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小ネタ(ボーダーブレイク)

『プラントに敵襲!援護を要請します!』

採掘島にて、警ら中に緊急回線が入ってきた。
目的地はさほど遠くなく、私達の小隊が最も近いようだ。

「了解!五分以内に援護に向かいますので、それまで持ちこたえてください!」

そう言って通信を切ると、私は支援兵に向かって指令を出していく。

「索敵をお願い」
『了解!索敵を開始します!』

彼女はそう言って偵察機を飛ばしてくれる。
同時に進軍を開始して、私は部隊に指示を出していった。

「狙撃兵はポイントを確保次第援護開始。
重装備兵はポイントに到着次第、ECMとロケット砲で牽制。到着前にポイント手前に榴弾砲を忘れずに。
支援兵は修理と援護を。常に警戒を怠らないで。
強襲兵は私に続け!手榴弾を投げ込んだ後、一気に敵機を殲滅する!」
『了解!』

私の号令と共に部隊は散会していく。
それと同時に支援兵から通信が送られてきた。

『敵ブラストは強襲型四機、重装備型五機、支援型一機のようです。
味方は重装備型二機、支援型一機。なんとか持ちこたえてますが、このままではじり貧です』

おそらく敵戦力から察するに力でごり押しといったところだろう。
私はどういった戦略で立ち向かえばいいか考えを巡らせる。
私は重装備兵への通信回線を開いて指示を出していった。

「聞こえる?ポイントJ−35に二発、ポイントK−41に一発榴弾砲を落として」
『了解です。いきますよ!』

あそこなら隠れるのにはちょうどいいところだ。彼もそのことは分かっている様ですぐに榴弾砲を撃ち放ってくれる。

『お姉ちゃん、一機撃破ー。続けて援護するね』
「すごいわね。この調子でお願いするわ」

狙撃兵からの連絡に私は手榴弾を片手に戦場に飛び込んでいく。
流れは掴んだ。あとはうまくいくことを祈るだけだ。

戦場に到着すると、先制攻撃が効いていたのか既に大破している機体が数機転がっていた。
コクピットが見当たらない限り、脱出には成功したのだろう。
それでも一応、味方機でないことを確認して私は次の指示を出していく。

「続けて攻撃!一気に攻め込むわよ!」
『了解!』

まずは年季の入った強襲兵が手榴弾を投げ込み、続けて時間差で私が手榴弾を投げ込んでいく。
さらに後ろからロケット砲が撃ち込まれ、敵機がバラけていったところを追撃していく。

『すまない、助かった。こちらも援護する!』

生き残っていた味方機と合流して、私達は戦線を押し戻そうと奮起していった。
こうなればこっちのものだ。数では互角。心理的、戦略的にも分があるこちらが有利と見ていいだろう。
ただ、油断だけはしないように連携を失わないようにしていく。

『気をつけてください!建物の影に一機潜んでいます!』

そう思った矢先に支援兵から通信が入ってくる。
彼女から送られたデータから、敵機の位置をはっきりと確認できた。
私は剣を構え、敵機が待ち伏せているところを一閃する。
相手は不意打ちを受けるとは思っていなかったらしく、あっさりと腕部を切り裂いていた。



「とりあえず終わったみたいね」
『そのようだな』

辺りを巡回しながら戦闘が終わったことを確認して、私達はようやく一息吐く。
後の戦闘はそれほど難しくはなかった。数が少なくなっていったところを複数対一の形に持っていって各個撃破。
撤退していった機体は深追いはせずに味方機のサポートに徹していく。
どうにか猛攻を耐え凌ぎ、プラントの守りを固めていくことにした。

『損傷軽微五機、中破二機、大破なし。被害報告を終わります』

支援兵からの被害報告を聞き終えて、私は安堵のため息を吐いていた。

「大破なし…。よかったわ」
『まったくだ。どこぞの大馬鹿者がまた無力化だけにしろととんでもない注文つけないか冷や冷やしたぞ』

彼は茶化したように言ってきたが、もっともな話だ。戦争である以上、犠牲はどうしても出てしまう。
所詮私の言っていることは綺麗事にすぎない。それでも彼らは私に付いてきてくれる。

