※ 雲獄で甘め





とある、秋の休日。


日が傾き始め、窓から入ってくる風が冷たい。


「……ひばり、窓閉めろよ。」


シャツ一枚しか着ていない雲雀は、
さきほどから、冷たい風に自分の黒い髪を揺らしながら、
その寒さにも関わらず微動だにせず、
飽きることなく外を見ている。


「……ひばり、」


「………寒いの?」


「……少し。」


やっと返事が返ってきたかと思えば、それすらも上の空な言葉で、
聞いてきたくせに、窓を閉める気配など微塵も無い。



「―――――ったく、なんなんだよ…、」
そんな雲雀の様子に、頭を掻きながら、
先程から全く頭に入ってこない雑誌に、気休め程度に視線を送る。

(だって、気になんだろーが…)

いつもなら、構って欲しくないときでも構ってくるくせに、
たまにこういう冷たい態度を取られれば、誰だって気になってしまう。


一方雲雀は、
そんな獄寺を見向きもせず、ぼーっと外を眺め続けている。



「……ねぇ、」


「………んだよ、」


「紅葉、見に行こうか。」


「……は?」



いきなり振られた話題は、全く持って不可解なもので、

「紅葉、」


「コーヨー?」
(なんだそれ…祭りか?)


「………もみじが、秋になると赤くなるでしょ。それを見に行くの。
花見みたいなものだよ。」


「花見か〜、」
なんとなく理解した。
要するに、秋の花見だ。


「………今から?」

「うん。」


この寒い中、今から…?

「やだ。」


「………どうして。」


「寒い。」

当たり前だ。こういう返事が返ってくると思ってなかったのか。



「じゃぁ海。」


「は?」


「海か、紅葉かどっち。」


「どっちもヤ「じゃぁ海…」


「分かった分かった!紅葉見に行こう!!」

無理矢理過ぎんだろ!
海なんて、今から行ったら着くの夜だし、めちゃめちゃ寒いじゃねーか!


「そうだよね。隼人も行きたいよね。」


「行きたいとは言ってねぇよ。」


「早く行こう。日が沈む前に。」

全然人の話聞いてねーし。

本当なんなのこの俺様。
ダルイし、行きたくねーし、寒いしで
俺の機嫌は急降下だけど、



隣で歩くコイツの手の暖かさに絆されるなんて、


惚れた奴の負け。って、多分こういうことだよな。


紅葉

(夕暮れの空と、赤い葉が、キミの銀と合わさって、
絶対綺麗。)




end