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釣り合わなくても、傍にいたかった(庭球:千石)

それはまるで解く呪文がないような暗号だった


なんでもない単語が群がって
ひとつの間違った想いを作って
するどく尖って、きみを傷付けて、ぼくは悲しんだ

本心を隠したまま


鍵が見つからないんだよ
どうしたら笑ってくれる?
それとも
黙ってこの夢からいなくなった方が
きみは幸せなんだろうか




『別れよう』


閉鎖空間の片隅で
素っ気なく放ったセンテンスは
一瞬で僕の感覚を麻痺させた

指先から冷たく凍っていく
それを暖める術を知らなかった


「  え、っ」


目の前にいる女の子の両目がぱちりと開かれる
何度この瞳に見つめられたか分からない
それくらいの時間を僕たちは共有してきたのだ

まばたきの音がふたりの間を埋める
いや
もしかしたら離れているのかもしれない

夕立のように溢れそうな想いをこらえて、ぷかりと浮かぶ適当な言葉に身を任せた


「な…んで、キヨ」

『今までの行動、全部遊びだったんだよね
知ってるでしょ 俺がひとりの女の子じゃ足りないってこと』

「な、」

『君と付き合ってる間、実はたくさんの女の子と遊んでたんだ
今まで言わなかったけど』

「 う、そ」

『嘘じゃないよ
もう恋愛ごっこに飽きたんだ、君といたってつまんないし』


「  、。」


『まっ、そこそこ楽しませてもらったからいいや
じゃあね』



目を塞いで息を止めて
この空気から逃げようとする

これでいいんだ
もう、さよならなんだ




「……そっか、」



僕の両足を呼び止めるにはか細い
でもここに留まらせる力がある声が
後ろから聞こえた


「…分かってたの、最初から
キヨとわたしは釣り合わないって」

「だって、いつもキヨの回りにはわたしより綺麗な女の子達がいて」

「その子達と肩を並べることなんて出来なくて」

「……でも」

「…すき、って言ってくれて嬉しかったの
嘘でも」

「わたしにとっては、それがすべてだった」



ひとつひとつ
彼女の言葉が耳に届くたびに
僕のこころを覆っていたピースが剥がれて落ちた

嘘で固めた防御柵
こんなに脆いなんて初めて気付いた、


「…キヨ」

「今までありがとう」

「……さようなら」




ふわっと動いた空気に震えて
振り返ったその先には
きみの姿はもうなかった
ばん、と扉が閉まる音

無言。
黄昏だけがこちらを見ていた
この世界に
ひとりぼっちの迷子がぽつり



『  、』




鈍く走る、現実の痛み






嘘、じゃなかった
そこに愛はあったんだ
確かに


『…最低だな、俺』


それはまるで表と裏の関係

すきだった
だいすきだった
のに
偽ることしか出来なかった


『……こんな俺じゃなくて、もっと違う男の方が…
きっと、君は幸せになれる』


迷子になった気持ちがようやく辿り着いたのは
後悔の最果てだった

そしてここにあったんだ
暗号の答えと君に繋がる鍵


『…もう、遅いよな』


君に伝うわけはないよな



傷付けることしか出来なくて
それを誰が愛と呼んでくれるのだろうか




【song by:ASIAN KUNG-FU GENERATION“暗号のワルツ”

久々更新
想いだけが空回り、】
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