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震える唇(D獄)

※D獄  ディーノさん相当酷いです注意!マジで注意!!



















だだっぴろい獄寺の部屋。
自分のテリトリーに人を入れたがらない獄寺は、きっとこの部屋に他の誰かやツナでさえもいれたことが無いだろう。


そんな部屋に、何故、俺がいるか…?
そんなの簡単なこと。
ちょっと脅して、入れてもらった。ただそれだけ。



「へぇ〜何も無い部屋だなぁ……お前らしい。」


身体の関係があるこの俺に、
部屋に入れろと言われたら、お前は黙って許すしかない。

……だって、俺との関係を、お前の愛しいご主人様に知られたら、嫌だもんなぁ?



「自分の部屋なのに何でそんな隅にいるんだよ。こっち来いよ。」

唯一部屋の中央にあるソファーで寛ぎながら、玄関に佇んだまま動かない部屋の主に視線を向ける。


俺の言葉に返事もせず、従うことも無い。


嫌そうにするその眉間の皺も、拒むように縮こまっているその身体も全部俺のモノだったはずなのに、いつからお前は俺を拒むようになったんだ。




震える唇




「ほら、こっち来いって言ってんだろ。」

呼んでも来ないその影に苛々しつつ、強めに言う。



「っ、―――――……。」

何か言いたそうに開いた口は、結局音を発することはなく空気を薄く吐き出すだけで、
また、苦痛そうに閉じられた。

「…1回で言うこと聞けよ。何度も言わせるな。」

嫌なら嫌だと、一言言えばいいものを……

結局何も言わずに、俺の言うことを一々聞く。
そんなにツナに俺たちのことがバレるのが怖いのかよ。
もし誰かに俺と同じことをされたら、お前は甘んじてそれを受け止めるのか。

(―――苛々する。)


少しは自我でも見せて抵抗してくれれば良いものを…、

「何突っ立ってんだよ、さっさと脱げ。」



ほらまた、そうやって……


一瞬噛締めた唇を解いて、
――――お前は易々と俺に身体を委ねるんだ。











++++++++








「んっ、ぅ……ぁっ、」

「ははっ、自分で弄ってても声出るのかよ。」

ソファーに座るディーノの膝の上に跨り、自分で後ろを解す獄寺。
適当にキスをし、前を寛げ獄寺の熱を高ぶるだけ高めたディーノが、熱で頭が回らなくなってきた獄寺に掛けたのは「このまま挿れられたくなかったら自分で解せ。」というなんとも冷たい一言。


普段の強気な獄寺ならば、その場でディーノに反抗するのであろうが、何せ今は脅されている身。なんの反抗も無く自ら進んで後ろに指を這わす。


「んんっ!…ふ、ぁっ、ぁぁっ!」

二本、三本と増やされた指は獄寺のナカを十分に解きほぐしてゆく。
自分のイイ場所は己が一番良く知っているだけあり、初めは慣らす程度だったその行為もだんだんと自らを高めるモノへと変わっていく。

「ぁっ、んぅっ」

「ホント、淫乱だなお前。」

自分の上で乱れる獄寺に薄く笑い、

「手伝ってやるよ。」

抜き差ししている獄寺の腕を徐に掴み、その速度を一層激しく強いものへと変える。

「ぇ、やっ!―――ッ、!」

「はは、えろっ…」

「ひ、ィ…っ!ァアッ!!」


急な刺激に耐え切れなかったのだろう、獄寺の痛いほどに立ち上がった自身から、白い液体が数滴飛び散った。

「ぅあッ、ぁぁあッ!!」

「……、」

完全にイってしまった訳ではないらしく、まだ立っているモノからは止めどなく先走りが垂れている。


「あぁぁぁッ!も、ゃめ…!」

ガクガクと震える膝はもう、自分の体重を支えることが出来ず上半身ごと俺に覆いかぶさるように倒れこんできた。

「……チッ、」

服が、汚れる。
脱いでなかったジャケットや、どこかのマフィアからもらったネクタイに獄寺の体液が付いてしまう。

(着替えもってきてねぇし、面倒だな…)


自力で立たせるか…。そう思ったディーノの肩口が、弱々しく置かれた手に掴まれる。

「おい、ごくで…」

「でぃ、の……!」

真っ赤に蒸気した頬にで、濡れた瞳に見つめ上げられてしまえばディーノのナケナシの理性は早くも吹き飛んだ。

(ま、いいかジャケットくらい。)

