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久しぶりの逢引。
恭弥と会うのは何ヶ月ぶりなのだろうか。
だけど、
恭弥に着けられた背中の傷を見た瞬間、俺の血の気がサッと引くのが分かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
side、雲雀
久しぶりに見る恋人に、ふつふつと湧き上がる欲望に歯止めなど利く筈もなく、お互いシャワーを浴びる余裕すらなく、雪崩れ込むように行為に没頭した。
「……隼人、」
行為を終え、いつもなら簡単に意識を手放す隼人が、
今日は珍しく、意識を飛ばさず、僕に背を向けたまま、一言も発さない。
「…隼人ってば、」
さきほどから何度も呼びかけているのに、一向にこちらを見る気配がない。
「…何怒ってるの。」
そう言うと、びくりと肩を震わせる。
が、やはりこちらを向く気配はない。
「無理矢理何度もシたから怒ってるの?」
「………」
―――違うのか。
「…じゃぁ、乗り気じゃなかったのにシたから?」
「……」
―――これも違うか。
今日、隼人とあってからの事を思い出すが、やはり自分が何かマズイことをしてしまったようには思えない。
僕が部屋に帰ってきたときは、珍しく自分から抱きついてきて、
僕の欲望に火を着けるようなキスをしてきたのは隼人の方だというのに……、
だが、途中から隼人が行為を嫌がりだしたのも事実だ。
…一体僕が何をしたっていうんだ、
「……はぁ、」
ため息を吐くと、とたんに震える隼人の肩。
「…隼人、言わなきゃ分からないよ。」
「……俺が言わなきゃ、分かんないのかよ…」
「……」
やはり言うつもりはないのか。
僕に考えろ、と言ったって、
思い当たる節が全くない。
「…分からないってば、隼人教えて。」
「……」
「はぁ、……もう良いよ、めんどくさい。」
「っ、」
「…帰る。」
ベッドから起き上がり、床に散らばっている服を拾い集める。
隼人との行為をし終えた後、後始末もしずに帰ったことのない僕だが、
今日の隼人の相手はこれ以上しても無駄だと悟り、
このまま隼人を放置するのも気が引けるが、長期任務から帰ってきて疲れているのも事実。
これ以上構ってやる余裕もない。
「じゃぁね隼人、本当帰るから。」
「……」
「……はぁ、おやすみ。」
――――バタン、
僕が出て行くまで、こちらを振り向きもせず、
隼人は一言も発することはなかった。
(なんなの本当………、)
疲れて急いで帰ってきたのに、
誘ってきたかと思えば、急に怒り出すなんて。
めんどくさい。
ほかっておけばいい。
そう思うのに、自分の足は、この部屋から遠ざかろうとはしない。
(――――惚れた弱み…か、)
それに、もし怒らせたのだとしたら、隼人は黙ってなんていない。
きっと怒鳴りつけてくるだろう。
…と、いうことは…
(傷付けた…かな、)
何を?と考えても思い当たる節は無い。
だけど、僕が隼人を傷付けたことは多分間違いないだろう。
(僕は本当に何をしたんだ…?)
今すぐにでも眠ってしまいそうな頭を必死に動かして、自分にあったのであろう落ち度を必死に探す。
(……分からない。)
ズルズルと扉を背にしてその場に座り込む。
すると、中からグスっと鼻をすする音が聞こえる。
(……泣かせちゃった、か…)
考えたって身に覚えだって無いし、
泣かれるなんて一番めんどくさくて関わりたくなんて無い。
でも、
「―――――隼人、」
キミだけは別。
「隼人、」
閉じたドアを再び開ける。
ベットに座り、驚いたように目を見開く隼人に近づく。
「なっ、」
「隼人、」
驚いて、肩を震わせ、シーツを肩まで引き上げる。
「帰ったんじゃ…」
「キミをほかって帰るなんてできるわけないでしょ、」
「…っめんどくさいって言ったじゃん。」
「言っただけ。君だけは特別。」
「………嘘つき、」
「?君に嘘なんてつかないよ。」
「…嘘、」
「…何が?」
「俺がっ、特別ってとこ…」
…何を言ってるんだこの子は。
君が特別だなんて、誰よりも一番君自身が知っている事でしょう?
