『プラントに敵襲!援護を要請します!』

採掘島にて、警ら中に緊急回線が入ってきた。
目的地はさほど遠くなく、私達の小隊が最も近いようだ。

「了解!五分以内に援護に向かいますので、それまで持ちこたえてください!」

そう言って通信を切ると、私は支援兵に向かって指令を出していく。

「索敵をお願い」
『了解!索敵を開始します!』

彼女はそう言って偵察機を飛ばしてくれる。
同時に進軍を開始して、私は部隊に指示を出していった。

「狙撃兵はポイントを確保次第援護開始。
重装備兵はポイントに到着次第、ECMとロケット砲で牽制。到着前にポイント手前に榴弾砲を忘れずに。
支援兵は修理と援護を。常に警戒を怠らないで。
強襲兵は私に続け!手榴弾を投げ込んだ後、一気に敵機を殲滅する!」
『了解!』

私の号令と共に部隊は散会していく。
それと同時に支援兵から通信が送られてきた。

『敵ブラストは強襲型四機、重装備型五機、支援型一機のようです。
味方は重装備型二機、支援型一機。なんとか持ちこたえてますが、このままではじり貧です』

おそらく敵戦力から察するに力でごり押しといったところだろう。
私はどういった戦略で立ち向かえばいいか考えを巡らせる。
私は重装備兵への通信回線を開いて指示を出していった。

「聞こえる?ポイントJ−35に二発、ポイントK−41に一発榴弾砲を落として」
『了解です。いきますよ!』

あそこなら隠れるのにはちょうどいいところだ。彼もそのことは分かっている様ですぐに榴弾砲を撃ち放ってくれる。

『お姉ちゃん、一機撃破ー。続けて援護するね』
「すごいわね。この調子でお願いするわ」

狙撃兵からの連絡に私は手榴弾を片手に戦場に飛び込んでいく。
流れは掴んだ。あとはうまくいくことを祈るだけだ。

戦場に到着すると、先制攻撃が効いていたのか既に大破している機体が数機転がっていた。
コクピットが見当たらない限り、脱出には成功したのだろう。
それでも一応、味方機でないことを確認して私は次の指示を出していく。

「続けて攻撃!一気に攻め込むわよ!」
『了解!』

まずは年季の入った強襲兵が手榴弾を投げ込み、続けて時間差で私が手榴弾を投げ込んでいく。
さらに後ろからロケット砲が撃ち込まれ、敵機がバラけていったところを追撃していく。

『すまない、助かった。こちらも援護する!』

生き残っていた味方機と合流して、私達は戦線を押し戻そうと奮起していった。
こうなればこっちのものだ。数では互角。心理的、戦略的にも分があるこちらが有利と見ていいだろう。
ただ、油断だけはしないように連携を失わないようにしていく。

『気をつけてください!建物の影に一機潜んでいます!』

そう思った矢先に支援兵から通信が入ってくる。
彼女から送られたデータから、敵機の位置をはっきりと確認できた。
私は剣を構え、敵機が待ち伏せているところを一閃する。
相手は不意打ちを受けるとは思っていなかったらしく、あっさりと腕部を切り裂いていた。



「とりあえず終わったみたいね」
『そのようだな』

辺りを巡回しながら戦闘が終わったことを確認して、私達はようやく一息吐く。
後の戦闘はそれほど難しくはなかった。数が少なくなっていったところを複数対一の形に持っていって各個撃破。
撤退していった機体は深追いはせずに味方機のサポートに徹していく。
どうにか猛攻を耐え凌ぎ、プラントの守りを固めていくことにした。

『損傷軽微五機、中破二機、大破なし。被害報告を終わります』

支援兵からの被害報告を聞き終えて、私は安堵のため息を吐いていた。

「大破なし…。よかったわ」
『まったくだ。どこぞの大馬鹿者がまた無力化だけにしろととんでもない注文つけないか冷や冷やしたぞ』

彼は茶化したように言ってきたが、もっともな話だ。戦争である以上、犠牲はどうしても出てしまう。
所詮私の言っていることは綺麗事にすぎない。それでも彼らは私に付いてきてくれる。

「ごめんなさい。そしてありがとうございます」
『謝ることはない。礼はありがたく受け取らせてもらうがな』

その声はとても誇らしげで私はなんとか沈んだ気持ちが落ち着くのを自覚できた。
そんな中、一本の緊急通信が入ってくる。

『味方が敵コア攻撃に成功!私達の勝利です!』

どうやら私達の勝利で終わったようだ。私達の部隊内でも歓喜の声が沸き上がり、合流した部隊と称え合っている。
それまで張りつめていた緊張感もようやっと弛んで、私はコクピットのシートに身体を沈め込む。
大きく息を吐き、とりあえず休もうとしたら秘匿回線のコールが鳴り響く。
もちろん、送り主は彼女からだ。

『大丈夫だった!?』

先ほどの落ち着いた口調とはうってかわって、ものすごく慌てた口調にようやく終わったことを自覚できた。

「大丈夫です。そんなに心配されなくても…」
『いいえ。貴女はこうでも言わないと無茶するから心配です!』

まるで面倒見のよい姉みたいに説教してくるものだから、なんとなく面白くなくて口を尖らせてしまった。

「そんな、子供扱いしないでください」
『あら、そんな口を聞いていいのかしら』

あくまで彼女は折れるつもりはないようだ。おまけに今日は甘えさせてくれないらしい。

「ずるいですよ。横暴です」
『あら、私が甘えるのに何も問題はないわよ?』

こう言われて私が敵うはずもなく、私は自分で顔をしかめているのか想像できてしまう。
しかし、自分の表情とは反対に心が穏やかになっていくのが不思議だ。

「わかりました。チヒロさんに心配かけないように心がけますから許してください」
『もう少し貴女は駄々をこねた方がいいわよ?
でも、そこが貴女の可愛いとこだけど』
「あの、その、…はい、ありがとうございます」
『ホントに可愛いわね。それで今日は甘えるのと甘えられるのどっちがいい?』

やっぱり彼女には適わない。終始押されっぱなしで、彼女が近くにいるわけでもないのに心臓が早鐘を打ち続けている。
とても心地よい心音に、私の表情は紅潮していた。

「その、たまには甘えられたいです」
『いいわよ。思い切り甘えるから覚悟してなさい』

そう言って彼女は通信を切ってくる。私は再びコクピットに身体を沈めて大きく息を吐いた。
彼女とのやり取りはすごく楽しくて、気が休まっていく。
作戦から戻るまで後少しだ。彼女との時間をどう過ごそうと考えながら、私は最後まで気を抜かないように戦場を駆けていた。









なんとなくバトルシーンみたいのが書きたかったんですが、案の定脱線してしまったという


秘匿回線でなにやってんのというツッコミはもちろんなしですよ?

ちなみに
リーダー→まじめ
オペレーター→チヒロ
強襲→ベテラン
重装備→ナルシスト
狙撃→少女
支援→インテリ

ですよ