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ノンフィクションな恋愛ファッションショー(キ学/さねカナ/を見つめるモブ子)

注意
・さねカナと言いつつあんま要素がない(さねたゃの強引さが見たかった)
・モブ子目線(イチャついてるところを間近で見たかった)
・諸々未予習(本編のみ)
・久々歌詞夢(ミステリー)
・なんでもいいよの民のみ閲覧おすすめ

それではどぞ



高校最後の学校祭、の
3日目の土曜日、の
夏真っ盛りの暑い夜。

この時代になってやらされるとは思わなかった
グラウンドのど真ん中で煌々と燃え上がるキャンプファイヤー(火の始末どうするんだ?)


それを囲みながらゆるゆると進行している全校生徒対象のフォークダンス(本当にいつの時代だよ)


「あらあら、みんな楽しそうに踊っているわね」
横で楽しそうに笑う、生物の先生。
理由は分からないけど、当学校のブレザーをタートルネックの上から羽織っていた。

「あなたは踊らないの?」

「はあ……」

選択授業で生物を取っていないため、この先生──胡蝶先生──と喋るのも初めてだし
なんなら関わりもないので(何年生の担任かも分からん)(と言うか担任持ってるのか?胡蝶先生は)
キャンプファイヤーをぼんやり見つめながら
アホほど忙しかった学校祭を振り返っている女の隣に
いきなり隣いいかしら?なんて可愛らしい声と共に現れたもんだから
回らない頭でアッアッダイジョウブッス、って小汚い声で出迎えてしまったことは許して欲しい。

「それにしてもさっきから校舎で爆発音がすごいのだけど、なにか学校祭実行委員会で催しでもやっているのかしら?」

「そんな話聞いてないですけどね……」

胡蝶先生の言う通り、背後にそびえ立つ校舎から恐ろしい程の爆発音と崩壊音がさっきから鳴り止まない。
鳴り止まなさすぎて生徒諸君らはもはや意に介さずのろのろとフォークダンスを踊っている。
犯人は美術の宇髄先生なんだろうけど、一体何をしているかは不明だ。
ファンキーすぎるだろ。
これから校舎を解体するのかな?業者じゃあるまいし。

そこら辺に立てられたポールに括り付けられているスピーカーから「次は中学2年の里芋組です」と、フォークダンスの進行状況が流れてくる。

あたしは3年なので、まだずっと先だ。

ぞろぞろと気だるそうに集まる生徒の姿を見て、あたしは無意識に大きなため息をついていた。

「あらあらどうしたの?ため息」

「そりゃため息もつきますよ」

なんでこのクソ疲れてる時にクソだるいフォークダンスなんか踊らなきゃならんのや。
心の中に住んでいる謎の関西人がツッコミを入れてくる。
本当にその通りで、3日間売り子として休むことなく店に立っていた疲れが今ドっとあたしを襲っている。
今すぐ光の速さで帰って横になって寝たいのだよあたしは。

「学校祭、楽しくなかった?」

急にあたしの視界に入ってきた胡蝶先生に、肩がビクッと跳ねた。

「そっ!そりゃあ……まあ、楽しかった、ですけど」

悲しそうにあたしを見つめていた瞳が、あたしの言葉を吸収してぱちりと見開かれる。

「そう、良かった」

ニコニコと喜ぶ胡蝶先生がキャンプファイヤーの火に照らされて
キラリと魅力的に見えた。
フォークダンスが終わるまでに意中の相手に告白したら叶うなんてジンクスが存在するんだったら
今この瞬間がベストなんだろうな、なんてバカみたいなことを考える。

***

思い返せば3日間マジで忙しかった。
ただの、よくある、ワンパターンな
軽食や飲み物を出す喫茶店だったのに
何故か毎日ほぼ満員で
隙間時間に慌てて買い出しに行ってたくらいだった。
その結果学校祭売上コンテストでうちのクラスは見事1位を取ることが出来たのだけど。

