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小ネタ(マラシャロでハロウィン)

とある夕刻のこと。コンコンと規則正しくドアを叩く音に気が付いて、シャロンは慌ててドアへと足を進めていく。

「はいはい、今すぐ開けますからお待ちになってくださいませ」

急な来客にも落ち着いた対応をと、簡単に身だしなみを確認してドアノブに手をかける。
ドアを開ければそこには小さくなったマラリヤが姿を現していた。
統一されたダークブラウンの三角帽子とローブといった魔女の格好にかぼちゃのポーチと可愛らしい姿に、シャロンはついついぽうっと見とれてしまう。
そんなシャロンを知ってか知らずか、マラリヤは満面の笑顔で手を差し出してきた。

『トリックオアトリート』

声には出さないものの、この状況ではこのように判断してしまうのも仕方ないことだ。
シャロンはクスッと小さく笑うとクッキーを取りに行こうとする。

…ぐいっ。

しかし、マラリヤはシャロンの服の裾を掴んで行かせまいとしていた。おまけにしっかりと握って離そうとしない。
不思議と立ち止まって、まじまじとマラリヤを見やると何やら期待の込めた眼差しでシャロンをじっと見つめてきていた。

「マラリヤさん、どうしましたの?」

問いかけるシャロンにマラリヤはぶんぶんと首を振っている。どうやらお菓子を取りにいってほしいというわけではないらしい。
不思議に思ってマラリヤを見れば、嬉々とした様子で瞳を輝かせている。
何かしたいのだろうと黙っていると、マラリヤはギュッと抱き着いてきた。シャロンに甘えるように寄り添ったまま、なかなか離れずにいる。

「…!そういうことですの」

これがマラリヤのイタズラだと気付くまで多少の時間がかかったが、それならば好きにさせようとシャロンは笑みを浮かべていた。
やがて、気も済んだのかようやくシャロンから離れて、マラリヤは満足そうに見上げてみる。

「マラリヤさん、気は済みました?」

しかし、予想とは違ったシャロンの慈愛の笑顔にマラリヤは口を尖らせる。
マラリヤの機嫌を損ねてしまったが、そんなマラリヤが可愛らしくてシャロンは特に気にする様子もなく、マラリヤの手を取っていた。

「さあ、せっかくお菓子を用意していることですし、中に入りませんか?
もっとマラリヤさんにイタズラされてみたいですし」

この一言でマラリヤは一気に機嫌を治してシャロンの後をついていく。この後もシャロンにくっつくことができると思うと足取りも軽くなっているようだ。
まだまだハロウィンは続いている。マラリヤと一緒に楽しく過ごせるようにと、シャロンはとっておきのお菓子を用意することにした。









まあ要はいちゃついてるだけなんですが

ハロウィンということでちみっこマラ様のイタズラというお題で書いてみました

どこがイタズラなの?というツッコミはなしで

小ネタ(ルキマラでバレンタイン)

いつものように夕食が終わった後、決まった時間に紅茶を入れるようになったのはいつのことだっただろう。
マラリヤは滅多に変化しない表情を緩めながら茶葉がゆっくりと沈んでいく様子を眺めていた。始まりはたったひとつの言葉から。

『ねえマラリヤ。勉強教えてほしいんだけどダメかな?』

そう、きっかけはこの一言だけだった。あの時、マラリヤは素直に声の主―ルキアを招き入れて勉強を教えていった。
普段から付き合いの浅いマラリヤならそこで終わったはずだった。勉強が終わった後に差し出した紅茶にルキアが『美味しい!』と言わなければ。
それから毎日のようにルキアはやって来た。勉強を教えてもらいにきたり、ただお話しがしたいと手土産にお菓子を持ってきたりと。
ルキアが訪ねてくるのは嫌じゃなかった。だからこそ、こうしてルキアがやって来るであろう時間に合わせて、マラリヤは紅茶を淹れていた。
普段は時間にルーズなルキアではあったが、マラリヤに会いに来る時は寸分違わずに時間を合わせてくる。
この待っている時間がマラリヤにとって至福な時間であった。今日もやって来るであろうとマラリヤは茶葉が沈んでいく様を眺めていく。

