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真っ赤なタイトドレスに綺麗に結い上げられた銀の髪。
ドレスに合わせた白いハイヒールとボレロの上着。
美しく括れる腰に、ドレスの裾から覗く引き締まった足首。結い上げることによって露出された項は男を惑わすフェロモンを垂れ流す。
見る者を魅了するほど完璧なそのスタイルと、真っ白な肌。今着られている服が、その者の為に生まれてきたかのような美しさに、会場に集まっている何百という屈強な男達が息を潜めて見つめている。
『おいおい、どこの女だよ…』
『随分な上玉じゃねぇか。』
声を潜めて囁きあう男達に目もくれず、
背筋を伸ばし、前を見据える強い瞳。
『たまんねぇな、ありゃ。』
『後で声でも掛けてみるか。』
会場の男達全員からの熱くイヤラシイ視線を受け、いい加減我慢の限界…!というところで、突如真後ろから肩を叩かれる。
「おい。」
「っ…!!!」
人の気配には敏感なはずなのにこの野郎…!!!!
気配もなく近寄ってきた男に、気安く声掛けんじゃねぇという思い半分と不埒な視線の苛々(八つ当たり)半分で額の青筋をそのままに勢いよく振り向く。
「っ気安く…!!」
「ぅおっ!」
「なっ、山本……!!」
「……………やっぱ獄寺だよな……どうしちまったんだその格好…、」
「……うるせぇ」
そう、女性……のような格好をして、先ほどから男達の視線を総なめにしている犯人は他でもない。獄寺だ。
「お前…なんで女装なんかしてんだよ。……趣味か?」
「殺すぞ。」
男達がコソコソと何か話してるのを聞いて、一目見てみようとその視線の渦中にいる人物に目を向けたところ、良く見知った銀髪がいるのを見つけ、女物のドレスを着ていたから人違いか?とは思ったものの、どう見ても横顔が本人そのものだったので声を掛けてみたのだが……、案の定本人だ。
獄寺自身に女装趣味が無いなんてことは一応分かっているつもりだが、じゃあこの状況をどう説明しろって言うんだよ。趣味以外だったら後は……
「……10代目の御付役の女性を演じろってリボーンさんに言われたんだよ。」
おぉ、やっぱりそっちか。
っていうか本当馬鹿なのなコイツ。そんな意味不明な任務普通に断ればいいのに。
「でもよー良い大人が女装って無理あんじゃん?」
足が見えないように長いドレスにしたり、肩や腕の筋肉の付き方で男だってバレないように上着着たり、
少しでも女に見えるように髪縛ったり化粧も姉貴にしてもらったんだけど。背だってあるし、声も低いしやっぱ男だって分かっちまう?
と、不安そうに見てくるこの目!
普段から長いなーとは思っていた睫毛とかがクルンってカールしてて普通に可愛いの!
ビアンキ姉さんこれはやりすぎでしょ!!
「なーどうなわけ?俺、失格?」
やめてやめてそんな目で見ないで、俺、お前が男だって分かってるのに惚れちゃうって!既に惚れてるけど!!
でも駄目駄目、
獄寺は雲雀の雲雀の雲雀の雲雀の………あ、やばいへこんで来た…。
ちくしょう獄寺め…こんな可愛い姿、もう10年もお前に片想いしてる奴に見せるなんて自覚が足りないのな!小僧ナイス!!
