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お知らせマン(今書いてるやーつについて)

はろはろ
あこです

今おねつの「数学教師と夢主」シリーズ
↑↑勝手にシリーズ化してるんですけどもね
この度カテゴリー分けしました
下のカテゴリーに「先生と先生」ってやーつを追加しました
ので
まとめて見たい方はそちらからどぞう(主にわたし)


>>唐突なこれまでのあらすじ<<

キ学に勤める数学教師と古典教師、なんとふたりは中学の時の同級生!
お互い中学の時すきだったんだけど、すきだったからこそ一歩が踏み出せず。
それから数年後同じ学校で再会したのだけど
もだもだぐだぐだなんだかんだで中途半端な関係に。

「家族も大切だから、今は付き合えない(でも好き……かも?)」
「誰かに取られるから、好きにならない(でも好き……かな?)」
と、お互い好きかも、所謂両片思い状態なのに
なんとこの二人、付き合っていないのである!

ある日はえっちなホテルで一日過ごし
ある日はコスプレでエンジョイしたり
やることやってる二人なのに
なんとこの二人、付き合っていないのである!

という話です。

ちなみにくるっぷなるサイトにも同じ内容を投下してます
そっちは表紙付き(すごいわねぇ)(もうネタないです)
crepu.net
↑↑今書いてる「先生と先生」が好きすぎて、作ったミニチュアハウスにも影響されてる強火オタク
自分が一番のファンだ
作品を愛していけ(??)

それはそうとこんな過疎&見る人選ぶ&古のブログに
ほんといつもありがとうございます
うれしいですわ

更新頻度に波がある
最近風/柱ばっかりの
そんなブログですが
これからものんべんだらりとがんばりますので
なにとぞ
なにとぞ

あこ

曖昧な気持ちで引き止めるほど子どもでもなくてA(キ学:数学教師 シリーズもの)

前のおはなしはこちらから

---

それから後のことは嵐のように過ぎ去っていったので端的に語ると
予想していた「あそんで」攻撃に、俺達は為す術なく巻き込まれた。
お絵描きをはじめ、絵本の読み聞かせ、こととプラレール、寿美とネイル(お湯で落ちるヤツ)、就也が帰ってきたらゲーム、積み木遊び、粘土遊び、美容師ごっこ、などなど。
気付いたら夕飯が出来てて、気付いたら俺の横でコイツが美味しそうに出来たての唐揚げを口に運んでいて、相変わらずチビ共は落ち着きがなくて、怒涛の展開続きで目が回りそうだった。比喩的表現じゃなく、物理的に。

「はい、いっぱい食べてねぇ」

「うわあ、ありがとうございます。すごく美味しそう」

お袋が追加のおかずを運んでくる。
ポテトサラダと、野菜たっぷりの中華スープだ。鍋ごと入ってるそれらに、チビ共がわっと飛びつく。
手元にあった空いてるお椀を手に取り、適当によそって隣の女に渡してやると、小さくありがとうと返ってきた。

「あーあ、こと、めちゃくちゃこぼしてるじゃんか」

「あっ!就也、それあたしのだってばっ!」

「ちがいまーすおれのでーす」

「げんにい!ことねぇ、いっぱいたべるよ!」

「……」

「さねにい、これどーぞお」

俺の皿に、弘からの容赦ない唐揚げ攻撃。小皿から溢れるくらい乗せられたので、ありがとなと頭を撫でてやると嬉しそうに目を細めた。

「寿美、就也、まだたくさんあるだろーが。メシ中に喧嘩すんな」

「だって実兄、就也が」

「ちがうよすみ姉ちゃんが」

「分かった分かった。お前らの言い分は後で聞いてやるから今は黙って食え、いいな?」

「兄貴、すみが味噌汁こぼしたからちょっとすみのこと見てて」

「おい、すみにかかってねぇだろうな?」

「さねにい、すみ、だいじょぶ!」

「あーっ!すみ、暴れるな!またなんか倒すだろ」

「さ、実弥ちゃん、なんか手伝う?」

この状況にたまりかねたのか、俺を気遣う声がする。
隣に目線をやると、女が心配そうな目で俺を見つめていた。大丈夫、と言われたら大丈夫じゃねぇんだけど、これが日常茶飯事なのでもう慣れっこだ。

