ちょっと良くないことが
立て続いた
全部
アタシの性格の
難しさがもたらしたことだと思う
レスポンスの
遅さだったり
言葉の足りなさだったり
今まで友達といるときに
感じてた要因だった
それが一気に
裏目に出て
重なった感じ
親に話したら
「だから営業なんて辞めたら良かったのに」
なんて
なんの解決にも
ならないことを言われた
腹が立って
それ以上話したくなくなった
部屋にこもって
悶々としてると
親に呼ばれた
パソコンを使ってたら
見たことないタブが
出てきたから
消してほしい、とのことだった
ゆうじクンからの
Skypeだった
そういえば
帰ってくる間にメールをしていた
少しSkypeで
話したあと
電話が来た
「どうした??」
ゆうじクンの声が
耳元で聞こえた
土日会えなかったので
懐かしい感じがした
あったこと
すべてを話した
ゆうじクンは
うん、うん
と聞いてくれた
話してるうちに
だんだん気持ちが軽くなってきた
「オレはいつもまゆの味方だょ。いつでも応援してるょ。」
ゆうじクンの声が
優しかった
ちゃんと話せるようになったょ
アタシは
強がる場面ぢゃないとこで強がるから
会社の人にも
家族にも話せないとき
ゆうじクンの存在が
一番大きいよ
信じることは
すごく怖いけどね
「ひとりで悩むのと信じるの、どっちが怖い??」
楽なのは
ひとりの方だよ
傷つかなくて済むから
だけど怖い思いしてまで
信じてみたいって
ゆうじクンと付き合ってそう思ったょ
その瞬間
ゆうじクンが
ほんの小さく
息を呑む音が聞こえた
「…やっと信じてくれるようになったね」
ゆうじクンの声が
微かに震えていた
(ゆうじクンはとても純粋で、素直で、シャイな人だと思う)
アタシは今まで
他人に対して
そういうことを
してこなかったから
これから少しずつ
練習していこうと思うょ
そう思えるのは
ゆうじクンがこうやって
Skypeで呼びかけてくれたからだし
電話掛けてきてくれたから
「オレはいつでもまゆを支えるょ。だからまゆもオレを支えてね」
そう言われて
少しまた怖くなった
そうやって
心で依存して
ゆうじクンが
いつかいなくなったとき
今日の自分を
呪うんだろう、と思うと
怖くて仕方なかった
だけど
今日から一歩一歩
練習していくって決めた
幹部研修ということで
社長
取締役
管理部長
営業部長
エンジニアマネージャー×4
新入社員×2
で合宿に行ってきた
若い女の子が
アタシしか
いなかったせいで
色んな人に
構ってもらえたのは
助かった
ただ、改めて
自分には
常識がないなぁ
と感じた
大人の人の中に
いたから
余計にそう思ったのかもしれないけど
それにしても
常識が無さ過ぎる
今はまだ新入社員だから
笑って許されるかもしれないけど
来年以降とか
歳をとって
若くなくなったら
見限られてしまうに
違いない
「頷き方や笑顔が幼い感じがした」
ゆうじクンが
アタシと
初めて話したときのことをそう言ってた
プライベートは
それでいいかもしれない
だけど
ビジネスの場では
それが命取りになるかもしれない
「女の子は愛嬌が大切だ。男が、まぁいいかと思わせられる力があるからね。それは男の営業マンには出来ないことなんだょ」
6月から直属の上司になる営業部長が
そう言っていた
ならば
愛嬌を引き立てるために常識をつけるのだろう
課題はたくさんある
「そうやって考えてるふりして逃げてるの??」
ゆうじクンが言った
言い方はさほど
厳しくないのに
言葉だけが
鋭く胸に刺さった
そんなんぢゃない
って
一言いうために
アタシは膨大な量の言葉と情報を考えた
そうしてるうちに
俯いてしまい
そのまま言葉に
ならなくなってしまう
パソコンのね…
やっとのことで
口を開いた
タブがあるでしょ
あれが無限に開いちゃうウィルスがあるでしょ??
あれみたいに
言いたいことが
溢れるのに
溢れ過ぎて言葉にならない
泣きそうになるのを
やっと堪えながら
そう言った
ゆうじクンは
ちゃんと
うん、うんと
頷いてくれた
「まゆは諦めてる感じがする。どうせ伝わらないって最初から決めつけてる。この人はこういう人だからどうせ聞いてくれない、とかさ。ちょっとその考えは自己中だょ」
ゆうじクンは
特に怒ってるわけでもなく淡々とそう言った
何にも言い返せなかった
確かに
アタシには
少しだけ人を見下すところがある
どうせ
わかってくれない
話したって
ちゃんと聞いてくれない
自分が
伝えたい通りに
伝わらないとイヤだ
そういうところがある
ゆうじクンが
アタシの頭を撫でた
ふと顔を挙げると
ゆうじクンが
やさしい顔をしていた
営業部長に
相談したことを話した
その中で
男女の脳の働きの違いについてゆうじクンは特に興味を持っていたような気がする
「まゆはさ、考え方的には男なんだょな。だけど体が女だからうまくいかないんだな」
ゆうじクンが
寂しそうに言った
アタシは
心がブクブク泡立つのを感じた
ゆうじクンは
アタシを知ってるだろうか
ゆうじクンは
アタシを好きだろうか
ゆうじクンは
アタシを知ってくれてるのだろうか
何より
アタシは
ゆうじクンに
アタシを知ってほしくて
ブクブク泡立ってる
ブクブク
ブクブク
泡立って
液体にでもなって
このまま
ゆうじクンの
体の一部に
なりたいと思った
そう
思っただけだった