「せっんせー、またね〜♪」
「ああ、またな」
大学の講義も終わり、私は自分の研究室へ戻っていく。
研究室の扉を開けると朗らかな声が出迎えてくれた。
「アイちゃん、おかえりなさい」
「…お願いだから、アイちゃんだけはやめて」
なんとなく肩の力が抜けて、その場でうなだれてしまう。
私はアインス・シュタインドルフ。一応、ドイツ生まれだが典型的な日本好きなので日常的な日本語は話せる。
これでも、機械工学とドイツ語の講義をしていて、それなりに講義を受けに来てくれる生徒もいる。
「でも、アイちゃんはアイちゃんだし、可愛いんだからいいじゃないですか」
こんなことを言ってくるのは葉月玲音奈(レオナ)。
留学生時代にホームステイ先でけっこう世話になっていて、今では助手をしてくれている。
日本好きになったのもこの娘のおかげだ。
「一応、私の方が年上で上司なんだ。礼節はわきまえないといけないだろう…」
「アイちゃんは変なところで日本人らしいよね」
「…ほっといてくれ」
ぶっきらぼうに言い放ち、私はため息をついて、自分の席につく。
玲音奈は温めてあったコーヒーを入れてくれる。
「アイちゃん、お疲れさまです♪」
最早指摘する気も失せて、私はカップに口をつけた。
「ん、おいし。玲音、ありがと」
濃い目のコーヒーが鼻孔くすぐる。
少し熱かったのでちびちびと飲んでいたら、玲音奈が目を輝かせてこちらを見つめていた。
「やっぱり、アイちゃんは可愛いっ!」
「うおうっ!?」
思いっきり顔を抱き締められて、私は息を詰まらせる。
なんとかコーヒーだけは避難させて、玲音奈から脱出しようともがくがなかなか抜け出せない。
「れ、玲音、くるし…」
抗議の声を上げるも玲音奈はまったくのお構い無しだ。
実際、玲音奈のスタイルがいいものだから、私の力では抜け出すのも一苦労だ。
…断っておくが別に私は小柄というわけじゃない。
「仕方ないです。また今度じっくりとアイちゃんを堪能しますね♪」
なんとか放してくれて、玲音奈は私の額に軽くくちづけしてきた。
「まったく…、玲音こそ覚悟しときなさいよ」
私は不敵な笑みを浮かべて言い放つ。玲音奈は顔を真っ赤にしつつも、「うん」とうなずいてくれた。
一応言っておきますけど、二人の名前のモデルは世界的有名な学者ですから
その花〜の登場人物からじゃありませんから(汗)
ずいぶん前から、アインス・シュタインドルフの話は作っていたんですが、始めは天才学生でかなり周りを振り回す性格でした
某巨大スライムに乗った天才小学生とかぶってしまうので、却下しましたが、今度は相方に振り回されるということに
そして、相方の玲音奈は世話焼きな性格だったのに、いつの間にか押せ押せの積極的な性格に
…難しいね
とりあえず、本館用にいくかどうかは考え中です