「ごめんなさい。そしてありがとうございます」
『謝ることはない。礼はありがたく受け取らせてもらうがな』

その声はとても誇らしげで私はなんとか沈んだ気持ちが落ち着くのを自覚できた。
そんな中、一本の緊急通信が入ってくる。

『味方が敵コア攻撃に成功!私達の勝利です!』

どうやら私達の勝利で終わったようだ。私達の部隊内でも歓喜の声が沸き上がり、合流した部隊と称え合っている。
それまで張りつめていた緊張感もようやっと弛んで、私はコクピットのシートに身体を沈め込む。
大きく息を吐き、とりあえず休もうとしたら秘匿回線のコールが鳴り響く。
もちろん、送り主は彼女からだ。

『大丈夫だった!?』

先ほどの落ち着いた口調とはうってかわって、ものすごく慌てた口調にようやく終わったことを自覚できた。

「大丈夫です。そんなに心配されなくても…」
『いいえ。貴女はこうでも言わないと無茶するから心配です!』

まるで面倒見のよい姉みたいに説教してくるものだから、なんとなく面白くなくて口を尖らせてしまった。

「そんな、子供扱いしないでください」
『あら、そんな口を聞いていいのかしら』

あくまで彼女は折れるつもりはないようだ。おまけに今日は甘えさせてくれないらしい。

「ずるいですよ。横暴です」
『あら、私が甘えるのに何も問題はないわよ?』

こう言われて私が敵うはずもなく、私は自分で顔をしかめているのか想像できてしまう。
しかし、自分の表情とは反対に心が穏やかになっていくのが不思議だ。

「わかりました。チヒロさんに心配かけないように心がけますから許してください」
『もう少し貴女は駄々をこねた方がいいわよ?
でも、そこが貴女の可愛いとこだけど』
「あの、その、…はい、ありがとうございます」
『ホントに可愛いわね。それで今日は甘えるのと甘えられるのどっちがいい?』

やっぱり彼女には適わない。終始押されっぱなしで、彼女が近くにいるわけでもないのに心臓が早鐘を打ち続けている。
とても心地よい心音に、私の表情は紅潮していた。

「その、たまには甘えられたいです」
『いいわよ。思い切り甘えるから覚悟してなさい』

そう言って彼女は通信を切ってくる。私は再びコクピットに身体を沈めて大きく息を吐いた。
彼女とのやり取りはすごく楽しくて、気が休まっていく。
作戦から戻るまで後少しだ。彼女との時間をどう過ごそうと考えながら、私は最後まで気を抜かないように戦場を駆けていた。









なんとなくバトルシーンみたいのが書きたかったんですが、案の定脱線してしまったという


秘匿回線でなにやってんのというツッコミはもちろんなしですよ?

ちなみに
リーダー→まじめ
オペレーター→チヒロ
強襲→ベテラン
重装備→ナルシスト
狙撃→少女
支援→インテリ

ですよ

小ネタ(ボーダーブレイク)

『二時の方向に敵反応あり!』

山岳戦において無事勝利を収め、撤退準備を始めようとした矢先に支援兵からの専用通信で私達の間に緊張が走る。

「敵勢力の規模は分かる?」

とりあえず、通信を専用の周波数に切り替えて、私は彼女に問いかけた。

『はい。重装備兵が三体、強襲兵が二体のようです』

おそらく、モニターの前に映し出されている情報に楽しそうにしている表情が思い浮かぶが、彼女は緊張を保ったまま状況を説明してくれる。
敵基地はすでに壊滅しており、機能は動かないはずなので、逃走中かせめて一矢を報いようと待ち伏せしていたかというところだろう。

「各自、第一級戦闘態勢を維持!敵の出方によっては反撃に移行する!」

次々と撤退していく中、私達の隊は最後尾を守るために戦闘態勢へと移行していく。
念のために他の隊にも援軍を要請して、私達は警戒態勢に入った。

「そのまま逃げていってくれればいいんだけど」
『…そうだな。だが、こちらが迎撃態勢を取っている以上、すんなり撤退してくれるとは思えんが』

年季の入った強襲兵の言う通り、向こうがそのまま撤退することはないだろう。
哀しいかなここは戦場だ。生き延びるのに綺麗事は一切通用しない。
死に物狂いで反撃してくるだろう。

