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小ネタ(ボーカロイド・おひるねぎとろ)

とある冬の日の晴れた昼下がりのこと、初音ミクは冷えた身体を温めようとこたつのある居間にやってきていた。

「うー、なんか寒いし」

ほんの前まで暖かかったのが嘘のように空気は冷え込んでおり、がたがたと震え出す身体が温もりを求めている。
とにかく、助かりたい一心でミクは勢いのままこたつに飛び込んでいた。

「あー、いーきーかーえーるー」

すでにスイッチが入っていたのかこたつの中は温まっており、妙に間延びした声でミクは幸せいっぱいに頬を緩めてしまう。
だらしがないと言われてしまえばそれまでのことであるが、この寒空の下で動き回るというのも酷な話だ。
こたつの中でだらけた青春を謳歌しようと、ミクはいっぱいに足を伸ばしていた。

「…ん?」

しかし、コツンと何かがぶつかり、ミクは怪訝そうに眉をひそめる。どうやら先客がいたらしい。頭の中がこたつで埋めつくされていたせいか、全く気付いていなかった。
それならすでにこたつが温まっていたことも納得のことで、ミクはおそらくこたつの向こう側にいる人物の顔を拝もうと這いつくばっていく。

「誰がいるかな、誰がいるかな?」

自分でもよく分からない歌を口ずさんみながらこたつの向こう側に回り込めば、そこには静かな寝息を立てている人物がひとり。

「…ルカだったんだ」

巡音ルカは胸を上下に動かしており、心地よい眠りに身を委ねているようだ。先ほど足をぶつけたにもかかわらず起きる気配が見られない。
とりあえずルカの寝顔を堪能しようと、ミクはルカの真上に身体を置いていた。

「…ルカ、ルーカー。寝てる?」

問いかけてみたもののやはり起きる気配は見られず、相変わらず規則的な寝息を立てている。整った顔立ちが無反応であることを際立たせているようだ。
とはいえ、その弾むような唇はとても魅力的で引き込まれそうになってしまう。

「…やっぱ寒い」

しかし、体温を一瞬で奪っていく寒さには勝てることも出来ず、ルカの隣に潜り込んでいた。
ルカの豊満な肉付きの良い身体は保温性も強く、小柄なミクの身体をすぐに温めていく。無論、過剰に身体が火照ってきているのはそれだけが理由ではないが。

「…そんなに無防備だとキスしちゃうぞ」

ルカの耳に届くか届かないかという小声で話しかけている辺り、もう少し勇気を出せればと後悔の念が押し寄せる。
仕方ないので身体を寄せてルカの顔を覗き込む。このじっと見つめている時間ばかりがルカを独り占めしている気分となってミクの頬を弛ませていた。
ほんの数秒か数分か、二人でいられることに満足して、ミクはうっすら瞳を閉じていく。程無くして、うつらうつらと眠気が襲ってきて、ミクの意識は徐々に薄れてきていた。



それからルカが目を覚ましたのは、数える程度の時間が過ぎた後のことである。突如現れた違和感に身体を起こしてみれば、隣でミクが気持ちよさそうに寝息を立てていた。

「ミク…?」

いつものように甘えられているんだろうかと思いつつミクを見やる。その寝顔が何か落ち着きと安らぎを与えるようだ。
そんなことを考えながらルカはミクを起こさぬようにミクの髪に手を伸ばしていく。
二つに束ねられている片方をさらさらと流していき、もう一度拾い上げてはまたさらさらと流していた。
どこか楽しげに微笑んでおり、ルカはミクの額をそっと撫でている。

「まったく…、可愛い寝顔を私以外の誰かに見せるつもり?」

問いかけようにも当然のように返事はなく、ミクは小さな寝言を立てているばかりだ。
それが可笑しくて、ルカは何度も何度もミクの頭に手を伸ばす。途端にふにゃりと顔を崩してしまうものだから、ルカは肩を震わせて静かに笑い出していた。
胸に温かいものが込み上げてきて、ルカは自然と頬を緩ませる。この可愛らしい寝顔を一秒でも長く見つめていたいと、ルカは宝物を扱うようにミクの髪を溶かしていた。

「…ん」

しかし、それも長くは続かずミクはゆっくりと目を開いていく。少し残念ではあるけれど、気付かれないようにそっと戻して笑顔で迎い入れていた。
はじめは焦点が合っていなかったようで、うすらぼんやりと目をしぱしぱと瞬かせている。しかし、それもつかの間のことで目の色に光が灯ると一気に起き上がってきた。

