アルマさんから提供して頂いた模倣人形の見聞が一段落し、表へ休憩に出ると、ルクセラさんがお越しになられていた。
なんでも、ローザやハナさんのその後が気になったのだとか。
私もつい先日聞いたばかりだったけれど、書面で知るよりは伝わりやすいだろうと思い、ジェシーさんから説明を引き継ぐ。
私が説明をすると、ルクセラさんはローザがお母様と仲直りされたこと、そしてハナさんの記憶が残っていたことを喜ばれていた。
きっとご自身の術がちゃんと機能したのか、不安だったのだろう。
何か出来ると思い、助力し、でも上手くいかなかったらと考えた時の不安はよく分かる。
安堵した様子からはルクセラさんの優しさが伝わってくるようで、自分のことではないのに嬉しくなってしまった。
その後、ルクセラさんが購入されたという模倣人形の顛末を聞かせて頂いた。
人形の名はルミナー。
手に掛け、既に元の木製人形へ戻っているらしい。
ルクセラさんのお母様に似た、しかし理想的になり過ぎてしまったらしい人形。
それだけなら、きっとルクセラさんはルミナーさんを手に掛けていなかったのではないかと、私は思った。
きっと一番の理由は、ルクセラさんが仰っていた「言ってはならない言葉」のせいだ。
自分の理想が、本物を否定する。
たしかに、それはあってはならないことだ。
本当に自分の理想なら、そこも汲み取ってくれる筈なのだから。
だから、ルクセラさんは決意したのだと思う。
本物が蔑ろにされきってしまう前に、と。
そこまで深くは訊いていないので、私の想像もだいぶ入ってしまっているが、そう的外れでもないのではとも思う。
ルクセラさんは後悔はしなかったと言っていたが、しかし、本意でもなかったのではないか。
そう思うと本当にやるせなくなる。
ルクセラさんが言った「後悔はしていない」とは買ったことに対するものか、それとも殺してしまったことへか。
少しだけ訊くのが憚られて、追求はできなかった。
それから、ルクセラさんにはお姉さんが居るらしいことが分かった。
顔や名前を偽っているかもしれないと仰っていたが、もしそうでないならルクセラさんの髪や瞳の色は覚えておいた方が良いだろう。
名前は簡単に偽れるが、容姿を偽るのは覚悟と相応の技量を持つ者の手助けが必要だから。
偽名を使っているならと名前は訪ねなかったが、念のために機会があれば訊ねてみた方が良いかもしれない。
お姉さんもだが、ルクセラさんにも謎が多いように感じる。
お仕事は軍属、で良いのだろうか。
自由な行動を認められていて、年齢は恐らく私とそう変わらない筈だ。
エルフもしくはハーフエルフという感じでもなさそうなので、見た目通りの年齢だと思う。
だからこそ謎は深まる。
深まるけれど、今はルクセラさんのお姉さんが無事に見付かること、ハナさんやジジさんを始めとした人形達が皆さんに受け入れられ生活を送れること、それを願うとしましょう。
皆に主のお導きがあらんことを、多くの者に幸多からんことを。
そんな小娘の日記より。
次のブログが今回と同じ形式になるかは、予定は未定です。
たぶん元に戻ります(ネタバレ)