『目の前に高エネルギー反応!』

支援兵の叫び声に私達はすぐに散開して、次の行動へと移っていく。

「重装備兵は溜弾砲で牽制!強襲兵は間合いを取りつつ、敵を無力化!支援兵、狙撃兵はサポートをお願い!」
『了解!!』

私の指示に各自返事をして、一斉に動き出す。そして、目の前で銃弾が飛び交い始めた。

「お願い、力を貸して」

戦場に行く前にオペレーターからお守り代わりと預かったペンダントを握り締めて、私は戦場に飛び込んでいく。皆の無事を祈りながら。





『くっ、殺しなさい』

戦闘は幾分も経たずに終わり、無力化された五機の機体はすでに諦めたのか動く気配は見られない。
私達も被害は少なく、彼らを前に立ちはだかっていた。
声からして私と同じくらいの女性なのだろうか、リーダーと思わしき機体は命乞いもせずに先頭に立っている。

『どうする?』
「…どうもこうもないわ。私達は彼らが撤退してくれればよかっただけ。彼らが無力化した以上、私達のすることは何もない」
『ふざけないでほしいですわ!!』

自分達を逃してくれると聞いて相手側にどよめきが沸き起こる中、さっきのリーダー格の女性は憤りを隠さずに叫んでいた。

『これは戦争ですのよ!?こうして捕まってしまった以上、私達に未来はありませんわ!
殺されるか、捕虜にされて絶望を味わうか、なのに何もせず見逃すとかとんだ甘ちゃんですわね!
大方、綺麗事ばかり言って人を殺したこともないんでしょうけど!』
「…人を殺したことなら何度もある」

次から次へと罵声を浴びせられたが、私の一言で彼女は押し黙ってしまった。

「私は何度も戦場で助からない命を見てきた。当然、私がやったことも含めて。
せめて苦しまないようにと消えゆく命にとどめを刺したこともあるわ。
けど、貴女達はまだ生きている。少なくとも行き急ぐ真似はしないで。これ以上悲しむ人間が増えるのはたくさんよ」

私達が武装を解除し、「行け」と合図すると彼らは戸惑いながらも撤退していく。

『貴女のこと、覚えておきますわ。私に殺されるまで、せいぜい殺されないようにすることですわね』

捨て台詞を残し、部隊を護るように辺りを警戒しながら去っていく彼女を見送って、私は一度ため息を吐いていた。

「…やっぱり私は甘いんですかね?」
『そうだな、甘いな。戦場でそんなことを言う大馬鹿は滅多にいない。
だが、俺は…、いや、俺らはそんな大馬鹿者を気に入っている』
『そうですね。あと敵さんにも気に入られたみたいですね。まるで死ぬなみたいに聞こえました』

言われてみればそうだと軽く笑って、私達もまた戦場を後にする。
帰り際に振り返り、彼女のことを思い出していた。

「また…、会いそうな気がするわね」

誰にも聞こえることなく呟いて、これから起こりそうな何かに身震いを覚える。

『どうしました?ベースがもうすぐ見えてきますけど』

支援兵の一言で我に返り、私はなんでもないと首を振る。
とりあえず、今日は疲れた身体をゆっくりと休めよう。あの人にも無事帰れたことを報告して、いろいろと話をしよう。
今夜は何を話そうかと思いを馳せながら、私はペンダントを握り締めていた。





彼女との出会いが私達の運命を、いや、この戦争を大きく揺るがすことになるのだが、それはまた別のお話。









前にもボーダーブレイクで書いたのですが、今回はなんとなく殺し愛みたいなものを書きたかったんです



ちなみに
強襲兵→まじめ、ベテラン
支援兵→インテリ
敵重装備兵→お嬢
オペ子→黒髪の方

のつもりで書いてますが



おまけで
重装備兵→ナルシスト
狙撃兵→少女

とか考えてます



戦闘シーンとかも書いてみたかったけれど、とてもじゃないけど小ネタじゃ収まる気配はなかったんです

小ネタ(オリジナルで本屋にて その2)