ここまで煽ってくれたお礼だ、と言わんばかりに早急に獄寺の指を引き抜く。

「んッ!んぁ、……はぁっ、」

抜けていく指にぶるりと身体を震わせた獄寺が、するすると自らディーノの自身の上にピッタリと穴を寄せ、ディーノの首へ腕を回し甘えるように抱きついた。


「……どこで覚えてきたんだよ、このアホ。」

「―――?でぃ、」

「もう黙っとけ。」

ぐっと獄寺の腰を強く掴むと、そのまま一気に突き上げる。

「―――ッ!!!!」

「く、ぅ…!」

獄寺の声にならない悲鳴が聞こえる。
喉の奥でヒュウヒュウと息が絡まる音。

「ひ、ぃあああッ!!あああッ、ぅああ!!」

「っ、獄寺!」

ガツガツと無遠慮に突き上げるディーノの行為に、苦痛を訴える訳でもなく、やめてくれと懇願もせず、ただただその行為を受け入れている。


(どうして何も言わないんだ。どうして抵抗しないんだ。)


こんなに無理矢理犯されているような状況なのに、獄寺は否定の言葉を口にしない。
それどころか、獄寺の身体は嫌がっていない。むしろ男を受け入れることに慣れている。


「ぅああっ!!」


(どうして…、)

少し前までのお前なら、どんな時だって強気な姿勢を崩さず、
最終的には受け入れてくれるものの、組み敷かれることに死ぬ気で反発してきたというのに。


「ひ、ぁぁあッ!ん、んああッ!!」


誰に、ここまで調教された。
あんな風に自分でシたり、甘えたり、物欲しそうな顔なんて俺は一切教えていないのに。


「ち、くしょう…!!」

これが醜い嫉妬だっていうのは分かっている。
獄寺にあんなに怯えた顔させているのも自分自身だと気付いている。



(どうして…!)



ツナか山本か、それとも恭弥か。
お前はどうせ、ツナの名前さえ出せば、今日みたいに順応に男の相手だってなんだってするんだろう。


「んあぁッ!でぃー、の…!」

「っ、お前は、俺だけのモノだっただろ…!!!」

「んぁっ、へ?な、なに…ッ!」

「俺以外の……、他に誰と寝てんだよ獄寺っ!」

「んあぁッ!…何言っ、て……!っちが、――――ッ!」


今はもう、否定の言葉なんて要らない。


獄寺の言葉を聞かないように
アイツの震える唇に、齧り付くようにキスをした。


end



幼く青い心内

 

10代目に言われ、重い足を引きずりながら雲雀がいるであろう応接室に向かう。

行きたくない。
着いてしまったら雲雀に別れを告げなくてはいけない。
……言いたくない。


10代目が言うとおり、俺はボスである10代目以外の男を選んでしまった。
アイツの…雲雀の強さや、
俺にはない、誰にも媚びないその真っ直ぐな瞳に、
知らず知らずの内に惹かれ、気付いたときには好きになっていた。……恋愛対象として。


10代目が好きなのは変わらない。
誰よりも大切で、俺の中で一番なのは今でも、これからもずっと10代目だけだ。


だから、雲雀へのこの気持ちも気付かないフリして、そのまま心の奥底にでも閉じ込めてしまおうと思っていた。
……誰か他の女じゃなく、10代目以外の男を選ぶということは、自分自身でもボスへの裏切りになると思っていたから。


「ひ、ばり……」

10代目優先で、何よりも10代目を大切にしている。雲雀の事は好きだけど、お前を1番にしてやることはできない。
初め雲雀が俺に告白してくれたとき、はっきりそう言って断った。

雲雀が俺の事を好きだと言ってくれた時は、本当に嬉しかったし、俺も同じ気持ちなんだと言いたかった。
それでも、そう言ってしまえば、10代目以外の男を選んだことになる。10代目に後ろめたい気持ちで雲雀と付き合うことなんて出来ない。そう思った。

それでも、そんな俺を受け入れて、
俺の奥底に閉まった気持ちごと引き上げて、暖かく優しく、俺を包み込んでくれた。

10代目とは違う、俺だけに向けられる優しさや愛情。
もう、雲雀なしじゃ生きられない。それくらい俺は、雲雀が好きだった。


……だからこそ、手放したくない。手放せない。

「獄寺、どうしたの……?」

普段は素っ気無いくせに、
俺の変化に敏感で、助けて欲しいときに手を差し伸べてくれるコイツを手放したくない。傍にいたい。


だけど…、

「ごめ、ん……雲雀、」

それでもやっぱり、俺の1番は10代目なんだ。
あの御方を失くしたら、俺の存在価値なんて無い。ずっと、お傍にいると決めたのだから。

「…………別、れて。」

「………」

「ごめん雲雀……、」

10代目の命令に、逆らえる筈なんて、無い。

 

 

応接室に掛かった時計の針の音が響く。
無言で俺を見つめる雲雀の視線が痛い。

射抜くように見つめられ、緊張で息が出来ない。

(……苦しい)