「あー……とりあえず大丈夫だから、飯食ってて」

立ち上がった瞬間、大人しく飯を食っていた貞子も俺に倣うように立ち上がる。
俺がことの座っているところに着くより先に、貞子が俺に抱きついてきた。

「貞子、もうごちそうさまか?」

さっきまで貞子が使っていたお椀と小皿には、食べていたものがちょこんと取り残されている。
貞子は首を横に振って「さねにいといっしょがいい」と小さく訴えてきた。思わずため息が出る。あまり甘やかすのも良くないよなと思いつつ、貞子を抱っこしてやる。それからことに味噌汁がかかってないかを確認して、貞子の食べ残しを俺が座ってる席に移動した。後始末は玄弥がやってくれるだろう。

貞子を膝の上に乗せて、自分の分を口に運ぶ。ドタバタしすぎて、味なんか分かりゃしねぇ。
貞子はと言うと機嫌よく足をぱたぱたさせて、ピンク色の箸で残っていたご飯を食べ進めていく。どうやらごちそうさまにはまだ早いらしい。

「実弥も玄弥もありがとねぇ。弘、ご飯全部食べた?」

台所からエプロンを外しながらお袋がやってくる。これでちょっとはチビ共も大人しくなるだろうか。

「見ての通り」

「あらー、食べきったのねぇ!弘、すごいねぇ」

「おわった!」

椅子に座っていた弘が笑顔でお袋に手を差し出す。お袋は細腕で軽々と弘を抱っこして、ついでに弘が使っていた食器類を片付ける。すると、隣の女が立ち上がって慌ててお袋に近寄っていった。

「お手伝いします」

「あらあら、いいのよ!座って食べていて」

「ありがとうございます。もう食べ終わったので、お手伝いさせてください」

その言葉にビックリして隣を見ると、すっかり空になっている。あれ?俺、コイツにメシをよそったのってついさっきじゃなかったか?時計を見ると、最後に見た時間からもう数十分は立っていた。そりゃメシだって食い終わってるか。

「いいのよいいのよ!それより実弥、この子を家まで送っていってあげて」

言われなくてもそうする予定だった。外は夏が近いと言うのにすっかり黒に染まっている。

「あなたがよかったらまた家に来て!みんな喜ぶし、私もご飯の作りがいがあるわぁ。ウチの旦那にも会わせたいし、ねっ」

「親父はダメだ、めんどくせぇから」

結婚前の顔合わせじゃねぇんだし、親父に会わせるとあれこれ聞いてきそうだから俺としては遠慮しておきたい。
それはそれとして、俺の傍から一向に離れようとしない貞子をどうするか。
何かを察したのか、貞子は大声を出して「やだー!」と俺の膝の上で暴れ始めた。

「さねにいだっこして!だっこー!」

「貞子。兄ちゃん今日、いっぱい貞子のこと抱っこしてあげただろ」

「やだ!もっと!もっとがいい!」

いい加減にしろと言いたい気持ちを、ぐっと堪える。いつもなら聞き分けがいいのに、他の女と話すだけでこんなにわがままで七面倒臭くなるのか、俺の妹って。
なんて言い聞かせようかと考えていると、後片付けを終えた玄弥が貞子を無理矢理引っペがした。途端、泣き叫ぶ貞子。

