは続いた。
「オレがなにしたっていうんだよ?!そんな訳のわかんないことで…!」
「なにもしてないさ。なにもしてないけど、なにかされる前に消えてもらわないと困るって訳だ。お前も知ってるだろ、人龍のハーフは長命で”力”も強いって。」
「オレは…オレはハーフじゃない!」
両手で持った剣でアガマの攻撃を防ぎながら、シギルスはそう叫んだ。自信や根拠はなかったが、今までの人生を否定することはできなかった。
「…ま、そう思いたいならそれでいいさ。でもな、シギルス、お前が生きてこの国にいるなら、俺はお前を殺す。そういうもんなんだ。」
「…見逃しては、くれないんだね。」
「そうだな。この国にいる限り、な。」
何故かはわからなかったが、先程まで感じていた悲しみが、今は感じられなかった。考えること自体が億劫で、なにも考えられなかった。
- - - - - - - - - -
そこから先のことは、よく覚えていない。気が付いたら、知らない集落で保護されていた。アルファドから逃げ出す時に大怪我を負っていたらしく、集落の住民に助けられたらしい。話を聞けば、自分は国境の山道まで来ていたようだった。
「君の名前は?」
「…クレム。」
「そうか、クレムというのか。」
今までの名前ではなく、クレムという違う名前を名乗っていた。ここまで追っ手が来るとも思えなかったが、今後のことを考えると名前を偽る必要がありそうだった。
「天界の方から来たみたいだったけど、また天界に戻るかい?」
「いや、天界には戻らない…です。竜界に行こうかなって。」
「訳ありみたいだったし、その方がいいと思うよ。」
噂には聞いたことがある竜界。天界大陸のアルファドから出たこともなかったクレムは、竜界がどんなところか想像もつかなかった。それでも、アルファドに帰る訳にはいかないし、ひいては天界大陸に長く留まる訳にもいかなかった。
「今までお世話になりました。」
「もう行くのかい?」
「はい。…長く留まる訳にもいかないので。」
「なにがあったのかは知らないけど…気をつけて。」
住民に見送られながら、クレムは竜界を目指し集落から旅立った――
- - - - - - - - - -
あの日からどれだけ経ったのだろうか。あの日のことを忘れることはなかった。アルファドに帰りたいという気持ちはなかったが、自分を友達だと言ってくれていた人たちのことが気がかりではあった。しかしそれももはや過去のことで、今となっては確認のしようがなかった。普通の人間だったら既に死に絶えているような年月を生き、自分が人龍のハーフであることを痛感した。あの日、兄と慕っていた者に言われたことは事実だったことが、否定したくてもできない。なんだかそれが悔しくて、激しい憎悪に変わっていた。
「何千年ぶり、だろうか。」
天界大陸に戻ってきたのは、あの日以来だった。国境の山から見える景色は、変わっていなかった。アルファドを目指して山を下ろうと集落に立ち寄った時、その騒動は起こっていた。
「あんた、どこから来たかは知らないけど、命が惜しいならすぐここから出て行きな!」
「なにかあったのか?」
「魔物に!…ああ、とにかく今は魔物が暴れているんだ!」
よくわからなかったが、魔物が出ているらしい。集落の住民らしき人が竜界側に逃げていくのを見送り、クレムは集落に向かった。なにか邪悪な気配を感じながらも、もしかしたらアイツかもしれないと思い集落に入った。
「た、助けてくれ!」
そう言って駆け寄ってきた住民は、後ろを振り返るとクレムを置いて走り去った。不審に思いながら視線を戻すと、そこにはヒトの形をした紅い魔物がいた。
「…そいつ、元々は旅人が持っていた剣なんだ。」
「剣?」
事情もわからず、襲いかかる魔物と交戦する。剣がヒトの形を取るなど、昔どこかで聞いた伝説を思い出した。
「お前はじゃれいけん、なのか?」
言葉が通じるかもわからなかったが、話しかけてみた。この世のどこかには、持ち主の意のままに姿を変え、絶対的な”力”をも
たらすという「じゃれいけん」なる剣がある―そんな胡散臭い伝説を信じてみた。
《我は邪霊剣…確かにそう呼ばれていた。何故貴様は我を知っている?》
「昔、聞いたことがあってな。」
言葉が通じたようで、「邪霊剣」と言葉を交わす。話せばわかるような雰囲気ではなかったが、ここで足止めされるのも考えものだと思い、クレムは話を続けた。
「私からも、聞きたいことがある。何故こんなところにいる?」
《前の主が、ここにいたからだ。》
「…そうか。ならば、ここから離れてはくれないか?」
この集落のためを思っての言葉ではないことが、「邪霊剣」に伝わっていたようだった。僅かに笑うと、意外なことを提案してきた。
《我と契約しないか?そうすれば、貴様は我を動かせる。それに、我が”力”を振るうこともできる。…悪い話ではなかろう?》
「うまい話には裏があるものだが…」
確かに、「邪霊剣」との契約は悪い話ではなかった。なにか裏がある、そう思いながらも、クレムはその提案を受け入れた。
「…わかった。そうしよう。具体的にどうすればいいんだ?」
《我が名を。》
「ならば…今この時より、お前は《ジーク》だ。」
そう告げた瞬間、「邪霊剣」の記憶がなだれ込んできた。何人も、それこそ数えきれない程のヒトの魂を喰ってきたこと、そして、クレムをも喰らうつもりであること。
「私を喰うつもりか。そううまくいくと思うなよ?ジーク。」
《隙さえあれば喰らわれると覚悟なさってください、シギルス。》
ジークに言われた名前は、とても懐かしく、忌まわしく思えた。何千年も遠ざけていた名前だったが、これを機に過去と向き直るのもいいかもしれない、そう思った――