スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

小ネタ(ボーカロイドで四月バカ)

うっすらと淡い日差しが覗き込む爽やかな朝。私はゆっくりと目を開けていく。
春を迎えたはずなのに、まだまだ肌寒く、布団の世話になりっぱなしだ。もう少し眠っていたいという欲求と戦いながら布団に潜り込もうとすれば、なにやら違和感を覚える。
気になって違和感がする方を向けば、そこにはメイコが静かな寝息を立てていた。
まだぼんやりとした頭で状況を把握しようと一所懸命に働かせてみる。
メイコが隣で眠っている。この事実だけなら別におかしなことではない。こうやって二人で一緒に寝ることは珍しいことではないし、たまにはメイコの温もりを感じていたい。
問題は昨日は一人で寝床についたことで、いつの間にかメイコが人の布団の中に潜り込んでいたことだ。
おまけに今のメイコは一糸纏わぬ姿である。

「…マスター、そんな激し過ぎます」

なにやらわけのわからない寝言を発して、相変わらず気持ち良さそうなメイコの寝顔は少し腹立たしい。
私はふつふつと沸き上がってきた感情の勢いそのままにメイコを揺さぶっていた。

「メイコ、起きなさい!」

怒りも混じっているのかいつもよりも激しく揺さぶり、メイコをじっと睨み付ける。
そんな私とは裏腹に、メイコはのんびりとした雰囲気で身体を伸ばし震わせていく。
ようやく起きたようで、まだ焦点の合っていない瞳を擦りながら私の姿を探しているようだった。

「あ、マスターおはようございます」
「あ、じゃないわよ!いきなり裸で人の布団に潜り込んで!悪ふざけもいい加減にしなさい!」
「そんな…、マスターひどい。昨夜はあんなに愛し合ったのに」
「寝言は寝てから言いなさい!そんな事実なかったでしょうが!」
「マスター忘れちゃったんですか?」

烈火の如く怒る私をものともせずに、メイコは飄々とした態度で受け流している。
まじまじと真剣な表情は何も知らなければ騙されてしまいそうなくらいだ。もちろん騙されるわけにはいかないけれど。
と、ここでふと目にしたカレンダーで今日が四月一日ということに気付く。

「うう、もうマスターなしじゃ生きていけません。責任取ってください」
「いいわよ」
「へっ?」

なおも演技を続けるメイコに返事をして、私はメイコの額に軽く口づけをする。
私の行動が意外だったのか、それとも不意打ちだったのか、今度はメイコが慌てる番になってしまっていた。

「あの、マスター。今日はエイプリルフールで…」
「知ってる」
「だからさっきまでのはわたしの冗談で」
「うん、分かってる」

メイコの言葉を遮り、私はメイコをそっと抱き締める。すべすべとした素肌と肉付きのよいメイコの裸体はとても抱き心地がいい。
耳元ではあわあわとメイコの震えた声が聞こえてくる。きっと耳まで真っ赤にしているんだろうなって想像するとなんだか楽しくなってきた。

「メイコ、責任取るから今からデートしよ?」
「マスター…?」

メイコから身体を離して顔を覗き込むと、目を丸くしたまま固まっているメイコがそこにいる。
ぱちくりと目を瞬かせたまま気が抜けたようにぼーっとしているメイコが可愛くて、私は唇を綻ばせていた。そんな私に気付いたのか、メイコの表情は相変わらず赤いままだ。

「ほら、早く服を着て。時間なくなるわよ?」
「マスター、ホントなんですか?」

上目遣いで見つめてくるメイコがとてもいじらしく、私まで赤くなってしまう。正直、くせになってしまいそうなくらいだ。

「それじゃメイコはウソにしてほしかったわけ?」
「イ、イヤです!マスター、すぐに準備しますから目一杯楽しみましょうね!」

声を大にして即答するや否や、メイコはシーツを身にくるみ部屋を飛び出していく。
メイコが出ていくのを見送って、私は盛大にため息を吐いていた。別にこれが初めてではないとはいえ、さすがに慣れない。
私もまた寝巻きに手をかけて、クローゼットの中から今日何を着ていくか悩み始める。
やっぱりメイコとのデートは楽しみで仕方ない。にやける顔をなんとか引き締めようと頬を叩く。