「兄貴、貞子は俺が何とかしておくから」

「なんとかって……」

玄弥の腕から逃れようと暴れる貞子。
そんな貞子を上手く宥める玄弥。
あまりにも暴れるので、隣の女が若干引いている。

「……す、すごい泣いてるけど、大丈夫なの?」

俺もこんな貞子を見るのは初めてだった。返答に困っていると、寿美が俺と女の手を無理矢理引っ張る。

「実兄、今のうちに行っちゃいな!」

「お、おい寿美、」

「貞子なら玄兄とあたしがなんとかするから!お姉ちゃん、今日はありがと!次こそ実兄との恋バナ聞かせてね!」

「えっ!?」

ほらほら!ぐいぐいと背中を押され、玄関に追いやられる。
じゃあねと別れの挨拶をした寿美は、振り向かずに居間へ戻って行った。

---

「折角の休みだっつーのに、俺ん家の都合に振り回しちまったよなァ。ホント申し訳ねェ」

街灯が頼りなく光る道を、並んで歩く。
本日何度目の謝罪か分からなかった。

「ううん。みんなに会えて嬉しかったし、楽しかったよ」

伸びをしながら女は言葉を続けた。

「それにしても、実弥ちゃんって『お兄ちゃん』なんだなって」

「そりゃそうだろ」

「そうなんだけど。こないだスーパーで会った時もそうだし、なんかお兄ちゃんってすごいなって」

「まァ……兄ちゃん、だからな」

「わたしのお兄ちゃんよりずっとかっこいいよ」

「はぁ!?」

予想外の言葉に、素っ頓狂な声が出た。コイツ、兄弟いたのか。そう言えばお互いの家族構成の話なんてしたことなかったか。
玄弥のことは学校で見たことあるからともかく、他の兄弟姉妹の話なんてしたことがなかった気がする。
そりゃそうだよな。家族の話なんてキッカケがなきゃ話題にすら上がらないし、緊急性がない限りこっちから聞く必要もない。
同級生なのに、同級生だからかもしれないが
まだまだ知らないことだらけだ。

「あーあ、実弥ちゃんがお兄ちゃんだったら友達に沢山自慢できたんだろうなあ」

俺がコイツの兄ちゃんだったら。
それって近親何とかだろ。と考えて、バカか俺はと心の中でツッコんだ。

「お前が妹だったら、俺は毎日お前に数学を叩き込んでるなァ」

「お兄ちゃんなんだから優しく教えてよね」

「バーカ、お兄ちゃんだから厳しくするだろォ」

車通りが多く、明るい道に出る。家の場所を聞くと、こないだ会ったスーパーの近くなんだとか。家の前まで送ると申し出ると、スーパーまでで大丈夫と断られた。

「家の前まで送るってセリフ、中学生とか高校生が言うセリフみたい」

「馬鹿野郎、夜道を女ひとりで歩かせる訳にはいかねぇだろ」

「20越えてる女なんだから襲われないって」

「変質者はそんなこと気にしねェ」

「あっ、まるで自分が変質者みたいな言い方」

「なんだってェ?犯すぞこら」

「きゃーっ」

「あっ、待て!」

人混みのなかで走り出そうとした女の手首を掴む。こんなところで走るんじゃねぇ危ねぇだろ。強めに言うと、くすりと笑われた。

「何笑ってんだよ」

「いや……ごめん。お兄ちゃん、頼もしいなって」

「俺はお前のお兄ちゃんじゃねェ」

そう、俺は。
お前の兄ちゃんでもないし、甘ったるい関係でもない。
俺達はただの同級生で、ただのセフレで、でも。

なんだか時々、分からなくなる。


曖昧な気持ちで引き止めるほど子どもでもなくて


「……実弥ちゃん?」

名前を呼ばれて、ハッとした。よほど深刻な顔つきだったのか、見つめる瞳がふるりと揺れている。
なにもかも誤魔化すように、額を軽く小突いた。
続きを読む

曖昧な気持ちで引き止めるほど子どもでもなくて@(キ学:数学教師 シリーズもの)

俺とお前はクラスメイト、だったから。
俺の親がコイツのことを知ってるのは、まあ当然と言えば当然のことで。

「はい、いっぱい食べてねぇ」

「うわあ、ありがとうございます。すごく美味しそう」

でも、まさか
こんな展開になるなんて。
食卓に並ぶ、色とりどりのご馳走。
一体どうしてどうしてこうなった?
ここで、最近の記憶を遡ってみることにする。

---

いつだったか、アイツと実家近くのスーパーでばったり会った時。なんかよく分かんねぇし知らねぇけど、うちのチビ共がいたくアイツのことを気に入って。
それから実家に顔を出す度に、「あのおねえちゃんは?」「実兄あの人いつ連れてくるの?」「あのお姉ちゃんに会いたーい」なんてしつこく、うんざりするほど聞いてくるから
今度の週末連れてくるって!と、半ば勢いで約束しちまったのが先週のはじめ。

