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この白い雪と(銀魂:沖神)

「ひとつだけ、おしえて」


ふたりにしか通じない言語、
夜の隙間で発達した恋心
結んだ指先と消えない足跡
きっとそれは
何人たりとも永遠に立ち入り禁止の絵空事
聞こえる?雪の降る、音。

どうしてこんなことになったのか、なんて
誰も教えてくれないけれど
今にも迷いそうな暗がりの中で
そっと温もりを確かめたら、
君の全てがここにあった、から。
ただ、
それだけでいいと思った。




「何でこんな夜中に学校に忍び込むなんて言い出したんでィ」


小さな声でぽつりと呟く
ぴったりくっついていないと誰かに見付かりそうな気がしたから
いつもは遠いふたりの距離も
この瞬間だけは空白の入る余地もないくらい埋まっていて
繋いだところから
お互いのぬるい体温を共有していた

雪明かり
真っ暗な世界
静かに迷いこんで
なんだか夢のよう
そう
ここからはふたりぼっちのお伽噺。


「いいから黙ってついてこいヨ」

「へいへい、」


時折暗闇の中で見える見回りの光は身体を小さく丸めて逃げる
たくさんある窓の外ではキラキラと雪が舞っていた
いつの間にか緩く結ばれていた指先
まで、
血がしっかりと通って
どきどきしているのが分かる


「どこに行くかいい加減教えてくれてもいいんじゃねーか」

「行けば分かるネ」

「まさか卑猥なことしよーってんじゃ、」

「バカ言ってんじゃねーヨ、このクソガキ」




ほんとは、ね。
きっとずっと、君の隣にいたくて
でも
そんなこと
言えるはずなかった
今もほら
泣きそうなくらい、嬉しい、から。

誰にも見つからないように、そっと笑う。
かじかんだ指先にぎゅっと力を入れたら、
それよりもちょっと強い力で握り返してくれた。


「ほら、着いたアル」

「……って、ここ」


旅の終着点は、見慣れた場所だった。


「3Zの教室じゃねーか」

「そうアル。何か文句あんのかヨ?」


そう言うと彼女はずかずかと教室の中に入っていく
置いてかれないように後を追うと、
かすかに暖かい空気が身体に寄ってきた
教室は真っ暗だけど
さっきより雪明かりが眩しくて


「んー…あ、あったアル!」


そう言って目の前に差し出されたのは
暗がりでよく分からないけれど
見覚えのあるキャラクターがプリントされた便せん

…あれ、これ
もしかして、


「……ラブレター、とか?」

「…まあ、そうとも言うアルな」

「え、ちょ、なんで」

「い、いいから男は黙って受け取るネ!
返品不可だからそこんとこヨロシクアル」

「は…」




あ、今
ものすごく嬉しい、かも。

そわそわしながら便せんの封を開けようとした時、
待った!と
静止の声がかかった


「何すんでィ、」

「今ここで見ちゃダメアル
家に帰ってから見るヨロシ」

「何だそりゃァ、今ここで見ても別にいいだろィ」

「れでぃの頼みごとは黙って聞いとくアル」

「…」


何か
喉に小骨が引っかかったような
腑に落ちない気持ちを無理矢理押さえて
分かった、と言うと
君はちょっと、ほんの少しだけ
寂しい顔をした。



君は永遠を信じますか?



きっと、俺にとって
この数時間の出来事が
“永遠”と呼べるものだったんだと思う
いつまでも色褪せない、大切なもの

君はもう、忘れてしまった?



【song by:藤田麻衣子“この白い雪と”
申し訳ありませんが、珍しく続いちゃいます】

さようなら旧世紀(銀魂:土方/死ネタっぽい)

あらゆる魂は死んだ後、輪廻すると誰かが言った。
そうして、次の世界では前世で縁があった者同士惹かれあう、と。

あたしはそれを信じない。

声も、身体も、性格も、何もかもが違うのにお互いのことが分かるなんて、そんなの有り得ないじゃないか。
死んだらそれきり。
恋も夢も願いも、死んでしまったらその先はないんだと心に留めて
あたしは戦いの日々を駆け抜けてきた。