「さてと、メイコにもあんなこと言っちゃったしね」

きっかけが少し言葉にしがたいウソとはいえ、メイコと水入らずに過ごせるのはとても嬉しい。
せっかくの休日でもあるし、やりたいことが次々と浮かんでくる。メイコと何を話そうかと考えながら、私は鏡を前に服を合わせていた。









エイプリルフールということでいつものようにウソなお話を考えてみました

最近更新してなかったのでリハビリのつもりで投下してます

いつもの調子だといいんですけど

小ネタ(ボーカロイド・メイマス)

「マスター!」

私の作業中にメイコが抱き付いてくるのはすでに日課と化している。メイコの肌の温もりが心地よいので、メイコの好きなようにさせている。
もちろん、メイコはやりたい放題だ。力一杯抱き付いてくるのは当たり前のことで、後ろから私の胸を揉んできたり、首筋に軽くくちづけをしたりと。
まあ、私もお返しにと私の胸元に抱き寄せたり、頬に軽くくちづけをしたりしているけれど。
そんなこんなで楽しく過ごしている日々ではあるが、少し気になることもある。

「マスター大好きです!」

メイコは愛情表現をしてくれるし、私の愛情表現を受け入れてくれるが、あまりそれ以外のわがままを言ってくれない。
不満と言うには遠く、些細なことであるけれど、もう少しなんと言うかあれが食べたいとかメイコにおねだりされてみたいというのはある。

「ねえ、メイコ」
「なんですかマスター」

だから今、メイコと二人きりでいる時に聞いてみようと声をかけた。
メイコは後ろからきょとんとした表情を覗かせる。目をぱちくりと瞬かせている様子がとても可愛らしく思えた。

「メイコは何か食べたいものとかある?」
「マスターが食べたいです!」
「そういうことじゃなくて」

私はすかさずメイコの額に手刀を一閃するが、にへらと特に堪えたということはなさそうだ。
私は呆れたようにため息を吐いて、冷たい視線を投げかけていた。それでメイコがどうこうなるというわけではないけれど。

「メイコは何か望みとかないわけ?ほら、メイコはくっつくだけくっついて他にわがままとかあまり言わないから」

私の言葉にメイコは顔をしかめて何か考え込むように頭を傾けている。ただ何とはなしに軽い気持ちで聞いてみたので、なんだか真剣に考えるメイコの姿が可笑しく感じられた。

「別にそんなに真面目に考えなくてもいいのよ?」
「うーん、マスター以外と言われるとなかなか思い付かないですね…」

メイコの口から出た言葉は意外だったが、同時に嬉しさから胸の奥がじんわりと温かいものになる。
メイコに想ってもらえるという事実は私の心を躍らせるものだと再認識して、つい私の頬を綻ばせてしまう。
思わずにやけそうになる表情を引き締めて、私はメイコを見つめていた。

「それにしても、急にどうしたんです?」
「え?いや、いつもこんな調子でメイコは満足してるのかなって」

もちろん、毎日が毎日このような日常を送ってきているというわけではないが、やはりメイコに厭きられないか気になってしまうのである。
それだけ私の中でメイコが占める割合が高いのかもしれない。要は私はメイコのことが好きで好きで仕方がないのだ。
とはいえ、自分の言ってることはメイコを隠れ蓑にした自分自身のわがままだということは自覚している。

「わたしはマスターに好きと言われること。愛されることが一番嬉しいんです。それ以上に欲しいものはよく分からないです」

そんな私の心の内を理解してくれたのか、メイコはぎゅっと回す手に力を込めてきた。
メイコに求められていることに安堵感を覚えて、私はメイコに身を預けていく。愛しさからメイコの手に自分の手を重ねて、そっと瞳を閉じていた。

