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胡桃

ユウトのベースがほしい



四年前
付き合ってたユウトに
そう言った


「いや、それはできない」



ユウトは
バンドでベースを
やってた
ベースが本当に好きで
本当に大事にしてることを
アタシは知っていた



ユウトの使ってる物が欲しいの
これから受験でしょ??
会えなくなったら
アタシ寂しくて死ぬから




そう言うと
ユウトは困ったみたいに笑って

「ベースはあげられないけど、このシャーペンをあげる。ドクターグリップだょ。オレが毎日使ってたやつ」



と言った


えー
ベースがいいょ
というと
「マジで無理だから」
って笑われた








渋々シャーペンで
妥協したわけだけど
アタシはその日から
そのシャーペンしか
使わなくなった


たまに
もう一本買って
筆箱に入れていたのだけど
あまり使わなくなった



使えば使うほど
銀色の塗装が剥げて
元々入っていた亀裂が
年々増していった




ユウトが受験だったときも
アタシが試験を受けるときも
二人で落書きをしたときも
漫画を描いていたときも
喧嘩したときも
別れ話に泣いたときも
復縁したときも
別れたあの日も
ずっと使い続けてた


塗装は完全に剥がれて
もはや白いシャーペンに
なっていた




別れたときも
写真やプレゼントは
捨てたものの
これだけは
捨てられなかった


結局昨日まで使い続けた





つい昨日
そのシャーペンを
壊した


床に落としたら
脆くも
一瞬にして弾けた


そもそも
昨日は
変な一日だった


無気力で
ただただ
眠たくて
何にも考えられなくて



そもそもアタシは
こんなに遠くにやってきて
この先どうするんだろう
っていう感じで…





怒られたのかな



もっとしっかりしろって




怒られたんだな
きっと



怒ってくれたんだょね??






誰か叱ってくれないかな







シャーペンは
捨てずに
残そうと思う

今日代わりを買いにいく



代わりなんて
やっぱりいないんだょな
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