今日も私はいつもの書店に入るとあの人を探して辺りを見回していく。
カウンターを見るとあの人はいなくて少し残念な気分になったが、気分をまぎらわせようと新刊を探すことにした。

(うわ、散らかってるなあ)

小説の新刊を置いてるコーナーに足を運ぶと、荒らされたのか並び方が少しばらばらになっていて、私はいてもたってもいられずに本を直しにかかっていく。
それと同時に私の横に人影が現れて、同じように感じてくれたのか散らばっている本を片付け始める。
ふと隣の人が誰だか気になっておそるおそる見てみると、あの人だったので、思わず手に取った本を落としてしまいそうになってしまった。

「あら、貴女はホンマメグミさん…。だったわよね?」

私の名前を覚えられていることに驚いて、私はしばらくの間まったく動けないでいた。
そして、胸の鼓動が加速していくことに気づいて、思わず俯いてしまう。

「私のこと覚えていたんですか?」

恥ずかしさのあまり逃げ出したくなるのをぐっと堪えて、わずかに残っている勇気を振り絞り、彼女の瞳を見つめながら問いかける。

「まあ、そうね。本の注文であそこまで緊張しているコを見るのは初めてだったかしらね?」

からからと笑いながら答えてくる彼女に赤面しつつも、私は片付けを手伝っていく。
本を手に取ろうとすると、彼女が静止してきてばつの悪そうな表情になっていた。

「貴女は手伝わなくてもいいわよ。気持ちだけありがたく受け取っておくわ。これは私達の仕事ですもの」
「でも、貴女は私服じゃないですか」

彼女はいつも見かける制服姿とは違って、ブラウスにロングスカートと少し大人びた格好をしている。
さすがに仕事中ではないだろうと突っ込んでみたら、彼女は苦笑いを浮かべてしまった。

「そうね。よくみんなからも言われちゃうわね。『チーフも私達の仕事を取らないでください』って」

何かを思い出したかのようにクスッと微笑みながら、彼女はてきぱきと手を動かしていく。

「やっぱり本が好きなのよね。だから貴女みたいに本を愛してくれる人は好きよ」

私は熱い眼差しで本の山を相手していく彼女に吸い込まれるように見入ってしまい、蕩けるような感覚に陥ってしまった。

「どうしたの?顔が赤いわよ?」

どうも私の様子がおかしいらしく、彼女が心配そうに顔を覗き込んでくる。
間近に迫ってきた彼女に驚いて、心臓の鼓動が一瞬大きくなってしまった。

「な、なんでもありません!
それより、オフなのにどうしてここにいるんですか?」

慌てていることをごまかすように彼女に問いかけると、彼女はきょとんとしながらも楽しそうな口調で答えてくれる。

「あら、今の私はお客様よ。ここにいちゃ悪い?」

不思議といたずらっ子のような笑顔になっているのが印象的で、今まで知らなかった表情に胸の奥から熱くなっていくのがなんとなく心地よい。
そして、彼女が手に取った一冊の本を見て、思わず声を上げてしまった。

「それ、霧峰かすみ先生の最新刊ですよね?」
「まあ、そうだけど…。…って、ひょっとして貴女もファンなの?」
「はい!」

彼女の質問に思い切り頷いていると、彼女は興味津々といった様子で私を見つめてくる。
霧峰かすみという人は中高生向けの小説から小さな子供向けの絵本までと幅広い活躍をしていて、今売り出し中の作家だ。

「彼女の本で好きなものは?」

どうやら同じ好きな作家なようで、彼女の瞳は好奇心で満ち溢れていた。

「そうですね、小説なら『美しいホワイトトルネードの作り方』や『12の大魔王とチョコレートの姫君』、絵本なら『弱虫シュラゴンの大冒険』が好きです」

同じ趣味を持っている人を見つけたせいか、いつもよりも饒舌な自分がいて、自分でも驚いている。
普段は無口なのに一方的に話をしているような気がして、思わず口をつぐんでしまった。