「ありがと、メイコ」

私はふと目を開けてメイコに微笑みかける。お互いに交わす熱い視線は私達の時間の流れをゆったりとしたものに錯覚させてしまうようだ。
メイコの穏やかな笑顔は私に活力を与えてくれる。これは錯覚ではないと信じたい。

「あ、そうだ」
「どうしたのよ」
「マスター、お願いを聞いてくれるなら今から飲みませんか?」

メイコにとっていいアイデアだったようで、いつになく声を弾ませている。朗らかな笑顔がとても眩しい。

「もちろん構わないけど…、別にいつもと変わらないじゃない」

そう、メイコとの晩酌は毎日とはいかないけれど、よくある日常的な光景だ。それを指摘してもメイコの表情に変化は見られなかった。

「だからいいんじゃないですか。マスターと一日でも一緒の時間を過ごせるのが最高の贅沢なんです」

メイコの言う通り、共に過ごせる時間はとても貴重だ。きっと一日一日が特別な時間である。多分、メイコの言いたいことはこういうことなんだろうと思う。

「分かった。付き合うわ」

なんだか肩の力が抜けて、私はお酒を取りに行こうと立ち上がっていた。
それに合わせてメイコも後を付いてきてくれる。鼻唄を歌っていたりかなりご機嫌の様子だ。早速、冷蔵庫の中の程よく冷えたビールを取り出してメイコとテーブル越しに乾杯をする。
ビールを喉に通し、盛大に息を吐いてメイコの顔は幸せで満ち溢れているようだった。

「やっぱり、マスターと飲むお酒以上に美味しいものなんてありません。
マスター、今夜は楽しく飲みましょうね!」
「…ええ、そうね」

他愛もないおしゃべり。それが出来ることの幸せを噛みしめながら、私はメイコと笑い合う。
メイコの話に耳を傾けながら、私はメイコと何を話そうかと考えることに胸を躍らせていた。









なんとなくほのぼのとしたマスターさんとめーちゃんのお話が書きたかったんです

こうやってマスターさんとめーちゃんのまったりとした晩酌とか大好きですよ

小ネタ(ボーカロイドでお月見)

日もだいぶ傾いてきた夕餉前、私達はスーパーに買い出しに来ている。今日は十五夜ということで、玉子を使って何かを作ろうと思っているがなかなか決まらない。
とりあえず玉子は確保したものの、メニューは未だに考えあぐねているので、かごの中はまだまだ余裕といった有り様だ。

「マスター、これだけあれば月見酒には十分ですよね?」

そんなことを思っていたのも束の間のことで、メイコが早速ビールをケースごと突っ込んできた。相変わらずこういうことは手早くて思わず感心してしまう。カートを引っ張ってきたのはもしかしたら正解だったかもしれない。
呆れたため息を吐くよりも先に、メイコはうっとりと満ち足りた表情をしていた。

「マスターと一緒に飲むビール…。考えただけで幸せです」

大人びた体つきに子供っぽい無邪気な笑顔。悪戯っぽい笑みは私の心を大きく揺さぶってくる。
確かに今夜の月夜の下で飲むビールの味は格別だろう。
つい口元を緩めて私は改めてカートを押していった。その隣を機嫌よくメイコが付いてくる。

「メイコはもうよかったの?」
「もちろんですよ?マスターとのお楽しみは帰ってからですから」

……………。

なんか含みのある物言いにかあっと頬が熱くなる。相変わらずのニヤニヤと悪巧みを窺わせる笑みに私はメイコの額を軽く小突いていた。
まったく、頭の中がメイコでいっぱいになってしまうではないか。
妙にメイコのことを意識してしまい、ついメイコから視線を外す。メイコにとってそれは十分な反応だったようで、私が突き出してきた手をそっと包み込むように取ってきた。
相変わらず私はメイコの表情を見ることが出来ない。しかし、小憎らしいほどに快活な笑顔であることは容易に想像できた。
だからついメイコと自分の指を絡ませてしまう。メイコの手をきゅっと握り締めて、お互いが感じられるようにしっかりと繋いでいた。