「…隼人、言ってる意味が分からない。ちゃんと説明してよ。
でも、あんまり理解できないようなこと言ったら怒るからね。」
「…いやだ。言いたくない。」
「…隼人、」
「嫌だってば…」
「…本当、今この状態が君以外だったら容赦なく咬み殺してるところだよ。」
隼人だからまだ耐えられるものの、こんな要領の得ない会話なんて、この子以外だったら即効放棄してる。
「…俺だけじゃないくせに、」
「……?」
「っ他に、女いるんじゃないのかよ!」
「……は?」
「っ、」
それだけいうと、堰を切ったように涙を流す彼に、意味が分からず動揺する。
「は、隼人…そんな事で怒ってたの?」
「っそんなことってなんだよ!」
あ、しまった。
言い方が完全に不味かった。
隼人の怒りに拍車を掛けてしまった。
「俺はっ、俺にはお前しかいないから…!お前にも俺しかいないと思ってたんだよ!
でもっ、お前は違うんだろ…!!」
…言っている意味がやはり分からない。
「…僕には隼人しかいないけど。」
「っ嘘つくな!」
「ちょっと落ち着いてよ。嘘なわけないでしょ。」
「っ落ち着いてる!」
「いや、本当に隼人の言っている意味が分からない。」
この子は一体何を勘違いして、何を思いつめて泣いているんだろうか。
「っ俺の他にも、そういうことする相手がいるんだろ、…」
「…そういうことって、セックス?」
「……」
…黙秘は固定と取っていいのだろう。
僕が隼人以外の女を抱いているって…?
「そんな訳ないでしょ。意味が分からない。
何でそう思ったの?」
「……」
「隼人、」
「……」
「早く言いなよ。」
「っ、だって…」
「うん、」
「だって、恭弥の背中にっつ、つめの跡が…」
「爪の跡…?」
本当に身に覚えが無くて、ベットの近くにおいてある鏡で、自分の背中を確認する。
(……これのことかな?)
確かに、背中にはうっすらと引っかき傷のようなものが残っていた。
隼人と最後にあったのは数ヶ月も前のことだし、確かにこれは隼人につけられた傷ではない。
だけど、
「…隼人と離れてる間に、他の女を抱いたことなんて一度も無いよ。」
「っ、でも…」
「信じてよ隼人。」
「っ、……」
「僕には隼人だけだよ。10年間も一緒にいるのに、僕がキミの事セフレとしか思っていないとでも思ったの?」
「そ、うじゃないけど…」
「じゃぁ何、」
自然と強くなってしまう口調は許して欲しい。
ずっと隼人だけを愛し続けてきた僕の気持ちを完全に無視して泣くなんて許せない。
「ずっと離れてたから、その間にっ」
「他の女の所にでもいったと思ったわけ?」
「っ、」
あぁ、それで服を脱いだ途端、行為を嫌がったのか。
「確かにね、僕も男だし、誰かを抱きたくなる時だってあるさ。」
「っ、」
「でもね、隼人。もしただの欲求不満なら、好きでも無い男を抱くなんて面倒なことしない。そんなことするくらいなら、その辺の女でも抱く。
でも、僕はキミを選んだ。好きだからだよ隼人、」
「、」
「だからもう泣かないで。ちゃんと僕にもキミだけだから。
ほら、立って。まだ後始末してないんでしょ、シャワー浴びるよ。」
「っきょうや、」
「ん?」
「ご、めん…」
「……いいよ、僕こそごめんね。不安にさせたし、酷い事言っちゃった。ほら、もう泣かない。」
「うっ、」
「……隼人、今日はシャワー浴びて、二人で寝よう。それで、朝起きたら、一日中イチャイチャしよう。」
「…うん、」
「あと、この背中の傷は他の女につけられたとかじゃ絶対に無いから。信じて。」
「…分かった。」
全く。僕をこんなにも振り回して、こんなに面倒な手間を掛けさせるなんて、本当良い度胸してるよね。
それでも、離れられないのは…
(キミが僕の、特別だから。)
End
恭弥と結婚してから数年、
今は大企業の若社長となった恭弥と、時をともに過ごし、もう何年になるのだろうか。
婚約を破棄してしまったり、襲われかけたり…といろいろあったが、今も風との仲は続いている。
「恭弥、今日は風との会食の日だろ。いつまでそうしてるんだよ。」
銀色の髪を持ち、両目が黒の女の子を抱き上げる夫に、早く準備をするように声を掛ける。
「分かってるよ。」
「ほら、隼、パパを放してやれって。」
「やー、」
「やー、じゃなくて…」
「隼はママに似て、甘えん坊だね。」
「なっ!俺は甘えたりしねーよ!」
「どうだか。
ね、隼。」
「ねー、」
やけに仲のいい二人に恭弥にはとてつもなく苛つくが、可愛い自分の子供を見ていると、怒り出すこともできない。
「……ママ、いじめちゃだめ。」