「すみません。同じ作家さんが好きだと思って、つい…」

私は彼女が呆れていないか心配になってうなだれてしまう。
しかし、彼女はというと先ほどよりもさらに瞳を輝かせてきていた。

「そんなことないわ。私も同じ作家好きを見つけられて嬉しいもの。
それで『虹色の滝を探して』や『芋掘りシュライム収穫記』はどうかしら?」
「…はい!それも大好きです!
なかでも、主人公が虹色の滝を………」

彼女とのおしゃべりは楽しくて、いつの間にか時間は刻々と過ぎていった。



「ついつい話し込んでしまったわね」

どのくらい話したかは分からなかったけれど、楽しい時間はあっという間に過ぎていき、彼女のアラームの音でようやく我に返る。

「ごめんなさいね。貴女とのおしゃべりは楽しかったけど、今日はここまでみたいね」

私も彼女も名残惜しそうにしていて、どれだけ楽しい時間を過ごしていたのか今更ながらに思い知らされる。

「また会えますか?」

気がつけば思いもよらないことを口にしていて、私はほんのりと頬を染めてしまった。
彼女はまるでその言葉を待ってかのように穏やかに微笑んでくる。

「ええ、また会いましょう」

そう言って手を振ってきて、それが私と彼女の別れる合図となる。
なんとなく振り返ると彼女の姿は見えなくなっていて、また会えることを祈りながら胸の高鳴りを抑えるように手を当てていた。



に書いたものの続きになります



一応、ここで挙げた本のタイトルはネタまみれになってますので、元ネタが分かった方は笑ってやってください

小ネタ(GAでバレンタイン その2)

「おはよーキサラギちゃん。…って思ったより元気ないね」

通学中にノダと会うなりこんなことを言われて、キサラギは慌てて頬を叩いて元気だということを表していく。

「そんなことないですよ。ただ、昨日は緊張してあまり眠れなかっただけです」
「大丈夫?キサラギちゃん、今日は無理しないで休んでたら?」

ノダは心配して声を掛けるが、キサラギは弱々しくも笑みを浮かべて首を横に振る。

「大丈夫ですよ。とりあえず、休み時間とか使って休ませてもらいますから」
「だったらいいけど…。キサラギちゃん、無理しないでね?」

不安そうに見つめてくるノダを安心させるように、キサラギは改めて笑顔で応えると次の授業に備えて机の中に手を伸ばしていった。



結局のところ、キサラギは授業中は特に眠ることもなく、昼休みに少し休んだだけで無事に過ごすことが出来た。
休み時間にはノダと一緒におしゃべりしながら、放課後にそれぞれチョコレートを渡してしまおうとやる気に満ちた表情で語り合っていた。
そして、迎えた帰りのホームルームの時間で気が抜けてしまったのか、キサラギはうとうとと舟を漕いでしまう。
キサラギを照らし出す傾き始めた日差しの暖かさもあってか、襲い来る眠気に意識を奪われてしまうまで大して時間はかからなかった。



「………ラギ殿、キサラギ殿」

うっすらとした意識の中、何処からか聞こえてくるキョージュとおぼしき声に気がついて、キサラギはゆっくりと顔を上げていく。
辺りを見れば、日が暮れつつある教室でキョージュが心配そうに顔を覗き込んでいる。
どうやら二人きりであることに気がついて、慌ててキサラギは起き上がった。

