眠れない
、と
もぞもぞしていたら
ゆうじクンが
ホットミルクを作ってくれた
「明日会社だろ。寝てないと辛いぞ」
ゆうじクンなりに
心配してくれたようだ
まゆの家は
砂糖入れるのか
とゆうじクンが言った
「お母が入れてくれたんだょな」
と、アタシが
答えるよりも早く
ゆうじクンが言った
作ってくれたホットミルクには
砂糖が入っていなかった
「夜だから辞めておいたょ」
と、ゆうじクンが言った
「本当に守りたい子が出来たときのために経験値を積んでおく」
と、ゆうじクンが言っていた
なるほど
その論理はよくわかる
ただし
アタシの前で言うとは
何事か
と、思ったことを
覚えてる
女の扱いに慣れている
だけど今のままでは
ゆうじクンは
本当に守りたい子を
守れはしない
こんな風に
ゆうじクンを見ているから
アタシも良くない
ゆうじクンもアタシも
相手を甘く見ている
甘く見ているからこそ
付き合っていられるのだけど
アタシもゆうじクンも
なんだかスゴい方向に
ひねくれてるのだ
後輩カップルが別れた
けろさんと(ゆうじクン)みたいになりたい
って言ってくれていたふたりだった
原因はここに書けないが
ありきたりな理由だった
ふたりの間のことに
口出し出来ないが
単にタイミングが
悪かっただけのように思う
後輩カップルが
別れたことを
別の後輩から聞いた
社会人になっても
部活と繋がっていられるのは
幸か不幸かわからない
話を聞けば聞くたびに
学生に戻りたくなる
結局仕事から
逃げたいだけかもしれないけど
お昼ご飯を作ったとき
ゆうじクンに指摘された
本人としては
アドバイスだったのかもしれない
ただ
自分としては
かなり響いた
こんな気持ちになるなら
作らない方が良かったかもしれない
とさえ思った
でもそれは
付き合い始めた頃から
わかっていたことだけに
いまさら考えても仕方のないことだった
黙ってポロポロ泣くアタシを
ゆうじクンが慰めた
女の扱いを
心得てるなぁ
と、前から思っていた
残酷だけど
実際アタシには
これくらいがちょうどいいのかもしれない
ゆうじクンの部屋に
アタシのものが増えていく
洋服や雑貨や画材道具
ゆうじクンは
何も言わない
むしろ増えたら増えたで
場所を拡張したり
入れ物を買ってくれたりする
いつかアタシが
撤退するときのことなど考えていない
本当に自分勝手な人だな
と思う反面
アタシには
これくらいがちょうどいいのかもしれない、とさえ思う
きっとゆうじクンと
別れたとしても
今のアタシは似たような人と付き合うだろう
後輩から
どうしたら彼氏が出来ますか
と、聞かれた
面食らった
欲しいと思ったものを
願ってきただけだった
居なければ居ないで
辛いけど楽だし
居たら居たで
楽しいけど辛い
ただ、それだけなのだと思う
そこに理由も何も無い