「…遅いわね」

しかし、時間を過ぎてもルキアは一向に姿を現さない。待てども待てども姿を見せないことに不安は募るばかりだ。
今までルキアはどんなことがあっても姿を現さなかったことはなかった。マラリヤの中で考えが悪い方へ傾いていく。
ルキアは大丈夫なのか、ルキアに嫌われてしまったのか、考え挙げればキリがない。
不安が渦巻いていく中で、マラリヤは冷めていく紅茶をじっと見つめていた。





それから数時間、なんとも言えないどす黒い感情の元、マラリヤはただひたすらに待ち続けた。
ルキアがやって来ない。それだけのことなのにマラリヤの身体は恐怖で震えていた。もはやマラリヤの感情の奥底は言葉では表現出来ないほど、深く混沌としている。
そして、ただ一人の人間にここまで揺さぶられていることに戸惑っていた。こんな感情は初めてのことで、マラリヤはどうすればいいのか分からない。
時計を見ればもうすぐ眠りにつく時間を指し示している。マラリヤは残念そうに一息吐いてベッドに潜り込もうと立ち上がった。

「ごめん!マラリヤ、待った?」

ちょうどその時、勢いよく開けられたドアと共にルキアが姿を現した。ルキアはところどころで息切れをしてきて、全力でこちらに向かってきたことを伺わせる。
マラリヤは思わず振り返り、ルキアの下へ歩み寄っていく。ルキアの声が聞こえた。それだけのことなのに不思議とさっきまでのどす黒い感情が和らいでいく。

「…遅かったわね」
「ごめん。これを作るのに手間取っちゃった」

そう言って差し出してきたものに、マラリヤはぱちくりと瞳を瞬かせる。赤と紫のリボンで可愛らしくラッピングされた包みがひとつ、精一杯の笑顔でルキアは差し出してきた。

「…これは?」
「ほら、今日はバレンタインでしょ?マラリヤに感謝の気持ちを伝えたくて作ってみたんだ」

…嫌われてなかった。

ただそれだけの事実であったが、マラリヤの凍った心を溶かすには十分であった。
張りつめた緊張の糸が弛んだのか、そのままマラリヤは座り込んでしまう。気付けば目に涙を浮かべ、小さな嗚咽と共に泣き出していた。

「マ、マラリヤ!?どうしたの!?ごめん、チョコレート嫌いだった?」

慌ててその場を取り繕うとするルキアの袖を握り締めて、マラリヤはふるふると首を横に振る。

「…いいえ。ルキアに嫌われてなくて嬉しかったの」

俯いたまま、聞こえるか聞こえないか小さな声でマラリヤは呟いている。見たことのないマラリヤの弱々しさにルキアは思わず息を飲み込んでしまう。
あのマラリヤが自分のためにここまでなってしまうとは思いもよらなかった。おそらく、待っていた時間は恐怖以外の何者でもなかっただろう。
未だに震えているマラリヤにルキアはそっと腰を下ろすと、ふわっと優しく抱き締めていた。

「そんなことないよ。わたしはマラリヤのことが大好きなんだから。ごめんね、マラリヤに寂しい想いをさせちゃって」

ルキアの声を間近で聞いて、マラリヤはついに声を上げて泣き出してしまった。ルキアはマラリヤをしっかりと受け止めて、落ち着かせるようによしよしと頭を撫でていく。

「落ち着いた?」
「…ええ、ごめんなさい。もう大丈夫よ」

ようやく嗚咽も止まり、マラリヤはルキアからゆっくりと離れていく。ルキアの顔を見れば、眩しいくらいの笑顔を向けられて、マラリヤは顔を赤らめていた。
そんなマラリヤに満足して、ルキアはもう一度マラリヤを抱き締める。マラリヤの感触はとても心地よくて、いつまでもこうしていたかった。
しかし、時計はすでに消灯を迎える時間を指していて、ルキアは仕方なく立ち上がる。

「ごめん、マラリヤ。もう消灯の時間だし行かなきゃ」

そう言って部屋を出ようとしたがマラリヤはしっかりと服の袖を握り締めたまま放してくれない。マラリヤを見れば、また泣き出してしまいそうなくらい表情を歪めていた。

「マラリヤ…?」
「…嫌。ルキアと離れたくない」

まるで小さな子供が駄々をこねるようにマラリヤは手を放さない。今まで見せたことのない新たな一面にルキアはマラリヤを愛しく感じてしまう。
…このままマラリヤを残せない。
そう考えたら、ふっとルキアの力が抜けていくのを感じていた。

