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※雲獄通常設定
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「……隼人、」
普段は聞きなれない、少し高めの、自身の無さそうな女の声。
「…なんだよ。」
「なんで、いるの?」
俺は今、その女の隣にいる。
女が俺の隣にいるのではなく、俺が、その女の隣にいるのだ。
「別に理由なんてねーよ。」
「うそ……骸様に、頼まれたの?」
私が今日誕生日だから…、と続ける彼女に「違う」と短く返す。
「俺が、俺の意思で、お前の側にいるんだよ。」
「……そう、」
そう言うと、また無言の時間が続く。
「なぁ、…お前、欲しい物とかねーの?」
「…うん。」
「…本当に?誕生日なんだから何か1つくらいあんだろ…?」
「…麦チョ「それはさっきやっただろ。もっと、別のもの!」
「……無い。」
「……あっ!パイナップルとか!!」
骸の髪型っぽいしな!
「……パイナップル、嫌いなの…」
「………、」
外したか…。
「…隼人、欲しいもの無いけど…1つお願いなら、ある。」
「マジか!言え!」
「…怒らない?」
「え……、たぶん怒らない。」
「……今日、隼人の1日、…ちょうだい。」
「へ?…そんなんでいーのか?」
「うん……ダメ…?」
その台詞で上目使いは禁止じゃねぇ?
「いいに、決まってんだろーが。」
「…ありがとう、」
そう言って、先ほどよりも俺に近い位置まで寄ってくる。
ありがとう。なんて違う。ただ、
「俺がいたくて、お前の隣にいるんだよ。」
本日2回目の台詞。
「うん、」
嬉しそうに笑う女は、やっぱりどこか骸の影と被るけど。
骸じゃない、今日は髑髏、お前に会いに来たんだ。
今日はお前の日。他でもない、お前を祝う日だから。
「髑髏、誕生日おめでとう。」
その言葉の返事なのか、
肩に預けられた頭に、
小さく、本当に小さく
気付かれないよう、キスを落とした。
End
応接室のソファーに座り、10代目の補修が終るのを待つ。
俺が応接室に入り浸るようになったのは、ごく最近の事だ。
雲雀と付き合うようになって、屋上で潰していた時間を応接室で共に過ごすようになった。
2人の空間だからといって、特に甘い雰囲気な訳でもないし、
ましてや会話すらほとんどしない。
部活動の、終わりの号令が聞こえ始め、あぁ10代目の補修もそろそろ終るかな。と思い、読んでいた雑誌をかばんにしまい、ソファーから立ち上がると、
「……最近寒くなってきたね。」
唐突に掛けられた言葉。
それは、今まで風紀委員の仕事をし、こちらに目すら向けなかった男からのものだ。
「冬、って感じだね。まぁ12月だからあたりまえだけど。」
「……何が言いたいんだ?」
むしろ独り言か?
「…獄寺、ちょっとおいで。」
こいこい、と作業用の机に座っている雲雀が手招きする。
「なんだよ……お前が来いよ、」
なんて言いつつ、足は雲雀に向かって歩き出す。
俺の口とは違って、素直な体だぜ。本当、
「……何、」
近くまで歩み寄ったというのに、特に何か話があるわけではないらしい。
おもむろに立ち上がると、俺の頭を撫でる。
「…本当、お前今日どうしたんだよ…」
「獄寺、季節の変わり目は変質者が多いから気をつけて帰るんだよ。」
「は?……お、おぅ。」
何を言ってるんだコイツは。俺は男だぞ。
というよりも、
「お前も女みたいな顔してるんだから気をつけろよ…、って痛ぇ!」
思いっきり殴られた。
なんだ…?
「女みたいな顔」がまずかったのか…?
「ひば…、」
「君、本当にむかつくこと言ってくれるねぇ。」
「や、…今のは…なんつーかな、アレだアレ!
ほら、お前綺麗な顔してるから…!そのっ、ぅむ!!」
「ちょっと、君黙りなよ、」
片手で頬をぐいっと潰される。
やめろ、俺の顔がすげー変形してんじゃねーか。
「ぅむむむむ!!」
「クスッ、何言ってるか全然分からないよ。」
「むむむむ!!!」
「ふふっ、煩い口は…塞いであげないとね。」
「!!!!」
ちゅっと可愛い音がしそうなくらい、小さく俺の唇と、自分の唇を合わせられる。
「なっ、なっ!!」
「…ワォ、顔、真っ赤じゃない。」
「っ、雲雀のバカ野郎ーーーーー!!!」
「ぐっ!!!」
ありえねぇありえねぇ、あの馬鹿野郎!!
き、き、き、キス…なんて、まだ数えるくらいしかしたことねーってのに…!!!
あんな不細工な顔してる俺の口にすることねーじゃんか…!!!!
……思いっきり殴ってきちまったけど…大丈夫…だよな…?
end
追記→おまけ