「お、おはようございます!」
「…キサラギ殿、今は夕方だ」

キサラギのあまりの慌てぶりにキョージュは微笑んできて、反対にキサラギは恥ずかしさのあまり身を縮みこませてしまう。

「あの、皆さんはどうしたんですか?」

とりあえず落ち着こうとその場にいないノダ達の聞くと、キョージュはふっと窓の外を見つめていく。

「ナミコ殿達なら、あそこで話をしているが?」

言われて外を見やると、ちょうどノダがいつもの調子でお菓子…もちろん、中身はチョコレートであるが…を分けているところだった。

「本来なら教室で待とうということだったのだが、ノダ殿が渡したいものがあるとナミコ殿達を連れていってしまったのだ」

おそらくノダの気遣いであろうことに感謝しつつ、キサラギはノダに教えてもらったびっくりチョコレートを取り出していく。

「キョージュさん、ちょうどノダちゃんに教えてもらったお菓子があるんです。一緒に食べませんか?」
「うむ。キサラギ殿、戴こう」

そう言ってキサラギからお菓子を受け取ると、早速口の中に運んでいった。
キョージュがチョコレートを口に含んでいる最中、キサラギは緊張しながら見つめていく。
緊張のせいか、やけに心臓の鼓動が速く鳴り響いてしまっているのを自覚して、事の成り行きをじっと見守っていた。

「キサラギ殿、これはチョコレートか?」

やがてチョコレートを食べ終えたのか、キョージュはゆっくりと顔を上げて問いかけてくる。

「は、はい。今日はバレンタインじゃないですか。だから、その、キョージュさんを驚かせようと思って…」

ここで初めてキョージュの表情に変化が訪れる。今まで表情が微動だにしなかっただけに、キサラギはきょとんと目を瞬かせてしまった。

「あの…、キョージュさん?」
「…ああ、すまない。キサラギ殿からチョコレートをもらえるとは思っていなかったから驚いてしまった」

穏やかな笑顔で見つめてくるキョージュに、キサラギの心臓が跳ね上がるように脈打っていき、顔を紅潮させてまったく動けなくなってしまう。

「ありがとう、キサラギ殿。キサラギ殿にチョコレートをもらえてとても嬉しい」
「キョージュさん…」


「なんだこれ!?」

二人がじっと見つめ合おうかとしたところで、学園中に響くのではないかと思うくらい大きな声が聞こえてきた。
慌てて外を見やるとノダのチョコレートに驚いたトモカネが叫んでいたところだった。

「またおまえは手の込んだいたずらを仕込んで…」

ナミコが呆れたようにノダの頭をぐりぐりと弄っていたが、当の本人は嬉しそうで「ごめんごめん」と謝っている。

「ま、ありがとな」

とりわけ、ナミコはまんざらでもなさそうに礼を言ってきて一息吐いていた。

「どうやらあっちも盛り上がっているようだな」
「そうみたいですね」

二人で顔を見合わせて、お互いに笑い合うとキョージュがキサラギの手をそっと握ってくる。

「キョージュさん…?」
「行こうかキサラギ殿、皆も待っている」

そう言うと、キョージュはキサラギと繋いだ手にキュッと力を込めてきた。

「はい」

キサラギが笑顔で応えると、二人は外にいる三人に追い付こうと歩き出す。
お互いに繋いだ手の温もりを感じながら、二人は和やかな雰囲気に包まれている。

「キサラギ殿、今度礼をさせて欲しい」

廊下を歩いていると、キョージュが思い出したかのように話を切り出してきた。
それがホワイトデーなのか、いつのことなのか指し示しているのは分からなかったけれど、キサラギは満面の笑みを浮かべてそっと頷いていく。

「はい、今度楽しみにしてますね」

キョージュの表情からは読み取れないけど、なんとなく嬉しそうなことを感じ取ってキサラギの心音がリズム良く鳴っていくのを自覚してしまう。
このまま、楽しい日々が続くことを期待しながら、二人は下駄箱から靴を取り出していった。









バレンタインもかなり過ぎてしまいましたが、GA二つ目をお届けします



遅れてしまって大変申し訳ないです



とりあえず、びっくりチョコレートという単語が思い浮かんだ時に、真っ先に出てきたのがこの話だったりします



…久しぶりの寝落ちUPでした

小ネタ(GAでバレンタイン)

