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カルデアの善き人々―塔―14

「――はっ、はぁっ、はあッ――――」
自室に逃げ帰った彼は、すぐさま自室のセキュリティをロックした。エルメロイ?世が追ってきている様子はなかったが、サーヴァントの気配など自分には分からない。
彼は肩で息をしながら、ずるずると扉に背を預け、その場に座り込んだ。

――――大丈夫か?

「…………はぁ…………は……………」
――自分は、そんな風に、見えていたのだろうか。
きっと彼は他のスタッフにも同じことを言っているに違いない。いや、そんなことはない、だったら自分との関係を確認する前に聞いてくるはずだ。
「…………うぅ…………」
彼は膝を抱え、その間に頭を突っ込んだ。

――正直に言って、ここに来てから、自信が回復することはなかった。
医療チームにおいて自分は下の下だ。魔術師以外のスタッフに機械工学に秀でたスタッフはごまんといる。20人生き残ったスタッフのうち、自分は本当に、下の下なのだ。
だから、亡くなった所長に代わって自分達をまとめているドクター・ロマニに、コフィンの管理を任されたときは嬉しかった。コフィン整備と医療義務を両方できるスタッフは確かに少ない。そしてそのスタッフたちは、それぞれ片方の役割で大きな役割を担っている。だから流れ落ちてきただけの役割と言えばそれだけだ、それでも、任されたのは自分なのだ。理由がなんであれ、任されたのは、自分なのだ。

そんな、ちっぽけな理由で自尊心を保ってきた。
「…………俺は、大丈夫、まだ大丈夫…!」
自分に言い聞かせるように彼は呟く。
そうだ、大丈夫だ。自分は安全なカルデアでコフィン整備と誰にでもできる業務をしているだけだ。別に命がけの瀬戸際にいる訳じゃない。銃弾飛び交う戦場にいる訳じゃない。
「…藤丸だってやっていけているんだ、俺が、大丈夫じゃないわけがないじゃないか…!」

そうだ、自分は安全帯にいる。
ぬくぬくと守られる立場にいる。
サーヴァントという兵器と共に、その未曾有の戦場に生身でいる訳じゃない。
砲弾をくらってきりもみ回転した訳じゃない。
血を流している訳じゃない。
命を直接的に狙われている訳じゃない。
武器を向けられている訳じゃない。

そんな。

そんな、安全な地帯にいるのだ。



“大丈夫じゃないなんてどの口が言えるというのだ。”



「…俺は大丈夫、なにも問題ない、仕事だってこなせてるしドクターにだって特になにも言われない、メンタルチェックもメディカルチェックも引っ掛かってない」
彼はぶつぶつと呟きながら、のっそりと壁づたいに立ち上がった。

四肢は動く。
目も見える。
耳も聞こえる。
食事もとれる。
シャワーを浴びる気にもなれる。
布団から起き上がることもできる。
億劫だなと思うことはあっても仕事もできる。

なにも問題ない。
大丈夫じゃないことなんてない。

「…寝よう、久しぶりに酒を飲んだからきっと顔色が悪くなってるんだ、あいつが変なことを言うのはそのせいだろう、」
彼はそう自分に言い聞かせるように言うと、タブレットを机にそっと置き、ぼすんとベッドに倒れこんだ。

2018年

本ブログにお越しの皆様


明けましておめでとうございます。
昨年は本ブログに足をお運びいただき、まことにありがとうございました。
また挨拶が遅くなり、申し訳ありません。実はこの記事を書き上げた直後に全部消えてしまいまして、はい、遅くなりました…。

昨年は良くも悪くも宣告通りに不定期更新になってしまい、申し訳ありませんでした…。このブログを始めて約一年半、連載終了したのはなんと二作。も…もう少し更新したかったのですが…!!
そしてまた申し訳ないのですが、今年はですね、七月にですね、国家試験がありましてね…。その為、春から夏にかけて、更新停止ないし低頻度での更新になるかと思われます。冬には修士論文も迫ってくるので、今年は去年以上に更新の遅いブログになってしまうかと思われます。
ですので、どうぞ、週に何度か見に来るか来ないか、そんな程度にお付き合いいただければなと思います。


さて、昨年と同じく今年の更新予定です。
今の連載が終わりましたら、再び凪子ちゃんが登場する予定です。なおFGO時空です。その為捏造のキャラクターが多々登場することになりそうなので、ゆるーい気持ちでお付き合いいただけますと幸いです。

それでは、本年度もどうぞよろしくお願い致します!

2018/1/1
枯れず折れずの沈丁花
管理人:神田來
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