なので、学校祭の催し物や模擬店を巡ることなんて出来ず
演劇やダンスなどのステージ発表すらも観に行けず
なんなら毎年人気の先生達によるパフォーマンスすら観に行くことも叶わなかった。
(今年はあの冨岡先生がV系バンドの曲を熱唱したらしい……)(マジか。聴きたかった)(っていうかV系バンド聴くんだ)

だから、学校祭が楽しかった
なんて思う体験も経験も出来なかった。
最後の学校祭なのに。

あーあ。
真っ暗な空を仰いで、校舎からやってくる爆風に髪を押さえた。

と、その時。
校内放送の前にかかるチャイムが、暗闇に響き渡る。
ざわつく人影。

「あーあー、声聞こえてる?」

スピーカーから、男性の声。
あら、宇髄先生だわ、と
隣の胡蝶先生が呟いた。

「おーい実弥ちゃん、急いで胡蝶先生のこと見つけろよな!早く見つけないと、学校が派手に吹っ飛ぶぞ!」

「えっ、私?」

宇髄先生は心無しか飛び跳ねるような声で放送を続ける。

「さてさて、胡蝶先生は学校の何処にいるかなーっと。フォークダンスが終わるまでがタイムリミットだ!」

校内放送の終わりを告げるチャイム。
と同時に再び爆発音。

「……名前、呼ばれてましたけど?」

「……なんでかしら?」

顔を見合せて、疑問符を浮かべる。
ちなみに実弥ちゃん、と言うのは数学の先生の不死川先生のことだ。
不死川先生の数学は高校の3年間ずっと受けているから、どんな先生かは分かるけど。

「胡蝶先生、不死川先生になにかしたんですか?」

「うーん、覚えはないわね」

胡蝶先生は首を傾げ、柔らかそうな唇に人差し指を当てながら何か考えている。

「でも不死川先生のところに行かないと……理由は知りませんけど、このままだと学校がなくなるらしいですよ」

不死川先生が胡蝶先生を探していること
宇髄先生が学校を壊そうとしていること
繋がりは全く分からないけど、このままにしておく訳にはいかない……のかな?
宇髄先生なら芸術だ!とか言いながら本気で学校壊しそうだし。
胡蝶先生はうーんうーんと唸りながら、あたしにこう言った。

「でも、生徒に紛れて隠れてろって」

「えっ?」

誰が言ったんですか、そう言いかけたあたしの言葉を
ひときわ強い風が遮った。

「胡蝶先生!」

背後から聞き覚えのある声がして、胡蝶先生と一緒に振り向く。
そこには息を切らした不死川先生が立っていて、どこからかスポットライトの光がギラリと当たっていた。
眩しくて、思わず手のひらで視界を守る。

「不死川先生」

どこからか、おおっ、と声が沸いた。
なになに、なんだこの状況。
ふたりはひかりの中で目を逸らさずに、ずっと見つめている。
不死川先生は大きく息を吸い、ガシガシと乱暴に頭をかいた。

「……ってか、なんでこんなところにいんだよ」

「えっ?」

キャー!とか、
なになに!?とか、
あちこちから声があふれ出す。
あたしはというと、スポットライトに照らされながら
このふたりが作り出す空気が告白前のそれで
全く関係ないのに一人でドキドキしていた。

「探しただろーが。これから校舎の後片付けがあんだろォ」

「あっ、そうですね。ごめんなさい」

でも、と揺れた胡蝶先生の掌を
不死川先生はさっと掴み握りしめる。
行くぞ、と踵を返した不死川先生の耳は赤くなっていて
胡蝶先生の頬も同じくらい赤くなっていたのが、ハッキリ見えた。
ふたりの姿がスポットライトからなくなった瞬間に、わっとグラウンドのテンションが上がる。
キース!キース!重なった冷やかしの声を
うるせえテメーらぶっ飛ばすぞ!
いつもより上ずった不死川先生の怒号がかき消した。
花火のようにやかましく鳴っていた爆発音は、いつの間にか聞こえなくなっていた。

「……すごすぎ」

あたしはと言うと、震える唇を両手で隠しながら
目の前で展開された恋愛ドラマのワンシーンを焼き付けるように、その場に立ち尽くしていた。
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