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コイゴコロはじめました

速く速く
君の手が追い付く前に
振り切ることをただ目的として必死に足を動かした

ふたつの足、まるで時空を越えるタイムマシンのように
遠く遠く
地面を跳ねた


短く、強く
きこえるのは
一番求めていた
だれかさんの足音。





恋をしていた、の
かもしれない。


「待てよ!」


あまりにむず痒くて苦しくて
嬉しくて楽しくて
せつなくて悲しくて
謎めいててときめいて
だから
あたしの沢山ある脳細胞が色んな感情を処理して分解して解析して答えを出すまでに
ちょっとした時間がかかった


「だから待てって!」


それに気付いた時
あたしの脳みそは真っ赤に火照って
のち破裂
は、してないけれど
とにもかくにも
体温急上昇
発熱、発火、
その結論が子どものあたしにとっては
大層恥ずかしくて恥ずかしくて


「待てって言ってんだろ!」


気が付いたらほら
あたしの体は綺麗に方向転換
休む間もなく綺麗なスタートダッシュを決めたのでありました

でも、これだけじゃ、終わらない。


「お前っ、俺、本気出すぞ!」


そりゃいきなり逃げられたらその理由が知りたい訳でございまして

なんて可愛い鬼ごっこ

ゴールはあたしよ、早くおいで


瞬く間に
ふたりの隙間に引力が働く

届いた指先
離すもんかと違う体温を引き寄せる


唇から零れた驚きの言葉も吸い込んで、


「よーやく捕まえたぞ、このバカ!」


目の前にあった表情は至って真剣だった。


「なんでいきなり逃げたんだよっ」

そんなの知らないよ
あたしが聞きたいくらい

「しかも全速力で走りやがって」

だって足が勝手に動いたんだもの
妙に肺がくたびれてるのは全速力で走ったから?

「あー…疲れた、マジ意味分かんねぇ」

だよね
あたしにも意味が分かんない
自分で自分が分からない


ここはどこ
ここにいるのはあなたとあたし
ああ、触れないで
結ばれた指先が熱くて、
ほどけなくなっちゃいそうだ!


「…おい、なんか言えよ」




言いたいこと?
あるよ、一つだけ

認めたくないけれど
これだけが真実




君にラブずっきゅん!

なんて言えない恋心
「早く気付いて!」とだけ言い放ち、また走り去った。
(だってすき、なんだもん)(ねえ、君は今どんな顔してる?)



song by:相対性理論“LOVEずっきゅん”


【カラオケでヒトミミ惚れした曲
追いかけてもらうシチュエーションがたまらなくすき!】
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