学校の帰り道、私はいつも立ち寄っている本屋に足を運ぶ。
今日は好きな作家の本の発売日なので足取りはとても軽い。
もちろん、一番の目的はそれではなかったりするけれど。
ゆっくりと開く自動ドアを通り過ぎて、私は真っ先にカウンターへ向かう。

「…いた」

カウンターの向こう側に凛々しい表情をした女性が接客をしている。
眼鏡の似合う、とても素敵なひとだ。

「いらっしゃいませ」

今日も彼女の声で私の胸がどきどきと高鳴っていく。
別に私に向かってかけられたわけじゃないのに妙に意識してしまう。
とりあえず、彼女の姿は確認できたので目的のものを探して文庫本のコーナーへと歩き出した。

「あった…。でももうひとつがない」

どうやらもう一冊の本が品切れらしく、片隅にある検索用の機械で調べてみたものの在庫の欄にマークは入っていない。
仕方なくその本のタイトルのレシートをプリントアウトして、カウンターまで入っていくことにした。

「いらっしゃいませ。商品をお預かりします。
文庫本にカバーはおかけしますか?」

今度は私に向かって声をかけられているので、心臓が早鐘を鳴らすのを自覚してしまう。

「お、お願いします。
それと、この本の注文お願いしてもいいですか?」

それでも顔に出ないようにと表情を引き締めてレシートを差し出した。

「はい、構いませんよ。それではこちらへどうぞ」

営業スマイルでカウンターの脇にある注文用のテーブルに案内されて、私はガチガチに固まったまま椅子に腰かける。

「それではこちらの本でよろしいですね。
では、お名前とお電話番号をお願いします」

いつもは本の受け渡しの少しの間だけ顔を見ているけれど、こうして間近で顔を見つめるのは初めてだ。

「ほ、本間めぐみです。電話番号は…」

どきどきしながらも自分の名前を伝えられたことにほっとして、改めて彼女の顔をじっと見つめる。
こうやって働いている凛々しい姿に見とれてしまい、数ある本屋の中でもここが一番の常連だ。

「ホンマメグミ様ですね。
それでは一、二週間程いただきますがよろしかったでしょうか?」
「は、はい。楽しみにしてます」

緊張のあまり声が裏返ってしまいそうになり、思わず顔が赤くなってしまった。

「はい、それではお電話いたしますので、楽しみにしてくださいね」

クスッと彼女から自然に笑みがこぼれて、私はさらに顔に赤みが帯びていく。
私の言葉を返してもらったこと、そしてなにより私自身に普通の笑顔をくれたことが嬉しくて、私の胸の高鳴りはしばらくおさまりそうになかった。










もちろん純水アドレッセンスが見つからなくて、あちこち探していた時に思いついた話です



読書好きの女子学生が本屋で働く女性に一目惚れしてしまうお話なんですけど、ここからどうやって発展させていけばいいんでしょうか?
(知りませんて)