んで、メッセージで「チビ共がうるせぇから俺ん家に顔出してもらいたい」的な内容を送ったのが忘れもしない水曜日。
その日はめちゃくちゃ忙しくて、あっという間に一日が終わってて、ケータイを見る暇もなくて。
寝る前に、そーいや一日中ケータイ見れなかったな、なんて思い出しながらケータイを見ると「いいけどいつ?」って返事がひとつ。
断られなくてよかった。すごく安心して、すぐ寝たんだよな。
お陰でアラームかけ忘れて、次の日遅刻ギリギリになっちまったんだけど。

アイツの都合と、俺ん家の都合。
なんとかすり合わせて、今日来ることになって。
チャイムの音に目を輝かせながら反応するチビ共。けれど、俺は理由もなく緊張していた。まさか昔好きだった奴を家に呼ぶとは夢にも思わなかったからかもしれない。

アイツが顔を見せた瞬間、まあはしゃぐはしゃぐ。

「うわあ!おねえちゃん、こんにちは!」

「ホントに来てくれたの!?」

「こんにちは、寿美ちゃんにことくん。あれ、就也くんは?」

「アイツは今野球クラブでいねェ」

「実弥ちゃん」

一番背丈が小さいことに目線を合わせるようにしゃがんでいたアイツが、すたっと立ち上がり俺に紙袋を突き出してきた。

「これ、つまらないものですが」

「は、」

「えーっ、これなに?」

俺が聞くより先に、ことが乱暴に紙袋をひったくって
寿美と一緒に中身の確認を始めた。

「ケーキだよ。みんな、なにが好きか分からないから適当に見繕ってきたんだけど」

「うわぁ!ケーキ!」

「やったー!」

おい、お前ら、コイツに会いたかったんじゃなかったのか?
俺の疑問はどこへやら。ケーキが入った袋を嬉しそうに、わたわたと持っていく寿美とこと。
置いてきぼりになった俺達は、顔を見合せて吹き出した。そういえばこないだ会ったスーパーでもこんなことがあったな?なんて、既視感に頭をく。

「悪ィな、気遣わせちまって」

「ううん。みんなが喜んでる姿が見れて嬉しいよ。就也くんに会えなかったのは残念だけど」

「就也もお前に会いたがってたからなァ。ま、あれ食えば機嫌も直るだろォ」

「ケーキってすごいんだね。まさかあんなに喜んでくれるとは思わなかった」

「ケーキ人数分なんて、ずいぶん金かかったんじゃねぇの?」

「喜んでくれる顔が見れたから実質タダみたいなものだよ──」

「あれ、実弥?」

後ろから俺を呼ぶ声。振り返るとお袋が、まだ幼い弘を抱っこしていた。

「チャイムが鳴ったと思ったんやけど……」

言いながら俺の隣に立つお袋。
思わぬ来客の姿を見て、「あらあら!」と嬉しそうな声を上げた。

「まーっ!あなたがうちの実弥と同級生だったって言う」

「あ、はい。はじめまして」

「確か、実弥と同じクラスだったことがあるでしょ?」

「あっはい。不死川君とは2、3年の時に同じクラスで」

「部活、女バスやったよねぇ?」

「そこまでご存知なのですか」

「それはもう!実弥ったら毎日貴女のことをね、」

「あーっ!」

その先を言わせてはいけない気がして、大声で遮る。

「お袋!俺の話はどうでもいいだろ!」

「あら、まだ何も言うてないよ?」

「何か言いかけてただろうが!」

俺の反応を見て、ニヤニヤと意地悪く笑うお袋。
何の話か理解出来てないのか頭上に疑問符を浮かべる元クラスメイト。
居間の方から「さねにい、ケーキ!ケーキだよぉ!」と、嬉しそうなことの声。
「あっ、先生……?え、なんでここに?」なんて、2階からタイミングよく降りてきた、この状況に不思議そうな顔をする2番目の弟。
待て待てどっからどう片付けていきゃいいんだ?抱っこされてる弘と目が合う。助けてくれ。そんな兄ちゃんの願いは届くわけもなく。