血しぶき、刀が空を薙ぐ音、響くは悲痛な叫び声
広がる茜空の下にうずくまる人々、何も語らない戦場
  絶望と悲しみだけが渦巻いて。


だけど、そんな地獄の中
微かに聴こえた途切れ途切れの音楽が
今でも耳にこびりついて離れないんだ。




世界が始まりを告げた時
あたしの短い人生は終わった。

仰ぎ見た空はいつもより遥か彼方にあって
その時あたしは地面に横たわっているのだと言うことをぼんやりと理解した。
どこからか狂ったような雄叫びが聞こえる。
そっちの方に視線を向けようとしたけれど、脇腹に走る激痛がそれをさせなかった。
思わず顔をしかめる。


 !……、痛っ…


身体中を流れる血液が妙に熱くて。
相変わらず痛む脇腹に手を当てると、ぬるりとした感触。
腕をぎしぎしと軋ませながら掌を自分の目の前に持ってくると、あの空に負けないくらいの鮮血がべっとりと付いていた。

刹那、霞む視界。


 ──……。


力なく腕をぱたりと降ろし、大きく息を吐く。
自分の意識が遠のいていくのがなんとなく分かった。

思い出すのはあたしの身体を槍で貫く、武装した天人の姿。
一瞬の隙をつかれ攻撃された。反撃しようにもそれが致命傷だったらしく、刀を振れぬままぐにゃりと傾く世界。

そこから先の記憶がないのは、ショックで気を失っていたからだろう。
あたしは自分の生命力の強さに苦笑いした。


 …は、あたしって、すごく…ない……?


誰にともなく呟く。

さっきまで煮えたぎるように熱かった血が、今は凍るように冷たくなっていた。
ゆっくり目を閉じ、もう一度、大きく息を吐く。


 もう……疲れた…


ああ、あたしは、このまま死ぬんだ。
そう、目を閉じようとした時、耳元で聞き覚えのある声がした。


「──…っ、おい!しっかりしろ!おいっ!!」


その声にハッとしたあたしは手放そうとしていた意識を戻し、うっすらと目を開けて声の主を探す。
その人はあたしを、今にも泣きそうに歪んだ顔で見下ろしていた。


 ひじ、かた…ふくちょ…?


呼び慣れたその名前。
その人はこくりと頷くと、すっかり冷たくなってしまったあたしの手を暖めるように握った。


「…良かった、生きてた、のか……」


ぎゅっと、痛いくらいに手を握られる。
あたしは何も言わず何もせず、ただ黙って彼を見つめていた。


「…すまねぇ、お前を……お前を守ってやれなかった…」


フワリと、煙草のほろ苦い独特の臭いが鼻をかすめる。


 …ふくちょ、う


精一杯唇を動かしてみたけれどあたしの声はちっとも出てこなかった。
喉の奥が掠れて、空気だけが漏れる音だけが辺りに響く。
でも彼はもう何も言うな、と、あたしの壊れそうな身体をそっと抱き締めた。


  ああ、だめですよ、副長
   隊服が汚れてしまうじゃない、ですか


あたしは彼を退けようともがいてみた。全身を走る激痛に思わず顔をしかめる。
だけど、彼ははあたしのことを引き離すのを止めない。
耳元で荒い呼吸が聞こえるけれど、果たしてそれは本当に耳元でするのか分からなかった。

目の前が白に染まっていく。それはまるで眠りに落ちる感覚と同じ、で。
あたしは夢と現実、その狭間で安心した。



ぽつり、震えた声がした




「…死ぬな、頼むから……死ぬんじゃねェ」




その言葉に
こころがギュッと押し潰される気がした。
ああ
こんな副長、見たことないや。
いつもと全然違うじゃん
いつもはもっと…怖くて、強くて、怒ってて、無表情で。
早く、早く総悟に報告しなきゃ、退もきっとビックリするだろうな
だって




副長、ないてるんだもん。




そんなの
こえ、でわかるよ
あたし
あなたのとなりにずっといたから

なんでないてるの?
あたしがしぬから?
さよならは、いや?


「なァ、……頼む、から…」


そうやって彼はうわ言のように同じ台詞を繰り返す。
その文字の羅列がだんだんと音になりいつしか心地よい音楽に聞こえてきた。
これは死んでいく人達への手向け歌なんだろうか
それすらもよく分からないけど、

あたしは死にながらそのメロディを口ずさむ。
やがて音楽はあたしたちを離れてひとつの意思を持った個体に変化して、あたしたちを包むように鳴り出した。
ころん、ころんと
まるでこの状況に合わない、楽しそうなうた
貴方にも、聞こえてる?



