カタカタカタ…
夕食を済ませ、私は出来上がったいくつかの曲に修正を入れて仕上げに取りかかっていた。
一応、締め切りにはまだ時間があるため、時々窓の外を眺めたりしながら作業をしていく。
そろそろ桜が開花するというニュースが流れていたから、ここから眺めることのできる桜並木が桃色に覆われるのもそう遠くはないだろう。
「これでよし…と」
後はもう一度チェックするだけにしておいて、軽く身体を伸ばしてみる。
「あ、マスター。終わったんですか?」
メイコの声に私は振り向き、親指を立ててバッチリだと合図を送る。
その合図を皮切りにして、メイコはいつものように私に抱きついてくる。
「マスター、そしたらしばらくは時間を取れますよね?
だったら、今度一緒に出かけてみませんか?」
メイコの誘いに私は頷くと、メイコはとても嬉しそうに表情を緩ませる。
「それで、どこかアテはあるわけ?」
「いえ、まだどこに行こうか考えていませんでした」
メイコがまだ行き先を決めてないことを知り、私は窓の外を見やる。
真っ暗で何も見えないけれど、おそらく桜並木が花を咲かせようとしている風景が目に浮かんだ。
「それなら今度の日曜、花見とかどうかしら?
ミクやルカも一緒に」
「はい!ミクとルカに話をしておきますね」
…?
いつもならこういう時、二人きりになろうとするのに…。
「めずらしいわね。メイコからミクやルカを誘うなんて、月見の時は二人きりで行こうとしたのに」
「え…と、ほら、なんて言いますかミクとルカの二人でダブルデートという感じでいこうと思いまして」
ミクとルカが一緒ならメイコも無茶をしないだろうし、…大丈夫よね?
「それで二人が目を離したスキにマスターとあんなことやこんなことをしたいです」
…………………。
うん、メイコのこういう正直なところは好きだけど、なんだか腹が立ってきた。
「そんなことをしたら、絶対口を聞いてあげないから」
「そんな…、せっかくマスターと二人っきりになるチャンスなのに…」
しょんぼりとメイコはうなだれて、拗ねた表情でこちらを見つめてきている。
「そんな目で見つめてきても、駄目なものは駄目だから」
「マスターはわたしと二人っきりになりたくないんですか?」
そういえば、ルカがこの家に来てからメイコと二人っきりになる時間が減ってきたような気がする。
私はひとつため息を吐くと、メイコの頭にポンと手を置いて優しく撫でてみる。
「そうね、たまには思いっきり二人きりで寄り添うのもいいわね。
…あんなことやこんなことは駄目だけど」
私の言葉にメイコは目を輝かせると、ギュッと私に抱きついてきた。
「マスター♪だからマスターのこと大好きです!」
子供のように嬉しそうにはしゃぎながらメイコは私を抱き締める手に力を込めていく。
私は穏やかに微笑むと、早速お弁当の中身は何にしようかと考え始めていた。
「メイコは何を食べてみたい?」
後は、メイコと二人きりで過ごせる休日を楽しみにしながら、夜遅くまでずっとメイコとおしゃべりをしていた。
花見の季節がやってきましたということで、この小ネタを書いてみました
どう考えても続きがあるんですけど、続きとかどうしよう?
(とっとと考えなさい)