「ねっ!あなた、これから暇やの?」

「えっ、あっ、はい。特になにも」

「それやったらご飯食べていけば!丁度これから準備するところやし、待ってる間上がってもらって」

「お、おい!お袋!何言って、」

急展開に猛抗議しようと口を挟もうとして、お袋に弘を押し付けられる。
ぐっと目線が高くなったことに興奮したのか、弘は俺の腕の中でじたばたと暴れだした。
きゃっきゃっとはしゃぐ声に反比例するかのように、俺の心中は段々穏やかじゃなくなっていく。

「こら、弘、暴れるな!」

「きゃー!さねにい、たかいたかいしてぇ」

「この状況で出来るかっ!いってぇ!髪引っ張るなっつーの!」

顔面を器用によじ登る弘をなんとかひっぺがそうとするけれど、中々上手くいかない。
そうこうもだもだしているうちに、お袋がアイツの腕を取って強引に家に招き入れようとしているのが見えた。

「うちの子がこないだ迷惑かけたって実弥から聞いたのよ。お詫びって訳じゃないけれど、みんなあなたのこと好きって言うてるし、もう少ししたら就也も帰ってくるし、是非そうしてもらえれば」

「え?ええ??」

お袋が強引すぎて、アイツの体勢がおかしなことになっている。
土足で上がるまいと靴をなんとか脱ごうとしているのか、足元が忙しそうだ。

「お袋。先生が靴脱ごうとしてるから、ちょっと待ってあげた方が」

そこに割って入ってきたのは玄弥だった。
お袋は玄弥の一言に「手離したら逃げるかもしれんでしょ」と、こともなげに言ってのける。逃げるってなんだ。

「に、逃げないので!せめて靴を脱いでもいいですか!?」

「あら、じゃあ上がってってくれる?」

「はい。不死川家がご迷惑じゃなければ……」

ホント!?
返事を聞いたお袋の声はなんだか楽しそうだった。
言葉もなく、大きなため息が出る。

……厄介なことにならなきゃいいけど。

そんなことを考えていると、俺に張り付いていた弘が急に視界からいなくなる。
振り返ったその先で、玄弥が弘を軽々と肩車していた。

「兄貴。弘は俺に任せて、先生についてあげたら?」

「へっ」

「アイツら、めちゃくちゃテンション上がってるし、絶対ゲームだのお絵描きだのなんだのに付き合わされるっしょ。先生女だし、パワー負けするかも」

「……それもそうかァ」

玄弥の言う通りで、テンション上がったチビ共は俺でも相手をするのが大変で。
そんな訳でアイツ一人で遊び盛りのチビ共と目的の晩飯が出来るまでぶっ通しで遊ぶ、なんて割と無理な話で。
だったら俺がついてって、少しでもコイツの負担を減らそうと思って。
多分、コイツが思ってる以上に振り回して来そうだからな、アイツら。

玄弥は女に「先生、ゆっくりしてってくださいね」と一礼すると、ギャーギャー聞こえる居間へと向かっていった。

「おじゃまします」

「いらっしゃい!ゆっくりしていってねぇ」

靴を揃えて俺ん家に上がるアイツに、無理してねぇか?と訊ねると
「不死川家のご飯楽しみだよ?」なんて呑気に返してきやがる。お前、これから地獄を見ることになるんだぞ。
来客用のスリッパをに足を通し、お袋の案内を受けて進み始める。
その後を追うように、俺も歩き始めた。

「……!」

と、廊下の角から不意に貞子が現れた。
貞子の目が見開かれる。
貞子と邂逅した女は足を止め、しゃがんで挨拶しようとしたけれど
貞子は女を尻目に早足で俺のところに駆け寄ってきた。素早く後ろに隠れて、服の裾をぐいぐい引っ張ってくる。

