全てが静まる闇の中で、少女は一人、泣いていた。
誰もいない、誰も来ない、たった一人で助けが来るのを待っている。
もう、どれくらい待っていただろうか?
長い長い夜の間、怖いもの達が来ないように物陰に身を潜めてじっと待つ。
しばらくして、こちらに向かって女の子がやって来た。
助かったと思い、少女は女の子に助けを求める。
しかし、いきなり現れた少女に驚いた女の子は全力で逃げ出していた。
少女は取り残されると思い、こちらも全力で追いかける。
そして、女の子に追いついた少女は震えた声でこう漏らしていた。
「待って、はーたん。置いてかないで…」
「…夢?」
木漏れ日の中で廿楽冴姫はゆっくりと目を覚ました。
「…イヤな夢」
小さい頃のイヤな思い出だ。かぶりを振って、辺りを見回すと、一人の女の子が心配そうに覗き込むのに気がついた。
頭にトレードマークのハートのアホ毛、愛乃はぁと。
「はぁと?」
冴姫は訝しげに声をかけると、いきなりはぁとが抱きしめてきた。
「ちょっと!?はぁと!?」
冴姫が抗議しようとすると、はぁとは安堵の表情を浮かべてしゃがみこむ。
「よかったぁ…。冴姫ちゃんが無事で」
あまりの状況に、なんのことか冴姫は少しも理解ができない。
「はぁと、どういうこと?」
冴姫の質問に、はぁとは空を見るように考える素振りを見せる。
「だって、冴姫ちゃんが苦しそうに『待って、はーたん。置いてかないで』って寝言で」
冴姫の中で、だいたいの状況は理解できた。
昼寝をしていたら、悪夢にうなされてしまい、そこをはぁとが通りかかったみたいだ。
抱きついているはぁとを安心させるために、冴姫ははぁとの頭を撫でる。
すると、はぁとは落ち着いたのか、こんなことを言ってきた。
「大丈夫だよ、冴姫ちゃん。わたしはぜったいに冴姫ちゃんから離れないから。ぜぇぇぇったいに!」
自信たっぷりにこう言ってくれる彼女を冴姫は愛しく思う。
冴姫もまた、彼女に応えるために言葉を紡ぐ。
「わかってる。私もはぁとを離したりしないわ」
昨日、ブログを書いてたら、アルカナハートの小ネタを書きたくなりました
ちなみにドラマCDを元に書いてますので気がついた方もいると思います