「わかったよ。今日はマラリヤの部屋に泊まるから。マラリヤを泣かせちゃった責任は取るからね」

ルキアはからからと笑うと、マラリヤをギュッと抱き締めていく。ルキアの「責任を取る」という台詞にマラリヤはかあっと頬を紅潮させてしまった。

「…ばか」
「いいよ。マラリヤになら『ばか』って言われても」

耳元で囁くルキアの鮮やかな切り返しに、マラリヤはますます表情を赤らめてしまう。
こうなっては勝てないと諦めたようにため息を吐いて、マラリヤは顔を背けてしまった。

「…わかったわ。責任取らせるから今日は一緒に眠って」

マラリヤからの申し出に、ルキアは身体をふるふると震わせていく。思わず歓喜の声を上げそうになってしまい、気がついたところで気恥ずかしさが襲いかかってきた。

「もちろん!マラリヤがいいならなんだってするよ!
今夜はいっぱいおしゃべりしようね!」

ごまかすように口早にまくし立てて、マラリヤの小さな手を握り締める。そのことに気付かないマラリヤではあったが、ルキアから伝わる手の温もりが心地よくて黙ることにした。

「それじゃ、そろそろ寝よっか?」
「…ええ」

二人はお互いに笑い合うと、指を絡めるように手を繋ぎ、ベッドへと向かっていく。どことなく緊張した面持ちはどこか初々しく、微笑ましいものであった。
時計はもう少しで次の日を迎える時間を指しており、二人は残されたバレンタインを精一杯楽しむためベッドに潜り込んだ。

「マラリヤ、どんなおしゃべりをする?」
「…ルキアの好きなことを教えてほしいわね」

ベッドの中でも絡めた指は離さずに、二人だけの世界でルキアとマラリヤは幸せな時間を過ごしていた。
刻が過ぎるのを忘れるほど、二人は気の済むまで語り続け、恋人のように寄り添っていく。夜も深く、まどろみを覚えるまで二人は永遠を迎えるような感覚に陥っていた。









QMA8の稼働マダー?

またまたバレンタインのお話でこっそり力を溜めさせていただきました

マラ様の新たな一面を考えるのはとても楽しかったです

小ネタ(シャロマラ)

誰もいない静かな部屋でシャロンはゆっくりとお茶の時間を過ごしていた。
外はしんしんと雪が降り、冷えた空気が身体を冷やしていく。
近くに炎の魔力を纏った火鉢のようなものがあったが、それでもシャロンの身体が温まることはなかった。

『…良い茶葉を使っているのにろくに淹れ方も知らないのね』

シャロンは紅茶を淹れる度にこの言葉を思い出す。
彼女と出会った頃、親交を目的として自分の部屋に彼女を招き入れた時に言われた言葉だ。
あの時はカチンときたが、今では笑い話になる程、とても微笑ましい出来事だった。

『だったら、私に紅茶の淹れ方というものを教えてほしいですわね!』
『…構わないわ』

売り言葉に買い言葉。あの時に彼女が教えてくれなければ、こうして紅茶を飲む機会などなかったであろう。
再びシャロンは紅茶に口を付けて、あの時の出来事を思い出していく。

『…紅茶というものはあらかじめ用意しておくものじゃないの。
始まりから終わりまで楽しむためにあるものよ』

あの時、彼女は透明なティーポットを持ち出してきて、茶葉にお湯を注ぐと楽しそうに眺めていた。

『時間も計らないで上手にお茶を入れることが出来ますの?』
『…ええ、浮かんでいる茶葉が徐々に沈んでいくでしょう?』

見れば確かに一枚、また一枚と茶葉が沈んでいく様子が見てとれた。
そのまま彼女は頬を緩ませて、茶葉の沈んでいく様子を楽しそうに眺めていく。

『…こうして、茶葉がある程度沈んでいくまでの時間を楽しんでいくの。
…好きな人の顔を眺めながらね』

言われて初めてシャロンは目の前の彼女と目を合わせてしまう。
整った顔立ちの彼女にまじまじと見つめられて、シャロンはまるでリンゴのように顔を赤くしていた。
不意打ちである一言にシャロンは頭がぐるぐると混乱してしまう。
しかし、同時に胸が締め付けられる思いに捕らわれ、彼女から視線を外すことが出来なかった。