「キサラギちゃん、キサラギちゃん。お菓子食べない?」

お昼ご飯を食べ終えてまったりしていたところ、突然ノダにお菓子を差し出されて、キサラギはよく分からないままお菓子を受け取ってしまう。

「あ、はい。ノダちゃんありがとうございます。それじゃ遠慮なくいただきますね」

そう言って、キサラギはお菓子を口にしていく。
口の中に入れた瞬間、とろけるように広がっていく甘い香りに驚いてしまった。

「これは…、チョコレートですか?」

見た目はチョコレートとは思えないほど精巧にできていて、キサラギは思わず感心してしまう。

「そうだよ。上手く出来てるでしょ?」
「はい。チョコレートだと思わなくて、びっくりしちゃいました。
それにしても、ノダちゃん。このチョコレートどうするんですか?」

ふと湧き出てきた疑問に、待ってましたと言わんばかりにノダは表情を輝かせてきた。

「トモカネを驚かせてみたいと思ってさ。あと、ナミコさんにも、ね」

ナミコの名前が出てきた途端、徐々にほんのりとではあるがノダの頬の桃色が強くなっていく。
なんとなく自分と同じことに気がついて、キサラギは思ったことを口にしていた。

「それだったら、ナミコさんには普通のチョコレートをあげた方がいいんじゃないですか?」

キサラギの言っていることは至極もっともな意見ではあるが、ノダはそんなことは思っていないようだ。

「キサラギちゃん分かってないなー。好きな人だから、なんていうか照れくさいじゃない」
「…そういうものなんですか?」

今ひとつ要領を得ないまま、キサラギは首を傾げている。
なんとなくノダに感化されて、キョージュにびっくりチョコレートをあげる様子を想像してみるが、まずキョージュが驚いている姿が想像できない。

「キサラギちゃん、今このチョコレートを誰かにあげること考えているでしょ?」
「なっ!?」

まるで見透かされたようにノダに指摘されて、キサラギは思い切り慌てふためいてしまった。

「ど、ど、ど……!?」

キサラギは動揺のあまり呂律が回らず、「どうして」という言葉すら出ない状態にノダはからかうように笑いかけていく。

「うん、なんとなく勘だったんだけど、キサラギちゃんの様子だと渡す人がいるみたいだね」

どうやらキサラギの自爆のようで、恥ずかしそうにどんどん顔を赤らめていってしまう。
そんなキサラギを見て、ノダは悪戯っ子のような笑みを浮かべると、びっくりチョコレートを一つ頬張っていく。

「ねえ、キサラギちゃん。良かったら一緒にこれ作ってみない?
これでみんなを驚かせて楽しもうよ」

なんとなくキサラギの目にノダの背中からコウモリの羽根が生えているのが映っているのが見えた気がした。
しかし、魅惑的な誘いに抗うことも出来ず、キサラギはこくこくと首を縦に振っていく。

「あの、ノダちゃん。よろしくお願いします」

最後は丁寧にお辞儀して、キサラギはノダの誘いに乗ることにした。
ノダは機嫌よくキサラギの手を取って、にこやかに笑い出す。

「それじゃキサラギちゃん。バレンタインに向けて頑張ろうね!」

気合いの入ったノダの表情に多少複雑な気分ではあるもののキサラギは頷いていく。
もしもの時は後でキョージュに謝ろうと思いながら、キサラギはこれから買い物に行くノダに付いていくことした。

「あ、そうだ。キサラギちゃん、キョージュと上手くいったら報告よろしくね」
「………!?」

店に着いた頃、ノダに核心と言えるところを思い切り突かれて、キサラギは頭が湯立ったように真っ赤になり、言葉が出なくなってしまった。

「やっぱり。なんとなくだったけど、当たりみたいだね」

口をぱくぱくと開きながら何もしゃべれないキサラギに照れくさそうに笑いながら、ノダはキサラギを見上げていく。

「キサラギちゃん、お互い頑張ろうね」
「…はい」

今はなんとか返事をすることが精一杯で、キサラギは材料を手に取ってかごに入れていく。
バレンタインまでの残り数日間を一緒に頑張ろうと、二人は改めて気合いを入れていった。









そしてバレンタイン三つ目、GAでキサラギとノダのお話です



個人的にキサラギとキョージュ、ノダとナミコさんなんですがどうなんだろう?
(トモカネは…ごめん)
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