ホント、正直言っちゃえばそこらへんにいる女よりよっぽど可愛いよ。
だいたいから俺、スレンダーな女が好みだから、今のお前が本当に女だったらストライクど真ん中なんだって。
……ていうかお前、俺が女に見えるって言ったら烈火のごとく怒るだろう。
「なー、どうなんだよ。」
「…や、見えなくは無いよ。流石ビアンキ姉さんなのなー。
でもやっぱ声とか聞くと男だなーって感じがするからあんま人に聞こえるように喋んない方が良いと思うぜ。」
「そうか。……何か複雑だけどそんなもんか。」
どうやら獄寺は山本のその答えに満足したらしい。
…正直よく分からん。まぁこの場で怒られるのも嫌なので黙っておく。
「っつーか此処にいるの山本だけ?」
「あぁ。クロームは他の任務で、笹川先輩はルッスーリアと旅行中。」
「おぉ、クローム一人で行ったのか?危なくねぇ?」
「いや、確かヴァリアーが付いてたはず……えーと確か、……ぁ、そうそうレヴィって奴と。」
「ちょっ、それ余計危ないって!」
確かにレヴィはクロームにベタ惚れの傾向がある。2人きりにするのはクロームの貞操とかが危ないような気もするが……
まぁ、もしヤられそうになったら男の急所でも容赦なく攻撃できる度胸がクロームにはあるから大丈夫だろう。
「それに敵にもし殺られそうになっても、アイツなら命張ってでも守ってくれるだろ。」
「…お前、そういうことサラッと言うような奴だっけ…?」
あまりの腹黒さに眩暈を覚えるが、とりあえず今は女の格好をしているんだということを思い出し、ついついド突いてしまいそうになる自分をギリギリで押しとどめる。
「あと骸はバレンタイン前だから忙しいとか言って欠席で、雲雀は群れると蕁麻疹がでるから行かないって言ってたのな。」
「あいつら……、」
骸に限っては只の欲丸出し。雲雀の蕁麻疹も真っ赤な嘘だ。
「あいつら…帰ったらお仕置きしてやる…!」
本来ならば、少しエロさを秘めた羨ましくなるような台詞なはずなのに、
壮絶なほど怒りを込めた一言に、怒られていない俺までも凄んでしまう。
背後に真っ赤な嵐の炎が見え隠れする程のその怒りに、周りの人間が気付いてしまわないように、自分の身体で全ての殺気を受け止める。
獄寺の今の気持ちを独り占めしてると思ったら気持ち良いはずなのに、やっぱ美人が怒ると怖いのなー…、
俺の自慢の息子も縮み上がってるし。
「ちくしょう、俺がこんな目にあってるっていうのに…」
「まぁまぁ、落ち着けよ。」
むしろ俺からしてみれば、こんな可愛い獄寺を見れなくて本当あいつ等不憫なのなー!特に雲雀!
あーぁ、それにしてもツナも、獄寺にここまでさせておいて、笹川とハルに食事に誘われてどうしても断れないからとか言って今日来れなくなったなんて……なんで俺に伝言あずけるかなぁ。
女装までさせといて、言えるわけないのな!!きっと俺、殺されちゃう!(俺は何も悪くないけど。)
あーでも、先延ばしにするより今言っちゃった方が良いか…?
でも、言ったら獄寺帰るよなぁ…これ、ディーノさん主催のパーティーだから、最低2人くらいは出席してないと不味いと思うんだけど…。
………あ、そうだ。
「じゃ、まぁツナが来るまで俺がエスコートしてやるのな!」
「は?いらねぇよ。」
うん、そう言われるとは思ってたのなー。
でも、俺だってここまでいろいろ押し付けられて、手ぶらで帰るなんて勿体無いことできないのなー。
だから、ちょっと獄寺と楽しませてもらうのな!
「獄寺、一人で歩いててそこらへんの男に声掛けられてみろ、『俺は男だ!』ってブチ切れるだろ。」
「う……、」
「お前が騒ぎでも起こしたら、ディーノさんやツナにだって迷惑かかるんだぜ?」
「……」
「俺といれば声掛けられることもないし……ね、どう?」
「……10代目が来るまでだからな。」
「りょーかいっ!」
渋々だけど了承してくれた獄寺の括れた腰に手を掛けて、エスコートするように足を進める。
若干不満そうな視線を送ってきたけどそれは無視。だって恋人みたいに振舞ってたほうが周りへの牽制にもなるしな。
どうやらその気持ちが伝わったらしく、獄寺には珍しいほどなんの抵抗もしてこない。
しおらしい獄寺に気を良くしつつ、面倒な用事を頼まれたお駄賃だと、理由をつけて、
今だけ恋人気分、味あわせてもらおうかな。
とりあえずこの緩んだ頬をどうにかしないと、他の連中に舐められそうだから……って、全然引きしまんねぇこの頬!!
Special☆Day
(あー、でも帰ったら雲雀に殺されるだろうなー、俺)
end