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ずっとずっと逢いたかったのは(銀魂:銀時※グロ有り、閲覧注意!)

「大人しく死んじゃえ」


ニタニタと笑いながら天人は突き刺している刀を横に薙いだ。目の前にいた男の身体はいとも簡単に斬り裂かれ足元に作っていた血の海の中に崩れ落ちる
その瞬間大量の血液が回りに飛び散り、あたしの衣服にも顔にも身体にも容赦なくべっとりと付着した。


『、───っ!』


あちこちにばら蒔かれた赤い斑点を見たあたしの足は急に力を失い、逃げたいと思う意思とは反対にその場に座り込んでしまう。血だまりの中にある白目を剥いた男の顔がすぐ傍にあって足どころが身体全体が壊れてしまったかのように震え出した

嫌だ!怖い、怖い怖い怖い!

瞳から溢れる涙も拭わずに震えている自分の肩をぎゅっと抱きしめる
上からは殺気立った声が降ってきて、でもあたしはどうすることも出来なかった。


「おのれ天人!!」

「我等の星に根付く汚らわしい生物め!同志を殺した罪、貴様らの命で償ってもらおう!!」


すらり、と鞘から刀が抜かれる音
これからここで斬り合いが始まるのかと考えたら益々気が狂いそうになった。


「ふーん、たかが人間ごときが俺達に歯向かおうってのぉ?」

「上等、天人に逆らって生きて帰れると思うなよ」

「いくぞォォ!!」

「かかれェェ!!!」


ガギン 刀と刀が交じりあう鈍い音。もうこのまま空気になって消え去りたかった
情けないことに身体が言うことをきかず(こんな時に限って!)あたしはただ戦いの様子を耳だけを頼りに窺っていた。

ぶしゃり、と何かが斬れる音に鼓膜が割れそうな断末魔、誰かの笑い声に、血が噴き出す音。


どっちが優勢だとか劣勢だとか、もう知る術はなかった。





それが数分なのか数時間なのか、はたまた数秒の出来事なのかは知らない。気が付けば辺りは不気味な程の静寂に包まれていた
意を決してそっと顔を上げる。あたしの目に飛び込んできたのは惨劇としか言い様のない光景だった。




無造作に転がる人間の死体、原型を留めているものもあれば身体のパーツや着物の切れ端、肉片やらなにやらがあちこちに散らばっていて正直何人死んだか分からない程で。
壁、地面、あたしの身体、そしてあの白い花も鮮血で真っ赤に濡れていた。一面に漂う血生ぐさい臭いに目眩がして意識を手放しそうになる

死体の中心に立つ天人達は返り血を浴びていたが何ともなさそうで、あたしの視線に気付くとこちらに歩を進めてきた。


「ごめんねぇ、大丈夫だった?」


言いながらバシャバシャと血の上を歩いてくる天人、道を塞ぐ人間の死体をまるで石ころのように蹴りとばして悠然とあたしの目の前に立った。


「さぁ、俺達に付いてきてくれるかなぁ?
もちろん、君に拒否権なんてないことくらい分かるよねぇ」


すっ、と差し出されたグロテスクな掌
あたしも馬鹿じゃない。この掌を拒んだ後の人生がどうなることくらい簡単に想像できる  けど、生憎この手を易々と握ってしまうような性格でもなくて、


「?」

「…どうしたのぉ?」


すっとぼける天人の声を撥ね除けるように喉から声を絞り出す。


『だ、れが…




…誰があんた達と一緒に行くか…っ』


精一杯の抵抗、天人をギロリと睨んで言ってやる。あたしの行動に一瞬戸惑った天人は面食らった顔をしたけどすぐにまた笑った。


「…ヒヒッ、よく言うよ、人間のくせして!」


凄い力で頭を掴まれる。大体刀を持ってる男でさえこいつらに勝てなかったんだし女のあたしが勝てるわけないじゃん、なんて脳が冷静に分析をする。だからと言ってこいつらに媚を売ってまで生きたくない、とあたしの心が勝手に結論を出していた


何故だろう 身体の中がざわざわするのは、


『殺すなら…殺しなさいよ…!
あんた達にいいように使われるなら、死んだ方がいいわ…っ』


その言葉を聞いた天人の表情がみるみる無表情に変化していく。さっきまでの態度はどこへやら、刀を握り直すと切っ先をあたしに向けてきた
月光が鈍く刀を走る。


「…あっそう。じゃあもういいや、死んで」




ヒュン、と空を切る音

あれ、なんだろ
この感覚、どこかで────






はいはーい、ちょっとどいてぇェェ!!!!!!!!!!






目の前を、
何かが勢いよく通り過ぎた。


「ぐあっ!!」

『!?』


同時にあたしの頭を掴んでいた天人の手が離れる。え、何、何が起こったの!?
でも、この状況を理解するのにそう時間はいらなかった


あたしの前に立ちはだかる銀髪の、男の人を見て。




「よォ、また逢ったな」



顔だけをこっちに向けて微笑んできた男の人は間違いなく今日の(昨日?)夕方にこの場所でたまたま出逢ったあの人で、


『あ、…』


あたしが口を開こうとしたのを遮るようにさっきと違う天人が怒鳴り声を上げた。


「て、てめェ!何者だゴラァ!!」

「あ?…俺?」


ゆっくりと声のした方向に視線を向けると天人がわなわなと肩を震わせて怒っている
けれど男の人は動じず腰に差してある木刀の柄を握り、慣れた手付きでそれを抜き放った(…え、木刀?)


「見て分かるだろ、通行人Aだよ」


そう言い終わるが早いか、男の人は天人達をを木刀で殴りかかっていた
一分も経っていないだろう。彼はあっさりと全員のしてしまい一つ大きな息を吐くとあたしの元に戻ってきてよっこらしょ、と言いながらしゃがむ

彼が手に持っていたコンビニの白い袋には傷も血も何一つ付いてはいなかった。


「怪我はねーか?」


着物の袖であたしの頬に付いた血を優しく拭う。その人はあたしの肩が震えていることに気付くと手を止め、あたしを真っ直ぐ見つめてきた。


「…震えてんのか?」

『っ…』

「お前も女になっちまったんだな、昔はこのくらいでビビる奴でもなかったのによォ」


それには答えず、あたしは視線を静かに落としてはだけている胸元の裾を握り締めた。
小さく鼻をすすり、呟く。


『…めん…なさい、』

「…?」

『あ、あたし…






昔の記憶が、ないんです、』




あの時大切だった人の顔も、名前も、まるで始めからなかったかのように



曖昧だけどひとつだけ言えることはの続きっぽい話。
無駄に長くてすません…orz
ヒロイン記憶喪失。今更。次でラストになるかも、です。

どうぞ最後までお付き合い下さいませ┏o】
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