「ル、ル、ルカ?」
「ルが多いわよ。少しは落ち着いたら?」

そうは言われても、起きたら間近にルカの笑顔があったら慌ててしまうのも無理はない。
口をぱくぱくとさせながら、内心穏やかでもなく、ミクは顔から湯気を吹かせていた。

「だって起きたらルカの顔が!」
「あら、先に隣に潜り込んどきながらそういうことを言うの」
「…ルカは意地悪だ」

急に不機嫌になってしまったようで、ミクはふてくされて頬を膨らませている。ころころと変わっていくミクの表情が可笑しくて、つい声に出してしまっていた。

「笑うことないじゃん…」
「…ごめんね?」

ますます機嫌を損ねてしまったミクのご機嫌直しにと、ルカは自身の唇をそっとミクの額に当てていく。
分かりやすいくらいにカアッと頬を紅潮させて、ミクはルカの顔を上目遣いで見上げる。
しかしそれも長くは続かず、すぐに顔を背けてしまっていた。やはり簡単には機嫌は直してくれないようだ。

「そんなんじゃ騙されないんだから。どうせなら唇にしてほしかったよね」

とはいっても口調はふてくされてはいたが、にへらと表情を崩しているあたり満更でもなかったらしい。
ルカは少し困ったように眉を潜めて一息吐いていた。そして、何か考え事をしたようなポーズを取ると改めて口を開いていく。

「そうね。寝ている隙に唇を奪えないようじゃ、まだまだ早いわね」
「…!お、起きてたの!?」

ルカの声を聞いた瞬間、表情を爆発させたように真っ赤にして、ミクはあたふたと身悶えさせながら、動きが怪しくなっていた。
もちろんルカの予想ではあったのだが、見事に図星だったらしく、俯いたまま完全に黙り込んでいる。
しばらくは赤ら顔でふるふると黙っていたが、やがてキッときつい眼差しで睨み付けてきた。

「……………るいんだから」
「…え?」

うまく聞き取れず、ルカは思わず聞き返してしまう。我ながら間抜けな顔をしているに違いないと胸の内で苦笑いを浮かべていた。

「…ルカが可愛いのが悪いんだから!」

思わぬ反撃にルカは先ほどの崩れた表情のまま固まってしまっている。ミクの言葉が次第に反芻していき、少しずつ表情に赤みを帯びてきていた。
なんとなく空気がぎこちないものとなり、お互いを意識して視線を反らせてしまう。とても近い距離にいるはずなのに、その距離が微妙に感じられてなんだかもどかしい。
そんな中、ルカの小指にミクの指が触れる。ほんのわずかな感触だったけれど、ミクを少しでも感じていたくてそっとミクの手に重ね合わせていた。
そうすると、ミクも気付いたのか手のひら同士を合わせて指を絡ませてくる。
二人の外れていた視線が再び重なりあう。ミクは機嫌よくにへらと活気溢れる笑顔を浮かべていた。

「何が可笑しいのかしら?」
「そっちこそ。ルカがそんな笑顔見せるの久しぶりだよ」

二人とも可笑しくて仕方ないようで、声を抑えることが出来ないでいる。
ただただ笑い声を上げて、二人はお互いの手を握り締めていた。

「ねえルカ。みかん食べたい。食べさせて」

そして、いつものようにミクは甘えてくる。みかんを取って丁寧に皮を剥いて差し出してきた。
さすがにこういうことには慣れているようで、ルカはミクの小さなわがままに付き合っていく。さらに小分けした一粒のみかんをミクの口元に運んでくる。

「ん、おいし」

ルカの指に食いつかんとする勢いでみかんを頬張っている姿が微笑ましくて、ルカは微かな笑みをこぼしていた。
もう一口と口を開けるミクにみかんを一口放り込む。
こうして幸せに満ちたミクの笑顔を眺めるのはルカにとって至福の時だ。

「それじゃ今度はわたしの番だね」

ルカにまじまじと見つめられることに照れたのか、ルカの手からみかんを取って「あーん」と告げてくる。
ミクの指がルカの唇に触れるか触れないか微妙な距離を保っているのはわざとであろうか。
しかし、そんなやり取りも二人にとって大事な時間である。
ルカはミクの指先にキスをするようにみかんを啄んで、それからミクの手を取ると、その指先をミクの唇に押し付けていた。

「そんなことじゃ、いつまで経っても私の唇なんて奪えないわよ?」
「…むう」
「ひょっとしたら、私からミクにキスしてるかもしれないわね」
「やだ。わたしの方からキスするんだから」

喧嘩するほど仲がいいというのだろうか、睨み合ったまま二人はお互いに視線を外さない。
しばらくは続くと思われていたが、それも耐えられなくなったのかどちらともなく吹き出して終わりを告げる。

「分かったわ。けど、あんまり待てないわよ?」

もしかしたらルカはキスしてくれるのを楽しみにしているのだろうか。そう考えるとミクの胸の内は熱くなる。

「うん、努力する」

二人はからからと朗らかな笑顔で、次のみかんに手を伸ばしていた。
ミクの美味しそうにしている姿をじっくりと堪能して、ルカは慈愛の笑みを浮かべている。
ゼロにはまだ程遠いけれど、確実に縮まっていく距離に充実感を覚えて、二人はそっと寄り添っていた。









ついったさんで名前に@おひるね百合は好きですか?と付けているのでなんか書いてみようと思ってたらこんなのが出来てました

ほのぼのを目指していたのになんとなく違うような気がします。ほのぼのなんてあったの?というツッコミはなしで
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