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『10代目っ!お誕生日おめでとうございます!』
けたたましいコール音、睡眠を邪魔されたことに多少イラつきながらも電話に出ると、少し高めの弾んだ声で、俺の愛しい恋人から祝福が贈られた。
「ん…ごく、でらく、ん?」
目覚め立てでは頭も働かないし、声も出ない。
掠れた声で、相手の名前を呼ぶと、『はいっ』と元気よく返された。
言われたことを、ノロノロと思い出す。
『誕生日おめでとう』と言われた気がする。
カレンダーと時計を確認すると、今は10月14日の0時過ぎだ。
「あ、おれの…たんじょうびか…」
まだ覚醒しない頭で言うと、
『はいっ!寝ていらっしゃるとは思ったんですが、誰よりも先に言いたかったので。すみませんでした!』
と謝られる。別に良いのにそんなこと。
可愛い恋人の行動なら何だって許せる。ましてや自分の為にしてくれたことなら死ぬほど嬉しいのに。
俺がそう思っているなんて知らない彼女は、しきりに謝り、
『では、そろそろ…』
と電話を切ろうとしている。
眠い頭では、うまく伝わらないかもしれないが、俺は今、キミに凄く会いたい。
誕生日だし、少しくらい我が儘言ってやろうかな、と思っていると、電話越しに車の走行音が聞こえた。
「…獄寺くん、キミ今どこにいるの?」
眠たかった頭が一気に覚醒する。
こんな遅くに外にいるわけがない。そう思いながらも、今一瞬浮かんだ光景に、眠気も飛ぶ。
彼女ならやりかねない…全身が冷えるような感覚を、感じながら問う。
『あ、あの…えっと、10代目をお祝いしようと考えてたら…その、凄く…会いたくなってしまって…、今は10代目のお宅の前に…』
途切れ途切れに言う彼女に、予感が的中したと言わんばかりに、走って部屋を出る。
彼女はいったいいつから外にいたのか。
(危ないじゃないか!)
そう、言って叱らなければ。自分が女であるということに、ちゃんと危機感を持たせなくては。
そう思う一方で、会いたいという気持ちがお互い同じだったということに、うれしさを感じ、ゆるむ頬を引き上げるのが大変だ。
玄関をあけたら、まず怒ろう。
その後、うなだれる彼女を思いっきり抱きしめて、目一杯甘やかそう。
その後のことは…
誕生日だし、大目に見てくれるよね?
end