「マスター!」

とここでミクの声が聞こえてきて、私は我に返っていく。メイコを見れば、もう終わりと少しつまらなさそうに口を尖らせていたが、すぐに気を取り直してミクを迎え入れていた。
その前に一瞬だけ見せた妖艶なメイコの吊り上げられた唇は少しの不安とほのかな期待を胸に抱かせる。とりあえず今夜の月見を平穏無事に過ごせるようにと願って、私は頭を手で押さえていた。
そして、そんな空気を払拭するかのようにミクとルカが姿を現してくる。

「マスター、これ夕食にお願いしていいですか?」
「…マスター、これもお願いします」

ミクはルカを連れ立っていたようで、それぞれネギとマグロの切身を買い物カゴに放り込んできた。ミクの方はご丁寧と云わんばかりに小口ネギと長ネギと揃えてきている。
なるほど、やけに弾んだ声音をしていたのはこういうことだと理解して、私は落ち着いた笑顔を浮かべていた。

「今夜のごはんのリクエスト?」
「…はい、その、いけませんでしたか?」

不安からかルカが上目遣いで見つめてきて、私は動揺してしまう。いつもは落ち着いた物腰でこういうことをしてくるのは珍しいからなおさらのことだ。

「マスター、月見ネギトロ丼食べてみたいです」

ルカに続いてミクまでもすがるような眼差しで見つめてくるものだから、戸惑いを隠せないでいたらいつの間にか後退りをしていたことに気付く。
そして、そんな私が圧されていることに気付いたのか、二人はさらにずいっと迫ってきた。

「ねーぎ、ねーぎ」
「…とーろ、とーろ」

二人にじりじりと距離を詰められて、私は焦ってたじろいでしまう。ただ、ルカを見れば多少は恥ずかしそうに頬を染めていたのは可愛らしかった。
とはいえ、このまま押しきられるの困るのでメイコに助けを求めようと振り返る。

「メイコ、見てないで助けて…」
「お さ け!お さ け!」

振り返れば嬉々とした表情で、メイコは助けるどころかミクとルカに乗りかかってきた。
悪のりはいつものことだけど、さすがにこれは恥ずかしい。注目を集める前に三人の頭に手刀を振り下ろし、少し涙目になっている三人を睨め付けていた。

「まったく、三人とも落ち着きなさい。別にネギトロ丼を作らないってわけじゃないからはしゃがないの」
『…ごめんなさい』

素直に謝る三人のしゅんとした態度が何故かツボに入ってしまったようで、可笑しさが込み上げてくる。
私は口元を押さえて、どうにか笑うのを堪えるとカゴの中を潰さないように整理していった。

「ほら、帰ったたら月見ネギトロ丼を作るから三人とも手伝いなさい。今夜の月見は楽しく過ごすわよ」

そう言うと三人は機嫌を良くしたようで、メイコは私の後を追いかけてきて私の腕を絡めとる。一方でミクとルカは私と入れ替わるようにカートを取ると二人仲良く並んで押していた。

「マスター、早く帰りますよ!ねーぎ、ねーぎ!」

元気良く先を進む二人を見守って、私はメイコと絡んだ腕を組み直していく。その時覗かせたメイコの笑顔がとても印象的で、ついクスッと声に出して笑っていた。
メイコと視線を交わして微笑み合って、ミクとルカの後を追いかける。今夜の月見をどう過ごそうかと考えるのはとても幸せな気分だった。









だいぶ月も欠けてしまってますが、十五夜のお話です

月見ネギトロ丼というものがふと脳裏に浮かんでしまいましたので

「ねーぎ、ねーぎ」「…とーろ、とーろ」と言わせたかったのもありますが

小ネタ(ボーカロイドでルカマス)※かなり管理人が壊れてます

今朝も朝から日差しは強く、暑さ対策に庭で水撒きをしている。普段は中に水着を着ているが今日は着けていない。
元凶であるメイコはまだ寝ているし、起き上がるまでには水撒きも終わっているだろう。鼻唄混じりにホースを握り締め、半分くらい水撒きが終わった頃にそれは起こった。

…ばっしゃあ!