自分でついた嘘が苦しいのか、それとも雲雀の殺気立った視線が苦しいのか、
もう、どちらだかすら分からない。

握り締めた掌は大量の汗を掻いている。

(雲雀が、怖ぇ……)

こんな、敵に向けるような眼差しを受けたのは初めて会ったとき以来だ。
ほんの数瞬前までは優しい視線をくれていたからか、先ほどまでのギャップが有り過ぎて、その冷たい視線に身体が自然と拒否反応を起こしている。

辛い。雲雀にこんな視線を向けられるなんて。
……好きな奴に、こんな蔑んだ目で見られるなんて。


「……へぇ、僕と別れたいの。」

やっと雲雀から紡がれた言葉は、嘘みたいに冷たくて、
別れたくないと何度も叫ぶ俺の頭に、真水を掛けられたかのような錯覚に陥る。

「……」

「僕と、別れたいのかって聞いてるんだ。」

「あぁ。」

そんな冷たい雲雀の言葉を聴いて尚、別れたくないと思ってしまう。
それでも俺の口は冷静で、心はこんなに掻き乱れているのに、なんでも無い事の様に肯定を吐き出す。
……本当、素直じゃない。

「……そう、じゃあ別れてあげるよ。」

止めて、欲しかった。
雲雀が、他人に縋るような真似なんてしないことは重々分かっているつもりだったけれど、これだけアッサリ承諾されてしまうと、それはそれで悲しい。

……元はと言えば俺が悪いのだから、贅沢な話なんだけれど。

それでも、止めて欲しかった。

「正直、僕もキミには飽き飽きしてたんだ。丁度良かったよ。」

こんな風に言われるだなんて、想像すらしていなかった。

「最初は男の相手も面白そうだから良いかな、とか思ってたけど、想像以上に面倒だった。……あぁ、男の相手が面倒だったんじゃなくて、キミの相手がっていう意味ね。」


雲雀はいつだって俺に優しかったから、少なくとも雲雀も俺のことは好いてくれているんだと思っていた。

「ホント…少し優しくしただけで、コロっと堕ちてくれるんだもんね。単純過ぎるよ。」

遊ばれているだなんて、考えたこと、なかった。

「ま、僕から別れを切り出すのも面倒だったから黙っていたけど……、手間が省けた。」

好きな奴に、ここまで言われるのって………想像以上にキツい、な。

「早く出て行けよ。」

「……あぁ」

泣くな。人に騙されたり、嫌われたりするのなんて、慣れてるだろ。

マフィアである自分が、恋人だと思っていた男に騙されていたくらいで、取り乱すんじゃない。
頭では分かっている。雲雀の言葉も理解しているのに……。

(感情が、ついてこねぇ…)

好きだった男に裏切られ、敬愛する君主には見放され、

(もう、どうしたらいいんだ…)


自分の中でもっとも大切な2人に一度に突き放された。

もう、どっちが上で、どっちが下かも分からない。
頭が、ぐらぐらする。

「……い、ままで…悪かったな、」

霞む視界を無理矢理地面に向け、元来た扉へ向かおうとする。
上手く足が回らない。吐き気がする。


それでも自分がこんな情け無い状態だなんて雲雀に知られたくなくて、自分のもてる神経を足に総動員させて扉へ向かう。

…だから、気付かなかった。背後に雲雀が近づいてきていたことなんて。


ぐるぐる回る視界の中で、やっとのことで辿り着いた扉に掛けた俺の手に添えられたのは、
いつもと同じ、白くて暖かい、雲雀の手だった。

 

 

「……ひば、」

「……嘘だよごめん。」

ドアノブを回そうとした俺の手を掴み、後ろから抱きしめられる。

「な、に…」

「全部嘘だよ。僕が、キミの事好きじゃなくなる筈ないじゃない。」

全部……?

「どうせ沢田に何か言われたんだろ。……こうなることは分かっていたとはいえ、アイツの言うことなら何でも聞くってところが気に入らなくて、少し意地悪しちゃった。
……それにしても言い過ぎた、ごめん。」

「……俺のこと、嫌いじゃないの…?」

「好きだ。」

「……」

「獄寺?」

「っ、」

「……泣かないで、」

優しく抱きとめられて、雲雀に嫌われていなかったことに心底安堵する自分がいる。
……俺、やっぱり雲雀が好きだ。
別れなくちゃいけないのに、この手を振り解くことなんて出来ない。

こんなに身勝手で我侭で面倒臭い俺を、此処まで優しく包み込んでくれる奴なんて、
雲雀以外いないから。

「……俺、別れたく、ないっ…!」

「うん。」

雲雀の方を向けば、いつもと同じ優しい笑顔で、俺を抱きしめてくれる。
俺と身長なんて然程変わらないくせに、どうしてこうも簡単に腕の中に納まってしまうのかと何度も疑問に思って、疎ましく思っていた。
…今はそれが暖かい。

「でも…、」

「沢田だろう?アイツのことなら僕に、「獄寺!!!!」


そんな甘い雰囲気をぶち壊すかのように、応接室の扉を蹴り飛ばして入ってきた山本。

「なっ、山本…!?」

「ツナから聞いた、んだけど…」

「っ、」

「さっきの話、冗談だってさ。」

「え?」

冗談?

