HERE TODAY DIARY Season2

　パートワークの『石原裕次郎シアター DVDコレクション』が発売された。石原裕次郎没後三十年の今年は裕次郎さんの特集があちこちで組まれ、遂に出演映画のDVDマガジンまで発売となると、気になる沖雅也ファンは多いはずだ。

　1971年公開の『男の世界』ももちろん発売されるようで、来年の六月頃に発刊される27号が『男の世界』。これは楽しみだ。
　過去の復讐をするために、カナダから暗黒街に舞い戻った一匹狼が、やくざ組織に闘いをいどむアクション篇。沖様が準主役なのが何より見どころ。裕次郎さんに目をかけられるのに反抗ばっかりしちゃう役(笑)。まだ１９歳なので幼い感じがまたよろし。沖様の出演作品の映像は年々貴重になっているから松竹時代の映画のソフト化は有難いね。ファンにとってはぜひ買っておきたい一作。

　今日は沖雅也さんのご命日だった。もうあれから三十四年が経ってるなんて驚くばかりだが、月日はあっという間ですな。幼かった私も中年になり、沖様の歳をどんどん追い越している。

　年明けの頃だったか、つかこうへいさんの劇団にいらっしゃった方からメールをいただいた。その方Ａさん(男性)は８２年頃に劇団に入られて、沖様がつか氏の演出に興味を持たれて何度も公演に足を運ぶ姿を見ていたんだという。スターなのに、こんな劇団の芝居に興味があるなんてって思っていたそうだが、お稽古の様子も見学され、やがて生前最期のドラマ『蒲田行進曲』の銀四郎を演じることになるが、Ａさんは下っ端の劇団員でお金もなく雑用に追われ毎日お腹をすかせていたそうな。食べる余裕もないのでふらふらしながら帰り支度をしてたら、沖様から「ラーメンでも食っていくか？」と誘われ、彼の白いベンツへ乗せられたという。Ａさんは本当は早くアパートへ帰って銭湯に行きたかったそうなのだが、空腹も耐えられなかったので有難かったという(笑)。
　着いたところはラーメンの屋台ではなく、当時としては珍しい深夜も営業している小洒落たレストランだったそうで、汚い格好のＡさんは恐縮したらしい。「何でも好きなの注文しろよ！！」と沖様に言われ、お言葉に甘えてお肉を注文。そしてサイドメニューが次々と運ばれ、空腹が満たされたと思ったら、朝まで沖雅也流の演技論を聞かされたのだそうだ(笑)。すべてが格好良かったとＡさん。ボロアパートまで送ってくれて、お茶を出したら「こんな汚い部屋初めて見た」と笑っていたとか。その数ヶ月後、沖様は旅立たれＡさんは衝撃を受け、つか氏の激しい指導にも我慢できずに劇団を退団してしまったという。
　そのＡさんは今、裏方のベテランで数々の舞台の演出を出かけている方なのだが、その夜の沖様の男気溢れる優しさを時々思い返しては懐かしさに浸っているという。何とも羨ましい話である。
　たまにこんな沖様の秘話を教えてくださる方からメールをいただくことがあり、本当に貴重なお話ばかりで中には胸にしまっておきたい話もあるが、できるだけ皆さんにもお裾分けしたいと思っている。どれも素敵な沖様がそこに居て、彼は確かに生きていた。大切な大切な出来事。もう本にまとめたいくらいだ。

　この半年、沖様からお呼ばれがなくてしばらく会えていない。最近、私があまりそっちに行くと寿命が縮まるから呼んで下さらないのかなと思い始めている。そうか、沖様は気遣って下さっているんだ！

　永遠の３１歳、沖雅也さん、本名ジョージさん、お誕生日おめでとうございます！
　この頃は『太陽にほえろ！』の初登場の場面から見直しているのだが、本当にお芝居もアクションも完璧で、現在放送している若手のお芝居がいかに退屈か思い知る。同い年の俳優は本当にお芝居下手なんだもん(笑)。沖様に演技指導していただきたいくらいだ。今やテレビも映画も豪快なアクションは消え、刑事は銃を使わなくなって久しい。スコッチみたいな刑事は以後、現れなくなった。沖雅也さんの確かな表現力は本当に貴重な資料だから、演技をする方はお手本にしてもらいたいな。

　ようやくあの事故のショックから立ち直った私は、運転しながら沖様の歌声をBGMに少しずつ自信を取り戻しつつある。ファンク全開の『ジャックナイフ』は闇を切り裂くように突き抜けてドライビングを爽快にさせてくれるし、『グッドラック』、『ひとすじの黒髪』ではデートしているような穏やかで幸せな気分にさせてくれる。静かに語りかけてくれる朗読も私の不安を忘れさせてくれるな。おお、本当に沖様の声で助けられてる！(笑)ありがとう、沖様。

　昭和が終わり、沖様が平成という時代を知らないまま平成が終わろうとする今、沖様のいた時代が静かに遠ざかっていく。だけどあなたは確かに生き、今もたくさんの人々に愛されていることを忘れないで。

　「女の子がさ、俺のテレビ観ながら『沖様！！』って叫ぶんだよ(笑)ん？呼んだか？って思うんだ(笑)」って夢で嬉しそうに仰るあなたの笑顔を皆さんに見せて差し上げたい(笑)。沖様、私はこれからも沖様のお気持ちを皆さんにお伝えしますね。また素敵なお邸に呼んでくださいね。会いたいです！

　今日、1月29日はスコッチこと滝隆一警部補の命日だ。古傷がたたって入院中だったスコッチは、最後の力を振り絞り病室から飛び出し最後の捜査に向かい、大量に吐血してしまう。
　七曲署で後世に、スコッチほど愛された刑事はいないのではないだろうか。スタイリッシュで正確な分析と推理力。スコッチほど素早く犯人を捕まえる刑事なんていないんじゃないかな。

『幡随院長兵衛お待ちなせえ！』や『はぐれ刑事』で沖雅也さんと共演なさっていた平幹二朗さんが急死したという。今、びっくりしちゃって何かガツンと殴られた感じ。

平さんといえば、日本の演劇の重鎮であり、シェイクスピア劇といえば彼だったので、私も若い頃に何度か拝見した。圧倒的な演技力と存在感で、平さんでしか表現出来ないお芝居の数々だった。昔、日生劇場だったと思うけど、平さんとすれ違ったら「大丈夫？お嬢ちゃん」と声をかけてくださったことがあった。背が高く、アスコットタイをして紳士のファッション。本当に素敵だったなあ。沖様とのドラマでもスタイリッシュで、時代劇も粋だったし、本当に素晴らしい役者さんでした。

お風呂でなくなっておられたと聞いて、今年は義姉や知人もお風呂で亡くしている私には衝撃的。言葉が上手く出ないや…。
ご冥福をお祈りいたします









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