勢いの良い水音と共に身体中が水浸しになってしまうのを実感する。突然降りかかった災難に、私の中で怒りと驚きが支配していた。
もちろん、こんなことをしでかすのは一人しかいないが、まだ眠りについたままのはずである。それでも、私はその人物を叱りつけるために振り返った。

「メイコ!何度も何度も馬鹿やってんじゃ…ない…わよ?」

とりあえず、怒鳴り付けようと振り返った先にはいつものようにメイコではなく、代わりにルカが立っていた。
ご丁寧に証拠と言わんばかりにバケツまで持っている。

「ルカ…?どうして…?」

あまりにも意外であったために戸惑ってしまい、口調も勢いが止まってしまった。そんな私を意に返さずにルカは薄ら笑いを浮かべている。
そんなルカが醸し出す妙な迫力に圧されてしまい、私は動けずにいた。

「…よかったです。今日は水着ではなかったんですね。メイコさんの言っていたような下着姿で安心しました」

ルカの言葉に私は自分の姿を見て、それから慌てて胸元を隠すように手で覆う。恥ずかしさのあまり顔が赤くなっていくのを自覚していた。

「…マスター、照れなくても大丈夫ですよ。とても可愛らしいです」

最近はおとなしかったのですっかり忘れていたが、ルカもメイコにいろいろと仕込まれていたのを思い出した。
ただ、今頃になってこんなことをしてきたのが分からない。

「…メイコさんが最近教えてくれたんです。マスターの新しい弱点を見つけたことを。隙を見つけたらいろいろと試すようにお勧めされました」

…後でメイコはきっちりとシメておこうと思う。とりあえずはこの場から逃げ出す方法を考えるのが先決だろう。

「…マスター、この暑い中びしょ濡れでは風邪を引いてしまいます。とにかくお風呂に行きませんか?」

しかし、ルカに逃がす気は無いらしい。それどころかメイコに教えられたことをあれこれ試すつもりのようだ。
多分、ルカに話したということはミクにも話したということだろう。これからは一日中気をつけなければならないのだろうか。

「…マスター、後のことよりも今の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」

そんな私の考えを読み取ったのか、ルカが妖艶な笑みを浮かべて迫ってくる。
じつに楽しげな表情に私は身体が強張るのを感じていた。逃げるのはもう無理かもしれない。

「…それではマスター、いろいろと教えてくださいね」

とりあえず諦めたようにため息を吐いて、ルカと一緒にお風呂へと向かう。
こうなったのも暑さのせいと自分に言い聞かせて、ルカとのコミュニケーションを楽しむことにしよう。ルカもそのつもりだろうし。…多分。

「お手柔らかにね」
「…はい」

ようやくルカの笑顔が穏やかになったことに安堵して、私は静かにため息を吐いていた。









夜霧音緒さんからのリクエスト『ルカマスで猛暑』です

自分が暑さにやられたのか、かなり壊れてます

こんなのでいいのかかなり不安がありますが読んでいただければ幸いです

小ネタ(ボーカロイド)

とある夏の日の昼下がり、私達は縁側の奥に陣取って暑さを凌いでいた。風通しのよい場所に夏の日差しを避けて、私達はひっそりと横たわっている。
蝉の鳴き声がじりじりと夏の暑さを際立てており、徐々にではあるが私達の体力を奪っていく。しかし、時折鳴り響く風鈴の涼しげな音色がほんの僅かだけ私達を癒していた。

「……暑いですね」
「……メイコ、お願いだから『暑い』とか言わないで」

すっかり暑さに参ってしまい、私とメイコは床に伏せている。たまに涼しい風が吹き抜けていくものの、この暑さを乗り切るにはまだまだ足りないくらいだ。
容赦なくかんかんと照らす太陽はお構い無しでまるで嘲笑うかのようにも感じられてしまう。