「お前等が仲良くしてるのみて、ちょっとヤキモチやいちゃっただけみてぇなのな!」

そんなワケないだろ…。あんな真剣な顔して、10代目はご冗談を言うような御方じゃない。

「やま、」

「やっぱり、そんなところだろうと思ったよ。」

「ツナも子供だよな!獄寺が雲雀に取られちまうんじゃないかって不安になって、あんなこと言っちまったって、教室ですげー落ち込んでたから、俺、慌てて飛んできたのな!」

「え、……そ、うなのか…?」

「どう考えてもそうだろ。気にしすぎだよ獄寺。」

「……雲雀がそう言うなら…、」

本当にそうだったのか…?
俺にはそうは思えなかったんだけど……、でも雲雀も山本も同じことを言うって事はそうなのだろうか。

「…まぁ2人とも座りなよ。紅茶でも入れてあげるよ。」

「マジか!珍しいな雲雀が持て成してくれるとか!」

「…獄寺がいるからだ。キミは飲んだらさっさと帰れ。」

「本当、獄寺以外には冷たいのなー!」

「うるさい。」

普段どおりの2人に、やはり自分の考え過ぎだったのかもしれない。

「ほら、獄寺飲みな。」

「さんきゅ、」

「雲雀、俺ミルク入れて!」

「牧場行け。」

「え、ちょ、そこから!?」

2人のやり取りを聞きながら、落ちていく瞼に逆らえず、応接室のソファーに身を沈めながら、
俺は意識を手放した。

 




++++++++




「ん?あれ、獄寺寝ちゃった?」

「……そうみたいだね。」

さっきから眠そうだったから、もうそろそろ効いてくるころだとは思っていたけど、結構早く回ったようだ。

「…泣いてたから?」

「薬だよ。」

「……用意周到だなぁ。」

もともよは獄寺に使う予定で持っていたワケじゃないけど…、
まぁいいや。寝かしつけないと、沢田に話付けに行けないし。

「そんなことより山本武、獄寺の泣き顔は今すぐ忘れろ。」

「えー、そんな勿体無いことできないのなー!」

「……全記憶ごと消去するのとどっちがいい?」

「…善処させて頂きます。」

こんな憎まれ口を叩いてはいるけれど、正直今回の件は、山本武が応接室に乗り込んできてくれなかったら、もっと拗れていただろう。
僕と沢田で話をつけるならまだしも、そこに獄寺が加わると厄介だ。

完全に沢田のペースになってしまうだろう。

だから、

「今回は、助かったよ。ありがとう。」

「おう。ま、獄寺のためだからな!」

恋敵に礼を言うなんて癪だけど、獄寺の為だ。仕方ない。

薬でよく眠り、寒そうに丸まっている獄寺に、自分の学ランを掛けてやる。


「……行くのか?ツナの所。」

「あぁ。」

「そっか。」

 


「キミもどうせ付いて来るんだろ?」

「まぁな。此処に居たら獄寺に手ぇ出しちまいそうだし。」

「……ふん、」

「雲雀、」

「……なんだ、」

「今回のは『貸し』だからな。」

「分かってる。」

抜け目の無い奴。
でも、今回だけは感謝してやることにするよ。

 




+++++++++

「あなたが来ると思っていましたよ。」

ここに来るだろうと思って待っていた教室に現れたのは、案の定獄寺君ではなく雲雀さん。

「そう。キミ、獄寺にあんなことしといて只で済むと思ってるの?」

「…思ってませんよ。泣かせちゃいましたからね。
……それで、獄寺君は?」

「寝てる。」

そう言うなり、俺から顔を逸らす雲雀さん。
…薬でも使って眠らせてきたかな?それとも、泣きつかれて眠ったか。

それにこの様子だと…、

「上手く丸め込んできたみたいですねぇ。山本が手伝ったのかな?」

2人の仲が拗れてたら、もう既に俺、人間の原型を留めておけないくらい殴られてるでしょうからね。
まだ、手を出してこないところを見ると、そこまで頭に血が上っていないとみた。


