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八神

最近は眠たくて
眠たくて仕方がない




きっと生理が近いのだ



それか退屈なのだ



ゆうじクンとアタシは
最近寝てばかりいる



眠って眠って
ひたすら眠る



起きない
目を覚まさない
どちらも、ずっと


ゆうじクンは
もっぱら
起きているときは
iPod touchをいじっている


アタシは構わない


だって眠たいから


アタシだって
携帯をいじりたいから




今日づけで会社が終わった


明日から中澤さんのもとで働く



同行以外は
私服で良いらしい



ラッキー
私服がよい


私服が気持ちよい



眠たい目をこすって
起きなくてはならない


アタシもゆうじクンも



クリスマスが近いのに
アタシたちは憂鬱だった

My name is over.

みんなから陰口言われてるみたい

だけど構わないょ
なんて言われてようが
アタシはアタシなんだから


ってか、気づいたら人生初の問題児だょ



そう言いながら
声が詰まって


気づいたら泣いていた


声も挙げずに泣いてるアタシを
ベッドに横たわったままのゆうじクンが撫でた


「本当に泣き虫だな、お前は」



そう言ってアタシを
ベッドに横たわらせると
抱き寄せた


鼻を鳴らせながら
なんだか懐かしいにおいに包まれて安心した




会社を辞めることにした

代わりに中澤さんの会社に行くことにした


「これは引き抜きだから」


中澤さんが
皮肉そうな笑みを浮かべた


アタシは何にも言わないまま
頷きもせず
中澤さんを真っ直ぐみつめていた



この人のことを
尊敬することは
この先一生無いだろう
と、小さく心の中で呟いた



思った通り
会社内での扱いは
雑なものになった


誰も悪くないが
強いて言うなら
中澤さんが悪いような状況になった



上野さんとも
何度かぶつかった


だけど中澤さんにする
それのような反論が
何故か上野さんには出来なかった


アタシは
上野さんが好きだった



異性としても
憧れていたし
円満そうな家庭の話を聞く度に
良い夫としての姿に
憧れていたし
アタシに指導してくれるときの
厳しい物言いと
温かな思いやりが
自分の家では遠い存在の
お父さんを思わせて
尊敬していたのと同時に甘えていた



そんな上野さんだからこそ
怒鳴りこそはしないものの
「君みたいな甘ったれた学生の物言いには聞く耳もちたかないょ」
とハッキリ言われたときのショックは言い知れないものだった


日に日にアタシへ
無関心になってゆく上野さんや
社員さんの中で
アタシは孤独で自由だった


それはそれで良かった


悲しいことが無い代わりに嬉しいことも無かった

それでも気だけは楽で
怖いような仕方ないような気分に支配されていた

ゆうじクン家に行ったとき
最初は笑い話のようにはなしていたのに
気づいたら泣いていた


本当は辛い

なんて言えなかった


だけど孤独で自由な分
そういう素直な自分を
無理やり押し込めていた


辛い
辛い
辛い


寂しい
悲しい
助けて



今だけぢゃない


アタシの人生
そういう言葉は極力押し込んできた


言っても誰も
助けになんかこないし
結局なんとかするのは
自分だけだから



もちろん泣きながら
ゆうじクンにも言わなかった


「大丈夫、まゆは仕事が出来ないんぢゃないんだょ。バイトだって長いことやってきたんだし」



ゆうじクンの肩に
顎を乗せたような
状態のまま
背中をポンポンとたたかれた


そのまま眠ってしまいたいと思った


泣くだけ泣いたアタシをあやすように
ゆうじクンが抱きしめた


輪郭のブレた何重にも重なった自分が
ひとつに戻ってゆくのがわかった
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