さようなら旧世紀



夜が訪れる、橙で滲んだ世界に、響き渡るその音楽をふたりで聴いた。
そっと目を伏せて呼吸をしたら
ぷつり、と何かが切れた。

ああ
このまま貴方の体温に溺れるのも悪くない。




【song by:AKINO“創聖のアクエリオン”
昔書いてたものを加筆修正。よく分かんない終わり方…orz】

愛とはまた違う祈り(宇宙兄弟:むたせり)

月ははっきりと見えている
なのに
しとしとと雨粒が降り注いでいる

君は泣いている
俺は
その涙が喜びの涙なのか
悲しみの涙なのか
そもそも
なんで泣いているのか
その理由を知らされずに
ただ
君の隣に立ち尽くしている

今にも壊れてしまいそうな儚い輪郭が
夜の冷たい空気にぼんやりと溶けていて
すごく
綺麗、で。

伝えたい思いは沢山あったのに
戸惑いが言葉を生むのをやめた
その瞬間は
きっと一生忘れない



きゅ、と掴まれた
スーツの裾から
彼女の手が震えているのが分かった
その手に自分の手を重ねたい
そんな衝動を必死に抑える
焦る気持ち
雨滴の音だけが静かに
耳の奥に響く

どんな言葉をかけたら
どんなことをしたら
君は泣き止んでくれるの?
答えのない問いだけが
空回って
不安定に揺れた

夜に染まった空を見上げる
星が絶対零度の海に落ちて凍っているのを見た。


「……南波、さん」


ふと
俺を呼ぶ小さな声がした
びくりと身体を震わす
慌てて目線をそっちに向けると
視線がかっちり合わさって
こころがどっきり跳び跳ねて
時間がゆっくり止まっ、て

ぱたりぱたり
屋根に落ちるあめ
そこからは
ふたりぼっちの合図


「せ…せっ、せりかさ」


彼女は泣いていた
でも
その理由を俺は知らない。
流れた涙は
頬をつるりと滑って落ちる

南波さん、ともう一度呼ばれて
はい、と
裏返った声で応じたら
彼女は濡れた瞳の奥から
もう一粒涙をこぼして呟いた



「月が、きれいです、…ね」



その先には白く光る月
誰かにかじられて少しだけ欠けていた
彼もまた
夜空にぴったりと貼り付いている
そうですね、と
この静かな空気を壊さないように呟いたら
彼女は涙を流しながら笑った


「ゆめ、だったんです」

「…宇宙に行くのが」

「その夢が叶って、すごく…」

「……、」


その後に
彼女は何か言った
けれど
俺の耳に届くには足りなかった


君が悲しむ理由を知りたい

「どうしたんですか?」

って聞ければ
済む話なのに
ふたりの間には
近くもない遠くもない
複雑な距離があって
ぽっかりと存在する隙間、

貴女のために何かしてあげたくて
でもその何かが見当たらなくて
ただ
黙って
一緒に月を見た
なんか
情けない話だけど
俺も泣きそうになった




不意、に
裾を掴む手のひらの力が
するり、と消えて
気付いたら彼女は
雨の中に飛び出していた


「!っ、せりかさん!!」


急いで彼女の姿を追う
細い雨に囲まれた彼女は
歌うように
踊るように
くるくると歩いた
とても
嬉しそうな顔をして
生まれたての小さな水溜まりを踏みつけて
上を見上げて
そして笑った

彼女は泣きながら
彼女は笑いながら
ゆっくりと立ち止まる
俺もそれにつられて
その場で足を止める


「…?どうしたんですか、せりかさん…」

「……南波さん、」


その姿は
月明かりと雨の透明な膜をまとっていて
俺が触れたら
彼女が全て消えてなくなってしまいそうな
薄手の幻みたいで
急に怖くなった


「私、今……」


そう言って
彼女は顔を手で覆って
ふるふると肩を震わせて
静かに泣いた

今度は確かに届いたんだ
俺の耳に
彼女の声、が。



「宇宙に行けることが決まって、とても幸せです」



ちゃんと聞こえたよ、せりかさん
でも
返す言葉が見付からなくて
ただ
力一杯うなずいた。




【song by:跡部景吾“理由”
曲のカンジとちょっと違うけど…
初宇宙兄弟。むた×せりがだいすき!
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