「……そうだよ。
っていうかキミ、獄寺にあんなこと言うなんてどういうつもり?」

何のつもりって、そんなの1つしかないでしょうに。
『好きだから』ですよ雲雀さん。誰よりも好きで傍にいたいから。あなたと同じ理由です。

「…ただ、あなたから取り返したかっただけですよ。」

俺の本心を言える筈も無く、曖昧に誤魔化しておく。

「……そう。そういうことにしといてあげるよ。」

さも面倒臭いように息を吐くその様子に、この人には俺の心の中なんてバレバレなんだろうなー、となんとなくそんな気がした。

「とにかく、今回のところは見逃してあげるけど次は無いから。」

「…へ?」

「詳細は山本武に聞け。」

…どういうことだ?普通に殴られると思ってたのに。

「……キミにトンファーでつけた痣ができると、後々面倒なんだ。
今回は…、隼人の唇がまだ切れてなかったから、許してやる。」

「…?」

まだ、殴らない理由が分からない。
…それにしても、唇切れなかったんだ。あんなに強く噛んでたのに。

「…ここまでされて手を出さないなんて、優しいですね雲雀さん。」

「二度目は無い。」

それだけ言うと、もう興味がないというかのように教室から出て行った。


「……山本、どういうこと?」

「ツナのさっきの話は冗談だってことで、雲雀と2人で無理矢理納得させてきた。」

「なるほど……だから俺に痣ができれば、冗談で言った筈の俺をどうして制裁したんだ。ってことになるからってワケね。」

「そーいうこと。」

じゃぁアレだ。
俺はまた明日から、今日のことは何も無かったかのように過ごさないといけないし、
また普段どおり、元気に笑う獄寺君の傍にいられるんだ。雲雀さんのモノだけど。

「はぁ〜、もう何でこんなことしちゃったんだろう俺。」

損得なんて考えなかった。
だからあんな酷い態度も取れたし、酷いことも言えた。
全部終わって考え直せば、あんなこと言わずに、獄寺君に一言「おめでとう」って言っておけばこんなことにならずに済んだんだ。
それにそれが一番いい選択だった。

「そんだけ獄寺のコト好きだったってことだろ。」

「……違うよ。」

本当はその通りだけど…認めたくない。
山本には、この気持ちは知られたくない。

これから先、ずっとこの気持ちを隠して、ボスと部下の関係を保っていかなきゃいけないんだ。
……言えるはず無い。

「自分のオモチャを取られた子供みたいな気持ちになっただけ。」

俺の精一杯の強がりなんだけどね。

「へぇ、……俺にはそうとは思えなかったけどな。」

「……山本の性格も大概悪いよね。」

「お互い様、だろ?」


ニヤリと笑った山本の顔は、今までの意地悪そうな笑みと違って、いつもどおりの暖かい山本の笑顔だった。


「ははっ……俺も早く彼女つくろ…、」

「獄寺のこと諦めきれるまでは無理じゃねぇ?」

「…山本。」

やっぱりコイツ、性格悪いや。


とにかく明日獄寺君に会ったら、今日のことを謝ろう。
癪だけど、山本や雲雀さんが合わせてくれた作り話に乗ってやろう。

いつか、俺に新しく好きな人ができたときに、獄寺君には目一杯お祝いしてあげよう。


「山本…、」

「例え雲雀が恋人でも、獄寺の一番はお前だぜ、ツナ。」

「……うん、」


そんなこと、俺が一番分かっていた筈なのに、忘れてたよ。

 


キミの一番で永遠にいられるように、
この気持ちは、獄寺君にはバレないように、心の奥底にしまっておこう。

 

 

 

End

 

more...!

幼く青い心内

獄寺君に恋人が出来た。
俺のことが一番好きで、一番大切で、どんな時も俺が一番だったキミに、他の一番が出来てしまった。

今までもこれからも、俺がキミの永遠の一番だと信じて疑わなかった。
だから、獄寺君に恋人が出来たと聞いたとき、
素直に喜んであげられなかったし、相手が誰か聞く余裕すらなかった。


それに、その場で相手の名前を聞いてしまったら嫉妬でその女をどうにかしてしまいそうな衝動に駆られてしまったかもしれない。
だから未だに、誰が相手か知らないし、タイミングを逃してしまって聞けていない。


……あれ、嫉妬?