『…どうしたのかしら?』

彼女は妖艶に笑顔で微笑みかけて、さらに追い打ちをかけてきた。
当然、心臓が鳴りっぱなしのシャロンにはどうすることも出来ず、ただただ視線を泳がせておくことしか出来ない。

『あ、あ、あのですわね』

言葉にしようにも呂律も回らず言葉にもならない。
そんなシャロンの様子がおかしくて、彼女はまたクスクスと笑っていた。

『…落ち着くといいわ。私はこの時間を貴女とゆっくりとお話したいもの』

そう言われても、これ程感情が昂ったのは初めてのことで、シャロンは右往左往と慌てたままだ。
仕方なしに彼女はため息を吐いて蒸らしていた茶葉を濾していった。

『…ほら、そうこうしているうちにお茶が入ったわよ。これを飲んで落ち着くといいわ』

そう言って淹れたお茶を差し出して、彼女はゆっくりと微笑んできた。
今までと違った穏やかな笑みにシャロンは心を奪われたように呆けてしまい、我に返るまでの僅かな時間が長く感じられた。

『その、ありがとうございます。それではいただきますわ』

その時に飲んだ紅茶の味は今でも覚えている。あの時の彼女の微笑みと共に印象的でシャロンの胸の奥に深く切り刻まれていた。
それから、シャロンはことあるごとに彼女とのお茶の時間を最大の楽しみとしていた。
彼女とのお話は楽しくて、お茶が入るまでの数分間が羽が生えたように身体が、心が軽く感じられた。
しかし、それも長くは続かず時が流れた今、彼女は独りだ。
突然、ぱったりと泡のように彼女は姿を消して一度も会っていない。
理由は分からない。もしかしたら夢だったのかもしれない。
ただ、あの時の紅茶の味は覚えている。

「あの時のお茶の味はなかなか出せませんわね…」

あの時の紅茶の味を覚えている限り、再び彼女と会えるかもしれない。
そう思いながら、シャロンは毎日のように紅茶を淹れている。
なかなかあの時の紅茶の味は出せないが、彼女と再び出会った時のために再現できるようにはなっておきたい。

「………冷えてきましたわね」

室内を温めているとはいえ、張りつめた空気が部屋に入ってきて肌寒く感じてしまう。
シャロンはすでに冷えてしまったティーポットを片付けて、火鉢に込められた炎の魔法を解除するとベッドに潜り込んでいく。
身体が冷えないように幾重にも布団を重ねていたが、身体の芯から温まることはなかった。

「会いたいですわ。マラリヤさん…」

彼女の名前を口にして、シャロンはうっすらと涙を浮かべてしまう。
彼女との時間が愛しくて、恋しくて胸がギリギリと締め付けられて涙が止まらない。
外では雪が降り始め、静かな夜を埋めるように積もっていく。
このまま雪に埋もれてしまいたい。
そう思いながら、シャロンは静かに眠りについていった。









QMAから来てくださる方、お久しぶりです

久しぶりの小ネタは悲恋系になってしまいました

だってマラ様いないし…

とはいえ、QMA8での復活は嬉しい限りです

ねむひはQMA8に向けて力をためている



ちなみにこの小ネタ、美味しい紅茶の淹れ方を教えてもらって出来ました

小ネタ(シャロマラで雨の日)※ちみっこバージョン

雨がしとしとと降る中、シャロンは校舎で一人雨が止むのを待っている。
マロン先生の天気予報では今日一日はなんとか曇りで雨は降らないということだったが、生憎と外れてしまったようだ。

「まあ、こういう時もありますわね」

空を見上げながらシャロンは仕方ないとため息を吐く。
とはいえ、今日は用事があったので小さくなったマラリヤを先に帰したことが気掛かりといえば気掛かりだ。
ただでさえ別れる時は渋って言い聞かせるのに苦労したというのに、このまま帰れないというのはさすがに勘弁したい。
しかし、まだ雨は止む気配もなく、シャロンはただただ途方に暮れていた。

「まったく…、困りましたわ。これ以上マラリヤさんを待たせるのは忍びないですし」

こうなったら雨に濡れてでも帰るべきなのかと、シャロンの脳裏に思い浮かび上がるが、それはそれでマラリヤに心配されると思うとなかなか実行できない。
そんな中、向こう側からぼんやりとした影が映し出される。
雨のせいではっきりとは分からないが、こちらに近づいてくる人影だということはなんとなく分かった。

