Honey Bee Smile

研修でイヤなことが
決まった


アタシと
同期の男子は
落ち込んだ


めんどくせ

って言い合った


だけどそれは
アタシたちが未熟で
まだまだ甘えてるからだった


とはいえ
落ち込んだので
mixiのボイスと
Twitterに書き込んだ



ゆうじクン家に
帰ってきた


ゆうじクン家と
職場はホントに近い


一時間かからずに
行くことが出来る


玄関を開けると
良い匂いが
鼻を包んだ


「夕飯出来てますょ」


優しく笑うゆうじクンにただただ圧倒された


嬉しすぎた


疲れて帰ってきて
夕飯が
出来てるなんて


スウェットに
着替えながら
アタシがそう言った


するとゆうじクンが

「そんなのオレも同じだょ。朝起きたらご飯出来てるんだから」


と言った


夕飯は
ナスと豚肉のトマトピューレ煮込み
レタスと豚肉の中華風煮込み

あとアタシが
卒業旅行で漬けた明太子

「まゆ、最近野菜食べたいのかなって思ってさ」

確かに野菜が
食べたかった

それを覚えていてくれたことが嬉しかった


レタスが美味しくて
一玉分食べた


ゆうじクンは
明太子でご飯二杯食べてた


食べ終わってから
ご飯のお釜で出来る
リンゴケーキを
作る話になった


買い物をして
いっしょに作った


お釜で焼いてる間に
髪を染めてもらった



出来上がったケーキは
生焼けで
容器から出して
オーブンにいれた



しばらくして
帰る時間が
迫ってきた頃
やっと焼けたので
少しずつ
食べていると
「生クリームがほしいな」
と、ゆうじクンが言った

時間があまりないので
ゆうじクンが
急いでホイップし始めた

出来上がった生クリームは苦かった


途中で入れたラム酒が多すぎた

いつも冷静な
ゆうじクンが
こんなミスするのは
珍しかった


ゆうじクンが
微かに落ち込んでいた



苦かったけど
作ってくれたことが
嬉しくて
止められながらも
生クリームを食べ続けていた



そうこうしてるうちに酔っ払った


帰る準備をしながら
冗談のつもりで

夜道で襲われたら
助けに来てね

と言った


ゆうじクンの顔が
笑ってなかった



「夜道明るいところを歩くんだよ」



駅までの道を
歩きながら
ゆうじクンが言った


ハッと息をのんだ


ゆうじクンは
本当に心配していた


「今日いろいろあったんでしょ??mixiみたょ。だから励ましたくて」


アタシは
何にも言えなかった


胸がいっぱいになった


アタシ
愛されてるなぁ…


ゆうじクン
幸せだょ


酔っ払いながら
言うアタシに
ゆうじクンが
微笑んだ

喧嘩した




だけど
激しい言い合いとかぢゃなくてすごく静かな喧嘩


研修が終わって
ゆうじクンが
五反田まで
迎えにきてくれた


なぜか
クリスマスにあげた
ピーコートを着ていて
いつも半袖に革ジャンを着ているゆうじクンとは
なんだか違った



いっしょに
吉祥寺まで帰って
夕飯に
ゆうじクンが行きたがってたハンバーガー屋さんにいった


ものすごく
ボリュームのある
ハンバーガーで
紙に包んで
かぶりつきたかったけど
スーツだったので
フォークとナイフで
上品に食べた


お酒も飲んだ

シーブリーズと
白ワインベースの
キール


アンチョビポテトは
本当においしかった


帰ってから
ベイリーズを飲んだ


「まゆしか飲まないんだから好きに飲んでいいからね」


ボトルを持ち上げると
だいぶ軽かった

初めて
買ってきたときから
アタシだけで
もうすぐ一本分飲んでしまうらしい



ベットで
イチャイチャしてたら
ゆうじクンが
眠たそうにしてた


眠たいなら
眠ればいいのに
中途半端に
手を出してくる


だんだん苛々してきて
アタシは一
気に不機嫌になった


アタシは
怒らないし
怒鳴らない


その代わり
どうでも良くなる

見事に
ゼロかヒャク


ベットから
出ると
一時間くらい
口もきかず
勉強をした


ゆうじクンは
ゆうじクンで
自分のやりたいことを
やっていた


何の弾みで
仲直りしたのか
よく覚えていない


確かそのうち
アタシが寝始めて
ゆうじクンが
ベットまでアタシを
運んでくれたんだと思う


アタシは子どもかな


そう言うと
ゆうじクンが


「ちょっとね」

と言った


「だけどそこもまゆの魅力なんだょ」


ゆうじクンが
アタシの頭を撫でた


もっといい子に
なるょ


「もう十分いい子だょ」

だけど

と、ゆうじクンが
続けた

「もっと言いたいこと言っていいと思う。言ってくれないとオレもわからないょ。オレがその練習台になるから始めてみようょ」


練習台なんてそんな
寂しいこと言わないで
アタシはゆうじクンが
いつでも本番のつもりだょ

「ありがと」


言いたいこと
言えたょ


「よくできました」


「オレはね、まゆが思ってるよりもまゆが好きなんだょ」


ゆうじクンが
優しい眼で言った


アタシは黙った


さっきまでのアタシは
拗ねてただけだ

自分の思い通りに
いかなくて
寂しくて
拗ねてただけ

そんなんぢゃ
なんにも変わらないのに
なんかまるで
小学生にでも
なっちゃったみたいだ


そのまま
目をつむって
ゆうじクンと
キスをした