いや、これは嫉妬じゃない。

俺だけだ、俺が一番だ。と今まで散々態度で、言葉で伝えてくれていたはずの彼に対する、ただの怒りだ。嫉妬じゃない。

とにかく俺は、少し裏切られたような気持ちになっていただけ。
こんな子供じみたこと、当人に言えるはずもなく、その場は笑顔で取り繕った。

 

そう、こんな気持ち
少し時間が経てば収まるし、
いつか獄寺君の恋人を見ても、心から祝福できる。
そう思っていた。

……そう、思っていたんだ。

 

 


あの日、屋上で、
肩を預けて眠りあい、お互いの手をしっかり握り締めた、獄寺君と雲雀さんの姿を見るまでは……。

 

 


あの日、2人の姿を見て、俺は確信した。

獄寺君の恋人は雲雀さんだ。
独りを好む彼らが一緒にいるなんて、それ以外に考えられないし、
お互いのテリトリーに相手を入れ、あまつさえ仲良く昼寝をするなんて、そうとしか思えない。


なんで雲雀さんを選んだのか、あの人のどこが良かったのかとか、聞きたいことはたくさんあるのに、どれもこれも俺が雲雀さんに嫉妬しているように聞こえて、獄寺君に言うこともできないし、聞くことも出来ない。


……どうして、俺じゃダメだったんだ。

キミが一番好きだったのは俺だったじゃないか。
キミが一番好きだと言った相手は俺だったじゃないか。

あれは全部嘘だったの…?


そっか、俺、騙されてたんだ。
獄寺君は、そうやって俺に嘘をついて、今まで楽しんでいたのかな?
キミが俺のことを好きだ好きだと言う度に、俺が困った顔するの、嬉しかった?

……だったら、俺もキミに同じことしたって罰は当たらないよね。

 

これは復讐。
俺を騙していた獄寺君への。

 


「ねぇ、獄寺君。」

「はいっ、十代目!」

あーあ、俺、君のコト、凄い信じてたのに。

「俺、この前見ちゃったんだけどさぁ、」

結局、俺より雲雀さんを選んだってコトだよね?
獄寺君自身も、そう思って、
後ろめたかったから、相手の名前、言わなかったんだろ?


「獄寺君の恋人って……、」

「っ、」

あぁ、違うか。言えなかったのか。

「……雲雀さん、だよね?」


だって、ボス以外の男を選ぶだなんて、裏切り以外の何者でもないよね。

 

 

「あ、あの10代目…!!」

俺の言葉に必死に反論しようとする獄寺君。
そんな姿も、キミに恋人が出来るまでは可愛いと思っていたのに……変だなぁ、その反応すらもイライラする。

「俺を、…裏切ったんだ?」

「ち、違います!!」

「違う?違わないよね。獄寺君自身、そう思ってたから相手の名前、言わなかったんじゃないの?」

「っ、」

可哀相に獄寺君。
大好きな俺に、散々追い詰められちゃって。

…そんなに唇噛締めたら、血が出ちゃうよ。

だけど、もっと追い詰めてあげる。
だってキミは本来ならば僕のものだ。
自分のモノを自分で傷付けるのは、俺の勝手だろ?


「それとも…何か俺が納得できるような理由があるわけ?」

「じゅ、だいめ……」

「もしかして、最強だって言われてる雲雀さんを、ボンゴレに置いておく為に付き合ってるの?」

「違います!」

「へぇ、違うんだ…。じゃぁ他に何か理由があるんだよね?説明して。」

「っ、」

「説明できないなら、俺への裏切りと取るよ。」

「そんな…!!!」

まぁ、理由なんてあるわけないよね。
恋人なんて、理由があってなるものじゃないし。
…そんなの分かってるけど、取り戻したいんだから仕方ない。


「……ほら、どうしたの言いなよ。」

「………。」

「言えないんだ。」

「………っ、」

普段より幾分も冷たい俺に、獄寺君が戸惑うのは分かってる。
そう、全部俺の計算。計画どおり。


「ただ単純に俺より雲雀さんの方が好きなんだ。」

「そ、んなことは…」


そうだよね。キミならそう言ってくれると思ってたよ。


「じゃぁ、俺と付き合ってよ。」

「は…?」

「雲雀さんと別れて、俺と付き合って。」

「……え、…?」

「雲雀さんより俺の方が好きなら、俺と付き合ってよ。」

「じゅ、うだいめ…本気で、仰って…?」

「冗談に見えるの?」

「……ぃぇ…、」

「じゃあ、俺と付き合えるよね?」

「っ、」

もう獄寺君にはこの言葉を断るなんて出来ない。
だってそうだろう?キミのボスは俺なんだから。逆らえるはずが無いし、逆らう理由ももうないよね?

