「まったく…、油断しましたわ。私が風邪をひくなんて」
ベッドで横になりつつ、シャロンは仕方なしに呟いている。今日は暖かかったからと薄着で眠り、次の日にはかなり冷え込んでしまい、体調を崩してしまった。
学園も休み、今日はゆっくりと眠ったりしている。小さくなったマラリヤが心配で仕方なかったがどうすることも出来ず、悔しさを胸に滲ませながら窓の外を見つめていくことしかできなかった。
…コンコン。
学園が放課後を迎えた頃のことだろうか、ドアをノックする音が聞こえて、シャロンはゆっくりと起き上がる。
「…どうぞ」
ため息混じりに呟いて、シャロンは訪問者を迎い入れた。ゆっくりとドアが開いて、そこからクララが顔を覗かせる。
「気分はどうですか?」
「ありがとうございますクララさん。まだ身体が重い感じですけど、明日は大丈夫だと思いますわ」
「よかったです。マラリヤさん、もう出てきても大丈夫ですよ」
クララの呼び声にマラリヤがひょっこりと顔を出して、そのまま部屋の中へ入ってくる。
とことことまっすぐにシャロンの下に駆け寄って、シャロンの近くに腰かけた。
「ごめんなさいシャロンさん。シャロンさんの様子が確認できるまで小さいままのマラリヤさんを会わせるわけにいきませんでしたから」
「気にしなくて構いませんわ。マラリヤさんに風邪をうつすわけにいきませんもの」
当のマラリヤはシャロンの姿を確認するなり機嫌よくふんわりと微笑みかけてきて、シャロンは思わず顔を紅く染めてしまう。
「それじゃ私は失礼します。二人ともごゆっくり」
そう言って部屋を出ていくクララを見送って、シャロンは再び横になって目を閉じる。
マラリヤが看病しにきてくれたことに安心して、シャロンは心地よく深い眠りへと堕ちていった。
「すっかり眠ってしまいましたわね」
部屋中に立ち込める美味しそうな香りに目を覚ますと、マラリヤがお粥を抱えてシャロンを覗き込んできていた。
「ごめんなさいマラリヤさん。つい、うとうととしてしまいましたわ」
シャロンの言葉にマラリヤはふるふると首を横に振り、小さな手でスプーンを握りお粥を差し出してくる。
どうやら食べさせてくれるらしく、シャロンは思いきり手を振って狼狽えてしまった。
「その、マラリヤさん。別に自分で食べられますわ」
シャロンの言葉にマラリヤはしょんぼりとうなだれてしまう。残念そうにうつむいているマラリヤに困惑してしまい、シャロンの頭の中で理性と誘惑が戦っていた。
やがて誘惑が勝ってしまったのか、シャロンは恥ずかしそうに口を開く。そのままお粥を口の中に含んでゆっくりと飲み込んでいった。
「とても美味しかったですわ」
シャロンの赤らめた表情を見て、マラリヤは満足そうに微笑んでくる。
マラリヤの浮かべたふんわりとした安堵の表情に、シャロンの胸は早鐘を打つように高鳴らせていった。
そして、シャロンは照れ隠しにマラリヤの頭を撫でて微笑みかける。マラリヤは気持ち良さそうに頭を撫でられていたけれど、やがてシャロンを寝かしつけて、そのまま額と額をくっつけてきた。
間近に迫ってきたマラリヤの顔に、もはや心臓が破裂するんじゃないかと思うくらい胸の鼓動が聞こえてくる。
「マ、マラリヤさん!?」
どうやらマラリヤは熱を計っていたらしく、大丈夫そうだということが分かると、マラリヤは微笑んで部屋を後にしようとする。
シャロンは赤らめた顔を振り払うと、持てる限りの力を振り絞って、ありったけの声を出していった。
「マラリヤさん、ちゃんと待っててほしいですわ。明日は必ず元気になってマラリヤさんと一緒に過ごしますから」
シャロンの言葉を受け止めて、マラリヤは表情を輝かせる。熱い視線でシャロンを見つめて、マラリヤはこくんと頷いていた。
そして、元気が出るようにとシャロンの頬に軽く口づけをしていく。
マラリヤが部屋を出ていくのを確認して、シャロンは布団に潜り込む。明日はマラリヤに元気な姿を見せようと誓い、シャロンはそっと瞳を閉じてまどろんでいった。
というわけで中身の似たような話第二弾です
仕事中にもかかわらず、二つとも思いついてしまいましたので書いちゃいました
ぶっちゃけた話、どっちのマラ様に看病されたいと思いながら書いてましたが←