自分が恭弥と隼に虐められているとでも思ったのか、とてとてと後方から走ってくるのは、黒い髪と緑の目を持つ、男の子。
「恭、」
「パパ、早くいきなよ。」
ムっとしながら、恭弥を睨むこの子は、本当に恭弥と瓜二つだと思う。
「キミ…パパに向かってなんて言う口利くの。」
いやいや、お前らそっくりだよ。と言ってやりたいが、これ以上恭弥の機嫌を損ねても面倒なので、何も言わず、成り行きを見守る。
「ほら、恭ももうやめなさい。恭弥、本当にそろそろ行かないと。」
「うん、分かってるよ。
ほら、隼、恭、パパがいない間、ママの言う事よく聞くんだよ。」
「はーい」
「…うん」
「じゃぁ、行ってくるね。夕方には帰ってくるから。」
「うん、気をつけて。」
2人の子供が見ていないことを確認してから、
朝の日を浴びながら、どちらともなく口付けた。
もしも、キミとあの日あの時出会わなかったら、きっと今の僕たちはココにはいない。
だけど、キミと出会わなかった未来なんて、想像できないし、ありえない。
だって、きっとコレは運命。
キミと出会うことのない世界なんて、絶対にない。
キミの運命の相手は僕しかいないんだ。
だから僕が、キミを幸せにする。
だれかに誓った訳じゃないけれど、
自分に誓った言葉だけは、必ず守る。
だからずっと、僕の側で笑顔でいてもらうよ。
初恋の人、End
彼女の父親に、婚約の変更を頼みに行き、かつてないほど緊張した僕は、
部屋から出るなり、そのまま床にしゃがみこんでしまった。
(……………かっこ悪い。)
この僕が、
この僕が、人の親に挨拶しに行くだけで立っていられないほど緊張してしまうなんて…!
そんな僕を珍しく思ったのか、自分もしゃがみこんで下から覗き込んでくる隼人に、顔を見られてしまうのが嫌で、無理矢理腕の中に納める。
「恭弥…、」
不安そうに、話しかけてくる彼女には悪いが、今は顔を上げられない。
絶対真っ赤だから。こんな姿、見られたくない。
だけどきっと、心臓の音までは隠せていないだろうから、僕の気持ちは彼女に伝わっているんだろう。
僕を、こんなに乱しておきながら、
ただ、胸に抱いているだけで、僕を安心させることが出来るなんて、
そんな存在、キミしかいないよ――――――、
++++++++
「それにしても、両方ともすぐ承諾してくれて良かったよなー、」
帰りの車の中で、隼人のホッとした間延びしている声がする。
「うん、本当……」
「修羅場みたいにならなくて良かったよな!」
…僕と風は、若干なりかけたんだけどね。
「隼人、その緩んだ頬なんとかしなよ。運転手に見られても知らないよ。」
「おっと、それはマズイ。」
やはり、隼人の家の使用人でも、崩れた態度を見せないのか…、
よほど、厳しく育てられたんだろうな。
「っつーか、なんで俺、恭弥の家に向かってんだ?」
「そんなの、今日も泊まるからに決まってるでしょ。」
「え!?」
「隼人、昨日は手出さないって約束したから何もしなかったけど、今日は約束しないから、覚悟しといてね。」
「ちょ、え?冗談だよな?…おい、恭弥?おいって!」
何も答えないでいると、隣でぎゃんぎゃん喚く彼女。
片手で、彼女の口を塞ぎ、
「あんまり騒ぐと、ここでやっちゃうよ…?」
互いの顔が、ぼやけるほど、近く顔を寄せ、そう囁くと、
ボンっと音がしそうなほど、顔を赤くしてワナワナと震える。
そんな彼女に含み笑いを返し、視線を窓の外へと移した。
(―――――だってこれ以上見てたら、理性が抑えられないから)
屋敷に着き、母たちがいるであろうリビングにへと、向かう。
リビングに着くと、やはり人の気配がある。
迷わずそのドアを開くと、既に用意された食事がテーブルの上いっぱいに並べられていた。
「あら、おかえりなさい恭弥さん。隼人さん。」
「おかえり、恭弥、隼人」
「ただいま、……どうしたのこの料理、」
「あぁ、父様がせっかくだから、もう一度婚約パーティーをしようと言い出したので。」
「…そういうことね。」
イベント好きの父のやりそうなことだ。
特に驚きもせず、昨日と同じ席に座る。ただし、隼人の席は、僕の隣にしてあるが、
「隼人さん、どうだったの?上手くいった?」
「はい、大丈夫でした。」
母と話す隼人を見ると、頬を赤らめ、嬉しそうに話している。
「ちょっと、隼人……、僕と話すときより嬉しそうなのは気のせい?」
「は…?何言ってんだ恭弥?」
「本当、何いってるのかしら恭弥さん。」
「……母様にまで、嫉妬するなんて、」
「……うるさいよ、」
3人にそれぞれ言われ、なんとなく居心地が悪くなる。
僕が嫉妬?
