我が征く道は186

「…間引くってお前」
近くの木々が全てギルガメッシュの攻撃で折られてしまったので、凪子はそれら避けながらギルガメッシュの正面に出た。否、引きずり出された。
表情が引き締まった凪子に、ハッ、とギルガメッシュは嘲笑うように笑う。
「この世には不要な人間が多すぎる。であるならば、まずは間引かねばであろう?」
「…お前、死人の分際でまた王様になろうってか?」
「今の我は生身を得ている。であるならば、王としての務めを果たすべきであろう」
「…………お前、本当にギルガメッシュか?」
「何?」
ギルガメッシュの言葉に少し黙った後、疑うように口にした凪子に、ギルガメッシュは眉間を寄せた。
凪子はじろり、とギルガメッシュを見据え、くるくると槍を回す。
「お前に会ってからとりあえずこの国にあったギルガメッシュ叙事詩は読んだんだよ。よく覚えてなかったからな。…サーヴァントは全盛期で召喚されるとはいえ……今のお前、親友を失う前の暴君時代よりクソな事言ってる自覚、あるか?」
「…………」
スッ、とギルガメッシュの顔から表情から消える。先程までの余裕げで、嘲笑うような態度だったものが、殺意を隠さないものになる。
凪子は遠慮のない殺意を浴びながらも、臆することなく笑みを浮かべた。
「今のお前に、王としての資質なんざ感じん。理性は保っているみたいだけど…お前、あの泥におかされて少なからず変質してるぞ」
「………ハッ、何をいうかと思えば。我があの程度の泥に犯されなぞするものか。貴様が精々一部しか残っていない書物なんぞから勝手に抱いた印象を、我に期待するのが間違いというものよ」
「…ま、自覚ないならとやかく言うつもりはないけどさ。しかしそうか、人間の間引きか…お前の口調からして、全世界やるつもりみたいだしな」
「人でない身でありながら人間のなかで生きる貴様には、傍観できるようなことではないであろう?」
「まぁ…否定はできないね」
「で、あるならば」
―ズゥン、と低い音をたてて、幾数もの扉が口を開く。その扉から、大小様々な武器が顔を覗かせる。
「貴様にはここで消えてもらわねばな。何、跡形もなく消してしまえば、不死のその身も消滅するであろうよ」
「どうかなぁ。死の概念がこの身にはどうやらないみたいだし」
「ないと確定はしていないのであろう。ならば試してみるまでよ」
「………ッ」
ギルガメッシュはそう言うと同時にあげていた手を凪子めがけて振り下ろし、扉からは一切に武器が射出された。
「(…正規の参加者じゃあないんだ。私を殺すつもりなら――ここで殺すか)」
凪子はすぅ、と目を細めると、勢いよく地面を蹴った。

――槍を身体の前で回転させ、正面から襲い掛かってくる武器をことごとく弾く。ランクの高い武器であれど、凪子の槍は神造兵器、同じ神造兵器相当でなければ傷1つつかない。
凪子は勝負をつけるつもりで、ギルガメッシュに向かって迷いなく一直線に駆ける。
「フン」
くんっ、とギルガメッシュが手首を曲げる。直後、弾かれて後方に突き刺さった武器たちが浮かび上がり、背後から凪子に迫った。
凪子はそれをちらりと見て確認すると、上着のポケットから取り出したルーン石を後ろにぽいと放った。石は地面に落ち、それを基点として模様を描く。それぞれが陣を作り上げると、その陣から魔力で編まれた盾がはえそびえ、ギルガメッシュの攻撃を弾いた。