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我が征く道は138

パラパラと、砕けとんだコンクリートが地面に跳ねる音がする。一つ一つが宝具級の武器の衝突は爆発を巻き起こし、白い煙があがっている。
「………あー……何してんだ、アンタ…」
その白煙が渦巻くなかから、覇気はないが、ランサーの声がした。ギルガメッシュは、チッ、と忌々しげに舌打ちする。
「何してって、お前さんが脱落するのは本望じゃないって言ったろ…私が殺すんならともかく……。あと、いくら宝具級の武器だったとしても死なない自信もあったし……」
ランサーの声に答えるように、さらに覇気のない凪子の声がした。

少しして、煙が消え去ると全貌が見えてきた。
ギルガメッシュの鎖により、ランサーが凪子を抱き抱えるような状態で拘束されたので、彼の言葉の通り抜け出すことはできなかった。そこで凪子はどうやら、ランサーをそんなつまらない理由で脱落させないために自分を盾にすることにしたようだった。
ランサーを押し倒す形で、凪子は四つん這いになって盾となっており、その背中の至るところには剣や槍が刺さっていた。
ランサーの方が凪子より体格が大きいため、凪子の背中に回っていた腕や隠しきれていなかった足は、さすがにいくつか同様に刺し貫かれていた。上半身は凪子がどうにか腕力でランサーの身体との間に隙間を開けたのと、直接身体にルーンを刻んで防御力をあげたことで、損傷はないようだった。

凪子は、がふっ、と逆流してきた血を吐いた。大量に出血しているわりには、顔色はさして悪くない。
「いったーい……」
「普通、いてぇですまねぇからな、それ」
「それなー。痛覚は人間並みにあるんだよな…ルーンで消しときゃよかった。そっちは?平気?」
「大したこたねぇよ…おかげさまでな。ったく、借りができちまった」
「まぁ観戦料だと思って受け取っといてくれ。そもそもこの状況に陥ったのは私のせいだしな」
「ハ、そうかよ。で、どうすんだ?第二撃がくるぞ」
ランサーの言う通り、再び“穴”が二人の周囲を埋め尽くした。凪子は、ニッ、と悪い顔で小さく笑った。

「一発は一発だ」

凪子はそう言い、手に持っていた槍の石突きを、ガン、と地面に突き立てた。
「!」
直後、ずっと槍を覆っていた黒い靄が、まるで槍本体から風が吹き出したかのごく吹き飛んだ。姿が露になった槍を見て、ランサーは目を見開く。

その槍は光の加減によって、緑色にも、黄色にも、青色にも、果てには赤色にも見えた。
穂先は三又に分かれ、中央の刃には複数の宝石が埋め込まれている。穂先の根本からは左右に二振り、刃が突き出ている。石突きにも1つ、ダイヤモンドが埋め込まれていた。

「…その、槍は…!なんでテメェがそれを持ってる!?」
ランサーは驚いたような、戸惑ったような、怒ったような、そんな様々な感情のこもった声で問いただした。凪子は、ぴ、と人人差し指を口に当てる。
「何、枷みたいなものさ。神が信仰を失い、その存在性を保てなくなったときに、私を逃がさないためにつけた目印」
「何……?!」
凪子はランサーの言葉にそれ以上は答えず、ガガッ、と石突きで地面に小さな模様を描き、その位置にテレポーテーションすることで拘束から逃れる。そのまま槍を右手上段に、左手をギルガメッシュに向けて、投擲の姿勢に構える。
「…!」
ギルガメッシュが展開した武器の標的が全て凪子に向く。
「五条の稲妻に焼かれるがいい」
だが、凪子の方が早かった。

「  ブ リュ ー ナ ク
  ――穿ち放つ灼熱の槍―― !」

凪子はそう真名を告げると同時に、その槍――ブリューナクをギルガメッシュ目掛けて投擲した。
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