「一体誰でしょうか?」

すでに日は傾いており、下校していく人間はいても登校してくる人間はいない。
そうこうしているうちに、だんだんと人影は大きくなってくる。
うっすらとだが徐々に輪郭がはっきりとしてきて、その姿が見覚えのあることに気がついた。

「マラリヤさん!?」

確かに放課後に別れる前のマラリヤと同じ姿をしている人物が目の前にいる。
傘を差してきている辺り迎えにきてくれたのだろうか?
そんなマラリヤに嬉しく思う反面、世話をするはずの自分が世話をされていると思うとなんだか照れくさい。
そんなシャロンの胸中を知ってか知らずか、マラリヤは一直線にシャロンの下に歩み寄る。
マラリヤが近づくにつれて、シャロンの心音は次第に早く大きくなってゆく。

「あ、あの…、マラリヤさん。迎えに来てくれたんですの?」

あと一歩までマラリヤが迫り、傘をたたんできた頃に、シャロンはようやく我に返り問いかけていた。
マラリヤはというと、シャロンの言葉を肯定するようにふんわりと笑みを浮かべて、ギュッと抱きついていく。
迎えに来てくれた嬉しさとほんのわずかながらの寂しさを胸に秘めて、シャロンはマラリヤの頭を優しく撫でていった。

「ありがとうございますマラリヤさん。とても嬉しいですわ」

借りてきた猫のように気持ち良さそうに頭を撫でられながら、マラリヤは傘を差すと目一杯背伸びしてシャロンを傘の中に入れようとする。
どうやら寮までエスコートしてくれるようだが、小さくなったマラリヤではシャロンを入れることができない。
何度も何度も手を伸ばしていくが、結局シャロンの頭に届かずにマラリヤは瞳を潤ませて泣き出しそうになってしまった。

「ああ、もう、泣かないでください。ほら、これで勘弁してほしいですわ」

そう言って、シャロンはしゃがみこむとマラリヤの傘を取り上げてにこやかに微笑んでいく。
思い描いていたようにはならなかったが、マラリヤは泣いてたカラスがもう笑うように機嫌良くシャロンに抱きついていった。
シャロンの首に手を回し、力強く甘えていくマラリヤが可愛くて、シャロンは自然と表情を綻ばせてしまう。

「それでは帰りましょうか?」

そう告げてシャロンはゆっくりと立ち上がり、マラリヤの手を取ると、今もなお降り続いている雨の中を歩き始めていった。
マラリヤは嬉しそうに身を寄せていき、シャロンの手をキュッと握り締めていく。
マラリヤの小さな手から伝わるほんの小さな力の感触に、シャロンは思わず微笑ましい表情で見つめていた。
あとはただ静かに降る雨の音を心地よく感じながら、二人は学園を後にしていた。









今年もまた梅雨の季節がやってきました



相合い傘とちみっこマラ様を書きたくて考えてたらこうなっちゃいました

小ネタ(ユリマラで手紙)

拝啓、マラリヤ様

前略、お元気ですか?
初めて筆をとるので誤字脱字はご容赦ください。
貴女が学園を去ってから、もう一月が過ぎようとしています。
新しい地での学園生活はどのようにお過ごしでしょうか?
あの時はお互いに泣きじゃくりましたが、今は新しい友達もできてそれなりに楽しい生活を送っています。
でも、マラリヤのいない学園はどこか寂しく、ものたりないです。
まだ慌ただしい日々が続いてますが、落ち着いたらそちらに遊びに行こうと思ってます。
では、また会えることを楽しみにしています。

草々



「…とりあえず、ユリは元気みたいね」

一通り手紙を読み終えて、マラリヤは安心したように一息ついて、丁寧に手紙を畳んで封筒へとしまう。
マラリヤがマジックアカデミーから去って約一月ほど、今は別の学園で薬の研究に取り組んでいる。
マジックアカデミーから離れたとはいえ、数日程歩けば行ける距離なので、ユリに会いに行くのは容易い。
しかし、一度離れてしまったせいか、なかなか会えずにいた。
ひょっとしたら、会うことが怖くて出かけることを躊躇っているのかもしれない。