そんなのするに決まってる。
だって、やっと手に入れた僕だけの女の子なんだから。
そう言ってやると、途端に赤くなる隼人に、あきれたような顔をする風。そして母までもが、珍しいものを見るかのように驚いている。
「…恭弥。そう言うことは、二人の時に言ったほうが良いと思いますよ。」
「………」
確かにそうだ。
現に今、真っ赤になった隼人が僕を睨んでいる。
が、その目には涙がうっすらと溜まっていて、可愛い。
そんな状態の隼人を風に見せてしまうなんて…、
「……ちょっと風、隼人見ないで。」
「嫌ですよ。せっかくなので見ておきます。」
「駄目。見ないで。」
「いいえ、見ます。」
「……(怒)」
「あぁ、可愛いですね隼人。」
「…っ、母さん僕達のご飯、後で部屋に運んでおいて、」
そう言い、これ以上は矢とを見られるのが嫌で、隼人を連れて、部屋を出る。
扉が閉まるときに、風と母さんの笑い声が聞こえた気がするが、
それを無視し、足を進めた。
今だ羞恥で黙り込む隼人を無理矢理部屋に押し込め、ソファーに座らせる。
「…隼人、」
「………なんつー恥ずかしいこと言ってんだよ、」
「うん、あの場で言うべきじゃなかったね。ごめん」
「お前謝る気無いだろ!」
まぁ、だって全部事実だから、誤る気なんて確かに無い。
「せっかく、…お母様がご飯用意してくれたのに…、」
「…一緒に食べたかったの?」
「そりゃ、」
「僕と二人じゃ不満なの?」
「…っそーゆう訳じゃないけど、」
「訳じゃないけど?」
「…お前とは、…その、これからも二人でなんていくらでも食べられるじゃねーか。」
ワォ、そういう意味ね。
まったく、可愛いこと言ってくれるじゃないか。
「…言っておくけど、今のは隼人が悪いんだからね。」
そう言い、横抱きにし、隼人をベッドへと移す。所詮お姫様抱っこというやつだ。
「っぅわ、おい!」
「僕を煽るなんて、上等だね。覚悟して。」
「ちょっと待て雲雀!ご飯、冷めちまう!」
「大丈夫、冷めてもきっとおいしいよ。」
「、じゃぁせめてシャワー…!」
「やだ。隼人の味するからそのままでいい。第一そんなに待てない。」
「ちょ、雲雀…、っほんとに…」
「…初めてなの?」
「………」
僕の質問に真っ赤になりながら、小さく頷く。
聞かなくても分かっていたけど、やはり、良い所の娘なだけあって、やはりそういった事は一切経験がないのだろう。
「…隼人、大丈夫。絶対優しくするから。」
「…でも、俺、何したらいいか分かんねぇ、」
「何もしなくていいよ。僕がやるから。」
「で、も………」
焦れる隼人の首筋にキスを落とす。
「隼人、」
名前を呼ぶと、自然と交わる視線を、どちらとも外すことなく口付ける。
「…っ恭弥、」
その言葉を最後に、隼人はそれ以上何も話さず、僕に身を任せた。
+++++++
半ば、失神するように僕の腕の上で眠ってしまっている彼女の頬をそっと撫でる。
優しくするとは言ったものの、途中から、自分の欲求が求めるがままに、彼女を抱いてしまった。
僕もまだまだ修行が足りないな。
無理させてしまい、目尻に残る涙の痕を、指先で拭う。
スースーと寝息を立てる、彼女の首筋には、先ほど自分がつけた、無数の所有印。
白い肌に、よく生える紅が、彼女の美しさをより一層引き立てている。
その無防備な姿に、もう1度という欲求が沸いてきてしまう。
今まで、抱いた女は何十といる。だけど、僕の理性をここまで崩し、余裕を無くさたのは、彼女が初めてだ。
(だって、今まで、本当に好きな女を抱いたことなんて1度も無い。)
そっと瞼にキスをすると、不意に開く瞳。
きっとまだ、寝ぼけているであろうキミに、どうしても今伝えたいことがある。
キミが次に目覚めたとき、覚えていなくたっていい。
いつか、思い出してくれなくてもいい。
ただ、聞いて――――、
「僕に、たくさんの初めてを与えてくれたキミに、
僕の未来を全部あげる。
だけど代わりに、キミが安らげる場所を、僕があげる。
寂しいときに甘えられて、嬉しいときに笑えて、悲しいときに泣ける場所。
だから、キミの未来を僕にちょうだい。
絶対、幸せにしてみせるから。」
end.