「メイコ、いい加減にしなさい!」
今日もまた私はいろいろと身体中を触ってくるメイコを叱りつける。
「え〜、ほどほどならいいってマスターも言ってたじゃないですか」
「ど こ が ほどほどなのよ!
毎日毎日人の胸や腰や太ももを触ってきて!
だいたい、ミクとルカがメイコの真似をしてくるから余計に手に負えないじゃない!!」
私の剣幕に少しもたじろぎをせず、余裕で受け流しながらメイコはなおも私を触り続けることを止めない。
「だって、わたしが触るのを止めたら、わたしもマスターも精神衛生上よくないじゃありませんか」
「私は今、精神衛生上よくないんだけど!?」
あからさまに頭に血が昇っていくのを自覚しながら、メイコを睨みつけてもどこ吹く風で少しも動揺する気配も見られない。
それどころかメイコは私の手を掴むと自分の胸に引き伸ばしてきた。
「だったらマスターも触ってきたらいいですよ。
お互い我慢するのはよくないです」
「論点が違う!それにそんなこと出来るわけないでしょ!」
「どうしてですか?わたしはマスターに触ってもらえるとすごく嬉しいですよ?」
まじまじと見つめて問いかけてくるメイコに、私の方がたじろいで答えに詰まってしまう。
「どうしてって…」
別にメイコにあれこれされるのはイヤというわけじゃない。
ただ、もう少し自重してほしいだけでお互いに強く結びついているのに今更な話だ。
とはいえ、自分から思い切りいくのには相変わらず抵抗感がある。
「その…、なんていうか、恥ずかしいじゃない」
自分でも頬を赤らめているのを自覚しながら、私はメイコの目を見つめて言い放つ。
そんな私の表情を見てかにんまりと機嫌良く唇を歪めると、メイコは力強く抱きついてきた。
「だったら仕方ないですね」
そう言うなり、メイコは私の身体の隅から隅まで撫で回すように触ってくる。
「マスターから触ってくれるまで、ずっとこうしないといけなくなりました」
「なっ!?何言ってんのよ!」
突然のメイコの宣言に驚いて、私は反射的にメイコから離れようとする。
しかし、メイコはしっかりと私を抱き締めていて、離れることを許してくれない。
今まで抱き締められることは数あったけれど、メイコがこんなことを言ってきたのは初めてだ。
メイコと触れ合っている肌の柔らかさが胸の鼓動を加速させて、それが伝わってしまいそうな気がして顔が熱くなってしまいそうだ。
「と、とにかく、わかったから。お互い落ち着くために離れましょう。ね?」
「イヤです。マスターから触ってくれたら考えます」
どうやら私から行動を起こすまで離れる気はないらしい。
「どうしてもダメ?」
「ダメです」
頑なな態度であくまで真っ直ぐに見つめてくるものだから、私はメイコに吸い込まれそうになってしまう。
そのままメイコをソファーに横たわらせて上から覆い被さるように見つめ合っていた。
長い時間お互いに見つめ合っていると、メイコが私の手を取って自分の胸へと導いていく。
「マスター、マスターのことを想うだけでこんなになってしまいます」
メイコから伝わる心臓の鼓動はとても速く、私の心臓に届いてしまいそうなくらい大きい。
自分も同じように心臓がばくばくと鳴り響いていて、メイコから目を離せない状況だ。
いつの間にか私とメイコの顔が刻一刻と近づいており、お互いに心音がますます加速していく。
唇と唇が触れてしまいそうなくらい近づいた時、部屋の入り口から大きな物音が聞こえてきた。
「あ、あの、ごめんなさい!お邪魔するつもりはなかったんです!」
慌てて振り返るとミクとルカが固まったようにこちらを凝視している。
なんとも言えない気まずい雰囲気に私は顔を上げて、なんとか言い訳しようと頭を回らせる。
「ち、違うのよ!これは、ほら!メイコの目にゴミが付いてたから取ってあげようとしただけでなんでもないのよ!ね?」
話を合わせてもらおうとメイコに目で合図していくが、さっきよりも不敵な笑みを浮かべて、メイコは私の頭を自分の胸に埋めるように抱き締めてきた。
「マスター、照れなくてもいいですよ。あんなに激しく押し倒しておいて今更ですよ?」
…………………。
メイコの言葉に頭が真っ白になって、慌てて起き上がるとすでに二人は軽くお辞儀をして部屋から去ろうとしていた。
「…お邪魔してすみませんでした。たまにはたっぷりと二人の時間を過ごすのもいいですね。…それでは、ごゆっくり」
明らかに私達を温かく見守るように微笑んで二人は部屋を後にする。
「いや、だから違うってば!お願い二人とも戻ってきて!」
「行っちゃいましたねー」
からからと笑うメイコに文句を言おうと思い切り睨み付けて、私はメイコの襟首を掴みあげていた。
「どうするのよ!明日から二人にどんな顔して接すればいいのよ」
「別にいつものことですし、堂々とすればいいじゃないですか」
「でも、あそこまではっきり見られたのは初めてじゃない!?
ああ、明日ミクとルカにあんなことやこんなこと聞かれたらどうしよう…」
メイコから手を放して頭を抱える私に呆れたようなため息を吐いて、メイコはこつんと頭を小突いてきた。
「わたしの妹達を見くびらないでください。きっと笑顔で祝福してくれますよ」
メイコの言葉にハッとして、今まで自分がどれだけ自分を見失っていたかを思い知らされてしまう。
「そうね。ごめんねメイコ。あの娘達を信じてあげないとダメね」
「分かってくれたらいいんです。それでマスター、続きはまだですか?」
上目遣いで見つめてくるメイコが愛しく思えて唇を歪めると、私はさっきと同じようにゆっくりとメイコを横たわらせていく。
今日は長い夜になりそうだとメイコを力強く抱き締めていた。
別にこの後えろいことにはなっていませんよ?ただひたすらいちゃついていただけですよ?
…説得力は全くありませんけど
ただ、えろく思わせ振りな表現が好きなだけです。ひっかかる人がいるとは思えませんが
…いませんよね?