だって、キミの雲雀さんが好きだという気持ちさえ捨ててしまえば、全てが丸く収まるんだ。
獄寺君に選択の余地は無い。

 

俺の確信に満ちたこの思いを裏付けるかのように、
獄寺君の息を飲む音と、俺をいつでも真っ直ぐ見つめていた瞳が伏せられた。

 





+++++++++++++++

 

「………ツナ、やりすぎだろ。」

「あぁ、山本いたの。」

噛締めた唇を解くことなく、「分かりました。」と一言残して教室を去っていった獄寺君。
当然、雲雀さんのところに別れでも告げに行ったのだろう。

そして、教室に一人取り残された俺に掛けられたのは山本の声。

正直、今まで誰もいないと思っていた。……けど、山本が普通に席に座っているところを見ると、だいぶ前から見ていたのだろう。

「……いつからいたの?」

「ほとんど最初からだよ。」

「そう。」

ま、山本に聞かれようが関係ないけど。


「ツナ、あれは言い過ぎだ。早く追いかけて『冗談だ』って言ってやれよ。」

「どうして?」

「どうしてって…!!」

「でも決めるのは獄寺君でしょう?」

「あれは獄寺の意思を無視してただろ!」

何を興奮しているんだ。
俺は、獄寺君に復讐したいだけなんだ。

別に、雲雀さんと獄寺君がどうなろうと関係ない。
…まぁ、別れれば良いのにとは思ってるけど。


「でも、最後に決めるのは獄寺君だ。」

「っ、」

だって、獄寺君だけが幸せになるなんて可笑しな話だろ?
それに、

「黙って見守るしか出来ない奴が口挟むなよ。」

ずっと獄寺君が好きで、やっと傍に居られる程の信頼を得た癖に、さっさと横取りされた奴が、何言ってるんだ。

「欲しいものは自分で手に入れないと。」

俺、みたいに。どんな手を使ってでも。

「俺は、そんな汚い手を使ってまで、獄寺が欲しいとは思わない…!!」

「そ、山本はその程度なんだよ。」

「ツナ!!!」

いつもヘラヘラしていて、決して他人に怒ることの無い山本が珍しく俺に、厳しい表情をみせている。

「お前が行かないなら、俺が止めに行くからな!!」

そう言って、教室を飛び出していった山本。
今更追いかけたって、獄寺君はもう雲雀さんのところに付いているだろう。


ホント、山本は友達思いの良い奴だ。
…そんなだから、いつまで経っても友達以上になれないんだ。

獄寺君にあんな顔させて、山本に怒られて、
普段なら、こんな状況になったら、今のように冷静でなんていられない。

 

自分が悪い。理不尽だと頭では分かっているのに、
それでも、コレで良かったと思う矛盾した自分がいる。


「………ははっ、俺すげー嫌な奴、」

こんなことして、雲雀さんには只では済まされないことくらい分かっているのに。
そんなリスクまで負うほど、俺は獄寺君と雲雀さんを引き離したかったのか…。


(あ、そうか。これが……)

嫉妬だ。


よくもまぁ、嫉妬じゃないなんて自分に嘘をついたモノだ。
これは紛れも無く、みっともない嫉妬。獄寺君への執着心。


獄寺君にあんな泣きそうな顔させてまで、傍にいて欲しいと思う、
俺の醜い恋心。




間男3


と、とにかく…奪うとなったら話は早い。
獄寺にこの気持ちを伝えるのな!!

「獄寺、俺、お前のこと幸せにするから…!!」

「ワケ分かんねぇこと言ってねぇで話聞けよ。」

「あ、ハイ。すんません…。どうぞ」

わースルーされたぁー。

え、今俺、すごく重要なこと言ったんだけど無視ですか!?

でも良いんだ……そんなツンツンなところも好きだ!!

本当はお前等の痴話喧嘩の内容なんて全く興味ないんだけど、獄寺のお願いじ
ゃ聞くしかない!

「雲雀になんかされたのか?」

「いや、最近際どいプレイは要求されてねぇ。」

「……そうですか。」

そんなことは聞いてません。
むしろ、今まで何やってたんだお前等。中学生の癖に羨ましいな畜生。


「……………あいつ、最近帰ってくるの遅いんだよ…。」

「ん?…………あ、あぁ。」
なんだ、そんな話か。
まぁ……それはアレだ。俺と話し合い(獄寺争奪戦と言う名の殴り合い)して
るからな。


「っ、なんか知ってるのか!?」

「えっ!?いや……詳しくは知らないけど…」

い、言えない…毎日、ボコボコにされそうになるだなんて…!!!しかも理由
が獄寺に近づくなとか、喧嘩するなとか、そんなどうでもいい内容だし…!!


何よりバレたら、俺、超困る!!

