只今4限目、大っ嫌いな英語の授業。
いつもなら早く終われ、早く終われと時計と睨めっこするのだが、
(今日ばっかりは終わって欲しくないよ〜!)
俺がそう思うのは、
授業中にもかかわらず、どこからとも無く聞こえてくる爆発的な破壊音と、特徴的な笑い声のせい……、
+++++++
キーンコーン、
俺の願いは虚しく、本来ならばうきうきしながら迎える、放課後を示す鐘がなった。
(うううう、授業終わっちゃったよ……)
先ほどから、途切れることなく続いている破壊音と耳障りな笑い声の持ち主達は、
間違いなく俺の右腕、獄寺君の取り合いという名の殺し合いをしているわけで、
そうなると、授業が終わった獄寺君の元へ、二人まとめて襲い掛かってくる。本当迷惑な話だ、巻き込まれたくない。きっと今、俺とクラスの生徒達の心はピッタリ一致していると思う。
だけど、
「10代目っ!本日もお勤めご苦労様です、一緒に帰りましょう!」
キラキラ輝く銀色の髪を靡かせて、少し高潮した頬がピンクに染まって白い肌を際立たせている。
あああっ、そんな満面の笑みで言わないで!今まさに、この元凶を置いて帰りたいなんて思った自分を殴りたい!!
ドカドカ鳴る破壊音にも目もくれず、授業が終わればマッハで寄ってくる忠犬獄寺君に、それでもマフィアか、と思う反面、俺の頬も緩みっぱなし。
(こんな可愛い子、置いてなんて帰れない!)
「じゃぁ、帰ろっか。」
「はい!」
元凶とかさんざん邪険にした後とは思えないほど、口からはスルリと言葉が出て行った。
だって、元気に挨拶する獄寺君の可愛いこと!日々の疲れなんて一発で吹っ飛んじゃうよ、このまま攫ってしまいたいくらい。
……とにかく、あのおっかない人達が来る前に、獄寺君連れて帰らなきゃ!
あの二人に睨まれたら、俺なんかじゃ太刀打ちできないしね。(かっこ悪いけど)
「ごく、「獄寺」「隼人君」
で、出たーーーーー!!!!
「なんだ、お前ら。骸、来てたのか。」
忠犬モードoff。いつもどうりの冷めた視線で二人を一瞥。
っていうか、えぇ!?あんなに笑い声聞こえてたのに気付いてなかったの!?
お、恐ろしい子……!!
「黒耀から、わざわざ隼人君に会いに来たんですよ。」
「何言ってるの、僕に会いに来てたくせに。」
「そーだぜ。照れ隠しに、俺使うなっていつも言ってんだろ。」
「ばっ、雲雀恭弥!ち、違いますよ隼人君!」
何今の会話!雲雀さんとは思えない巧みなツンデレ!!(?)
そして疑わない獄寺君。何このカオス。
「本当、骸って雲雀のこと好きだよなー、」
「ね。僕が好きなのは獄寺なのにね。ごめんね。」
「っ貴様……!」
骸を蹴落としながら、さりげなく告白するなんて。
ツンデレ+策士……もう俺、勝てる気がしません……。
「あははっ」
そして獄寺君スルー!雲雀さんの告白スルー!?
何、笑って無かったことにしよう、みたいな雰囲気出してるの!
「ワォ、僕の告白を笑って流す気かい?」
「え?告白?誰に?」
「………」
「クハハハっ!ざまぁないですね!」
うわぁ、雲雀さん超怒ってるよ……(骸に。)怒りで身体震えちゃってるし。
でも骸は、人のこと笑えないくらい危機的状況なのを今すぐ思い出せ。獄寺君は、骸が雲雀さんのこと好きだって本当に思ってるぞ。
「もしかして、さっきの爆発音とかお前等の仕業か?」
あ、あぁやっぱり音には気付いてたんだ…、そうだよね。獄寺君、耳良いんだもんね。気付かないはずないよね。
「雲雀恭弥と、隼人君を賭けた勝負をしていましてね。」
「ふーん、」
「あれ、興味無さ気ですね。」
自分で聞いておきながら、全く聞いてない獄寺君。
こんなにアタックされてるのに、よく平気な顔してられるな。
これも普段の経験の賜物なのか!?確かにいつも女子に囲まれてるけど!
俺だったら、こんな顔だけ見たらカッコイイ二人(怖いけど)に言い寄られたら、性別とか通り越して、少しはトキメいちゃいそうなのに!
「獄寺は僕が頂くよ。」
「ふざけないで下さい。僕が頂きます。」
「雲雀を?」
「っ、ち・が・い・ま・す!!」
興味無さそうだったのに、そーゆう合いの手だけはしっかり入れるのか……
俺、骸に対して思い入れないけど、ちょっと不憫だ。
「ね、10代目どう思います?」
ってええぇ?!俺に振っちゃうの?!
「な、なにが…」
「俺らを巻き込まないで欲しいっすよね!」
何で他人事なんだ……
むしろ俺を巻き込まないでください……あああ二人がものすごい顔で睨んでる…
「そうだよ沢田、言ってやって(上手いこと言ってコイツを蹴落としな。)」
「クフフ、(下手なこと言ったら…分かってますよね?)」
…二人の口にしてない言葉が手に取るように分かるよ。
俺がどんなに上手く言ったって片方は完全に敵に回してしまうこの状況。
しかし下手をすれば二人とも敵に回してしまう。
(ど、ど〜したらいいんだよ〜!)
「言ってやってください10代目っ!」
獄寺君から飛び出した死刑宣告、
付け加えるわキラー☆ウインクと力強く立った親指。
(あああ、可愛い獄寺君!)
こんな可愛いところ見たら、そりゃ二人だってメロメロにもなるよ!
この間にも、骸と雲雀さんはお互いの足を踏みつけて牽制しあってる……2人のイライラが更に増しちゃってるよ…
と、とにかく、獄寺君の期待に応えなきゃ…!!
(冴え渡れ、俺の超直感!!!!)
「……………(閃いた。)今回はマフィアらしく、一番強い者が場を収める、っていうのでどうですか?」
「へぇ、」
「ほぉ、」
「流石ッス10代目!俺は賛成です!!」
「なかなか良い案出すじゃない。」
「えぇ、感心しましたよ沢田綱吉。」
え、あれ?2人とも納得してるし喜んでる!!
ありがとう超直感!!!
「これど堂々と(獄寺の前で、六道と沢田を)咬み殺せるね。」
「やっと(雲雀恭弥と沢田綱吉を)叩きのめすことができるのですね。」
……あれ?俺も含まれてる…?そんなつもりじゃ……(いや、獄寺君は欲しいんだけどさ。)
でもあの2人な勝てる気とか全くしないから、俺は除外…
「俺はせっかくなんで、10代目の勇士を見ておきますね!」
えぇぇぇ!!!獄寺君まで俺カウントしちゃってるの!?
「では、
「じゃ、
「「遠慮なく。」」
「ちょ、待ってください!は、話を…!!!!」
前言撤回!やっぱ、置いて帰ればよかった!!
巻き込み注意!
(あの3人楽しそうに戦ってるし、俺、帰ってもいーかな?)
end