「貞子。この人はオキャクサマなんだからちゃんと挨拶しろ」

「貞子ちゃん、こんにちは」

ほほ笑みかける女の目線から逃げるように、掴んでいる手に力が入る。
その行動を見ていたお袋が貞子に声をかけた。

「どうしたの?」

「コイツ、初めて会った時からずっとこんな調子でよ……」

ふぅん。お袋は一瞬考え込み、それからこんなことを言い出した。

「貞子は実弥が好きやからねぇ、嫉妬してるんやないの?」

「え?」

「実弥が家に女の子を連れてくることなんか滅多にないから、大好きなお兄ちゃんが取られるって思ってるんやない?」

お袋の一言に「そっかぁ」と納得する女。おい待て納得すんなァ。つーかコイツ以外にも女連れてきたことあるだろ、と反論しようと思ったけど、最後に女をここに呼んだのももう数年前か。社会人になってから彼女が出来たことがないので、貞子が警戒する理由が納得出来た。
そりゃ大好きな兄ちゃんが家族以外の女と仲良くしてたら気分はよくないよな。って、そうなのか?

「じゃあわたしから話しかけても嫌われるだけかー。貞子ちゃん、気が向いたら一緒に遊ぼうね」

優しい言葉をかけられた貞子だが、イヤイヤ首を振りながら「さねにい、だっこ!」なんて抱っこをせがんでくる。
言う通りにしてやると、貞子は女と顔を合わせないように俺の胸に顔を埋めてきた。
ご機嫌取りに頭を撫でてやる。荒い鼻息が胸元に広がった。

「悪ィ……どうやらお袋の言う通りみてぇだわァ」

「気にしてないし、貞子ちゃん可愛いじゃん。そんなにお兄ちゃんが好きなのね」

「うちの子ども達はみーんな実弥のことが好きなんよ」

「愛されてるんですね、不死川君」

「職場での実弥はどんなかんじやの?」

「そりゃもう怖くて怖くて。生徒に補習のプリントを解かせながらグラウンドを走らせてます」

「おい、変なこと言うんじゃねェ」

「だってホントのことじゃん」

そんなことを話しながら家族が集まっている居間に到着する。大きいダイニングテーブルには箱から出たケーキが皿にも置かれずそのまま並べられていた。ここはケーキ屋か?
ついでにテーブルの上にはプリントやらオモチャの車やら絵本やらが乱暴に置かれている。

「なにやってんだおい、ばっちぃだろ!」

「どーせすぐ食べちゃうんだから問題ないじゃん」

「あのなぁ、」

「あっ!おねえちゃん!ケーキなにたべる?」

「えっ」

ことは「これはいちごでしょ、これはチョコのやつ、これはもじゃもじゃ」なんてひとつずつケーキを指差しながら説明をしていく。説明されたケーキの個数は全部で7個。両親を除いたとして、ひとつ足りない。

「俺はいいから、お前食え」

「えっ。そんな、悪いよ」

「いーから。コイツらと一緒に食ってやってくれ」

「でも……」

躊躇う女に両サイドから「なにたべる?なにたべる?ことはね、チョコのやつ!」「お姉ちゃんは何が好きなの?あたしショートケーキ!」と、猛攻を浴びせることと寿美。おろおろしている女に、目の前にあるデコレーションされたプリンの容器を掴んで渡す。

「さね、」

「これでいいかァ?」

「……ありがと」

これでひとまずは一件落着か。
台所に向かい、引き出しからフォークとスプーンを持っていってやる。

「玄弥、お前ケーキ食うかァ?」

「うーん、今はいいや」

玄弥と弘は音が出るあいうえお表で遊んでいた。貞子はケーキに見向きもしないままずっと俺にしがみついているし、就也はまだ帰ってこない。
不要なケーキを戻している横で、3人で仲良くケーキを食べる姿が目に入る。美味しいね。嬉しそうにプリンを頬張る姿を見て、少しだけ俺の口元が緩んだ。
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