「いや、俺は…その、その…部活の帰りとかにたまたま…?」

「……あぁ、お前部活で遅いから、帰りに雲雀でも見るのか。」

「…まぁ、そんなとこ。」

うあ、危ない…俺、嘘苦手だから危なかった…。
それにしてもなんだ…、獄寺が怒ってる理由って、俺じゃねーか。

「それで…?雲雀の帰りが遅いって………………………ん!?まさかお前等一
緒に住んでんのか?」

「えっ!?いやっ、べ、別に…一緒に住んでるワケでは…!!!!」

えー!そうだったの!?うわ…ショック……。

「良いから聞け馬鹿!!そっそれで…!
あいつ、最近帰り遅いし毎日疲れて帰ってくるから、……う、浮気でもしてる
んじゃないかと思って…!!」

「……」
なるほど…、それが原因で喧嘩したのか…。
っていうか雲雀、浮気とかしねぇだろ。お前にベタ惚れじゃねぇか。

大体、俺が毎日雲雀にトンファー振るわれてるの、獄寺の半径5m以内に近づく
なって理由なんだからな。

……かと言って、アイツの肩を持つようなマネはしない。
俺の、俺の大事な獄寺を泣かせる様な奴になんて、任せておけないのな!そし
てあわよくばこのまま奪いたい。



「そ、そうしたらアイツ…!女なんか相手にしてる訳ないじゃないって言うん
だ…!!!」

「……ちっ」
結局惚気か!
でもまぁ…間違ってないな。雲雀の相手してるの、俺だし。

「じゃぁ、問題ねーじゃ「あるだろ!!!」

「??」

「あいつ、女ならまだしも男に手だしてるってことだぞ…!!!」

「………はっ?」


「っだから!あいつ、俺じゃ飽き足らず他の男に毎日手出してるんだって!!


「……それ、」

勘違いだ。確実に。
どうしたらそういうことになるんだ。ならねーだろ普通。


っていうか、全部獄寺の被害妄想じゃねぇか。言えないけど。


「そ、それなのに雲雀の野郎……『それはキミでしょ。』とか澄ました顔で言
いやがって…!!」

「………」

「俺、浮気なんてしてねぇのに…当て付けみたいなことしやがって…!!!」


これ、完全に獄寺の一人勘違いによって出来た状況だ。
しかも俺、若干巻き込まれてるし……。



「っ絶対許さない!!俺が好きなのは雲雀一人で、浮気なんてこれっぽっちも
してないのに!!!」

……あぁようやく分かりました。

一人で勘違いして雲雀に食って掛かって、そして雲雀に言葉で反撃されて、自
分だけ相手のこと大好きみたいな感じになって、寂しくて悔しくて、……ってま
とめるとこういうことですよね獄寺さん。

あなたそれで、昨晩泣いてたんですね……。



っていうか、ナチュラルに俺、フラれたんですけど!!!
何より、獄寺が勘違いしてる雲雀の浮気相手って俺じゃねぇか!!


「あー…話聞いてくれてさんきゅ。なんか俺の勘違いな気がしてきたわ。」

「…あー、」

「俺、昨日は怒りに任せて、無理矢理ヤらせちまったから、とりあえず謝ってく
る。」

「…………」

「やっぱお前、良い仲間だよ!」



それ、謝る必要ねーよ!結局得したの雲雀じゃねーか

…それでも俺は諦めないんだからな!!


間男

「獄寺、雲雀なんかやめて俺と付き合え!!」
「ねーよ。」


more...!

間男2

「ごーくでらっ!」


雲雀と喧嘩してる獄寺は分かりやすい。
放課になると、喫煙で席を外すか、速攻ツナのところに飛んでいくのに、喧嘩
している日はボーっと外を眺めていることが多い。

今日もそう。雲に覆われた空を見上げながら、時折吐き出す溜息が色っぽく、
……じゃなくて、分かりやすいくらい落ち込んでるってこと!

「どーしたどーした、また喧嘩か?!」

「…うっせ、」

さり気無く肩を抱き、抱き込むように顔を近づ覗き込む。

普段どおりのスキンシップ。
これが俺のデフォルトだと獄寺は認識してくれてるようだけどそれは違う。
お前限定なんだぜって、耳元で囁いてやりたい。


…ま、顔を真っ赤にしながらボコボコにされるのは目に見えてるけどな!(雲
雀に)


それにしても……今日の獄寺の顔。
直ぐ逸らされてしまったけれど、ちゃんと見えた。

腫れた瞼に真っ赤に充血した瞳。

(泣かされたなこりゃ…、)


この2人が、一体何が原因で喧嘩してるかは知らないけど、泣かすなんて最低だ
!!

よく2人は喧嘩するし、獄寺がボコボコになってるところも何回だって見てるけ
ど、
傷一つ無いのに、涙の痕跡だけある獄寺なんていままでに見たこと無い。


……要するに、手がでる喧嘩ではなく、口論になって泣かされた……、という
ことだろうか。


(雲雀の野郎……)

怪我させるだけでもムカついていたのに、泣かせるなんてどういう了見だ。
畜生…自分のモノだからって好き勝手しやがって!!
俺だったら泣かせないし、大切に撫で撫でしながらお姫様みたいに扱ってやれ
るのな!!


雲雀みたいなガサツな奴に、獄寺は似合わねぇ。
今までは我慢してきたけど、もう限界!

俺が獄寺のこと奪ってやるのな!

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