「…ダメね」

自分に言い聞かせるように呟いて、マラリヤはゆっくりと立ち上がる。
手紙を宝物みたいに丁重にしまって、夜風に当たろうと外へ出て星空を見上げてみれば、ユリとの思い出が次々と溢れ出てきて、思わず目に涙を浮かべていた。
こうやって、ユリとの出来事を思い出す度に繋いだ手の感触が蘇ってくる。

「…やっぱり待っているだけではダメね」

そう言ってマラリヤは部屋へと戻り、スケジュールを確認していく。
気が付けば、休みの日に丸で印を付けていつでも出掛けられるように身支度を始めていた。
ユリに会いたい。ユリとおしゃべりをしたい。ユリと手を繋ぎたい。
ただそれだけを思いながら、マラリヤは準備を重ねていく。
正直、手紙がきっかけとはいえ、ここまで積極的に動いていることに自分でも驚いている。
今までの自分なら、別れてしまえばそれっきりで二度と会うことはないと思っていた。

「…どうせなら、驚かせた方が面白いかしら?」

今までにないわくわくとした感情の昂りにふふっと微笑みながら次の休日がやってくるのをマラリヤは楽しみに待っている。





「まったく!貴女ときたら、今まで手紙を出してないなんて何を考えていますの!」

一方、こちらはマジックアカデミー。ユリがようやく手紙を出したと聞き付けて、シャロンは叱るようにユリを睨み付けていた。

「だ、だって、いざ手紙を出すとなると踏ん切りがつかなくて…」
「だってじゃありません!ユリさんに手紙の書き方を教えてほしいとおっしゃってくださったから張り切って協力致しましたのに、二週間も出さずにいるなんて考えられませんわ!」
「…ごめんなさい」

しょんぼりとしたユリを後目に、シャロンは呆れたようにため息を吐く。
叱りつけているとはいえ、目の前の少女の気持ちが分からないわけではないのだ。
自分もいざ手紙を出した時はポストの前で右往左往したものだから。

「まあいいですわ。結局は出したのですし、今度は会いに行きませんとね」
「うん!」

さっきまでのおろおろとした態度とは裏腹に、ユリは満面の笑みを浮かべて頷いていく。
そんなユリに満足したのか、シャロンは微笑んでブラシを取り出していた。

「それでは身だしなみを整えませんと。久しぶりに会うのですから、身なりはきちんとしないといけませんわ」
「え〜、別にいいよ」

ユリは頬を膨らませて不満そうに主張するが、シャロンはそんなことはお構い無しにユリの後ろを陣取っていく。

「ダメですわ。ちゃんとマラリヤさんに可愛らしい姿を見せませんと」
「それは当日でいいんじゃないの?」

シャロンに丁寧に髪を溶かされながらユリは問いかけていくが、シャロンは何を謂わんやと丁寧に諭していった。

「何を言ってるんですの?こういうことは普段の積み重ねがものを言うんですわ」
「そーなんだ」

あまりよく分かってない様子でユリは何とはなしに頷いている。
普段から大雑把なユリであるが、こうしてシャロンにお世話になっているので、文句を言わずにされるがままになっていた。
その間、マラリヤとの再会した時のことを思い浮かべて、ユリはついつい頬を緩めてしまう。

「楽しそうですわね」
「うん!」

素直に頷くユリの様子に苦笑いを浮かべながらも、シャロンは手を動かしていく。
その間もユリは楽しそうに鼻歌を鳴らしていた。

「出来ましたわ。マラリヤさんと楽しめるといいですわね」

ようやく終わったようで、シャロンは送り出すようにユリを立たせていく。

「ありがとねシャロン。シャロンも次の休み、楽しめるといいね」

ユリがまるで分かっているように言うものだから、思わずシャロンの脳裏に一人の少女がよぎっていく。

「そうさせてもらいますわ」

照れた表情をごまかすように苦笑いを浮かべると、ユリが無邪気に笑顔を向けてくるものだから、ついつい吹き出してお互いに笑い合っていた。
ちなみに休みの日にマジックアカデミーの校門でばったり出会せたりするのは内緒の話だったりする。









QMA7も無事稼働し、離ればなれになってしまった後のことを思い浮かべてみました



とは言うものの、管理人は二つの時空石しかやってませんが



マラ様復活しないかなあ…
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