「そうだ。せっかくですし、この間みたく水浴びでもしましょうよ。もちろん、中に水着とかしないで」
「却下。あんたはそう言って集中攻撃するのは目に見えてるじゃない」

前回の事を思い出し、思わず頭に血が昇ってしまったが、この暑さでは突っ込む気力も起きなくて、私は項垂れたまま突っ伏していた。さすがにメイコを睨み付けるだけで精一杯である。
まだまだ余裕があるようで、メイコの心配は必要無さそうだ。

「マスターのけち。風情の無いこと言わないでくださいよ」
「風情って何よ」

とりあえず、メイコのことは突っ込むのは止めにして、ミクとルカの方を見やる。ルカの姿は見えなかったが、ミクは縁側の近く、日向と日陰の境目で寝転がっていた。
この暑い中ではあったが、僅かに涼しそうにしている。

「ミク…?」

私の呟きとも言える呼びかけに反応して、ミクは笑顔で応えてくれた。どうやら何かを伝えたくてうずうずしているようである。

「あ、マスターここ風が吹いてて涼しいですよ」

私とメイコよりも余裕といった様子だから、おそらくここよりは涼しいのだろう。涼しい場所を探し出すのはまるで猫のようで、ちょっと可笑しい。
私はミクに誘われるように側に行き、場所を借りることにした。

「あ、ほんとに涼しいわね」
「はい!」

ミクの返事はとても元気良く、暑さを感じさせない。私は思わずミクの頭に手を伸ばして、そっと撫でていく。
そして、ミクは気持ち良さそうに目を細めておとなしく撫でられていた。ミクの頭を撫でているところでルカのことを思い出す。

「そういえば、ルカはどこに行ったのかしら?」
「ルカさんなら麦茶を取りに行くって言ってましたよ」
「なんか悪いわね」

ルカのこういう気遣いには頭が下がるばかりだ。未だに蝉の声が鳴り響く中、私達はルカが帰ってくるのをひっそりと待つことにする。
途中でメイコもやって来て、三人は仲良く並んで風の有り難みを感じていた。

「…お待たせしました」

それから数分と経たないうちに、ルカが麦茶を用意して姿を現してくる。ルカが姿を現すや否や、ミクは飛び付くようにルカの側に寄り麦茶を乗せたお盆を受け取って、麦茶を順番に注いでいった。

「はい、ルカさん麦茶をどうぞ」
「…ありがとうございます」

相変わらず初々しい二人に口元が綻んでしまう。私の視線に気付いたのか、二人ともほんのりと頬を染めていた。
邪魔をしては悪いと麦茶を受け取ってメイコの下へ帰っていく。

「ほら、メイコ麦茶」
「マスター、ありがとうございます大好きです」

どさくさに紛れた愛情表現に苦笑いを浮かべつつも、メイコに麦茶を差し出して一緒にグラスに口を付けて喉を潤していく。
グラスの中身が半分になったくらいで生き返ったように息を吐いてしまった。その隣でメイコがからからと笑い出したものだから、つい顔を赤らめてしまう。

「笑わなくてもいいじゃない」
「いえ、マスターが可愛いと思っただけです」

メイコにこんなことを言われたら、なんだか照れ臭い。私は悔し紛れに拳をメイコの頬にぐりぐりと押し付けて誤魔化していた。

「…相変わらず仲が良いですね」

そんなやり取りをルカとミクは楽しそうに見つめている。この二人に言われるのは違和感を覚えてしまうがそれは気にしない。
とりあえず、ミクが見つけた涼しい場所を四人並んで座り込み、麦茶を飲みながら日が傾くまで和やかに談笑しながら過ごしていた。









だいぶ遅れてしまいましたが暑中見舞い申し上げます

暑い中の冷たい飲み物、特に麦茶は最高ということでこの小ネタは出来ました

この暑い中でほのぼの感が出てたらいいな
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2024年04月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30