スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

僕の娘は渡しません!




毎日毎日コポコポコポコポ…
僕だってたまには外の空気が吸いたいんです!




***********



「隼人君っ、今日もお綺麗ですね!」

「あぁ?…あ〜骸か、」

「はいっ、お久しぶりです!」

久しぶりの人間界。
クロームに身体を借りて犬や千種に挨拶したので、次に会うのは勿論愛しの隼人君!(あっ、卑猥な意味じゃないですよ!)


「本当珍しい奴が来たな…、今日は水の中でコポコポしてなくていいのかよ。」

「はい。今日は復讐者の監視が弱かったので、クロームの身体を借りて、隼人君に会いに来てみました!」


「あっそう…。あんま髑髏に迷惑かかんじゃねーぞ。」


若干迷惑そうですが、そんなことではめげませんよ!
僕は今日、確かめたいことがあってきたんです!



「隼人君!!!!」


「のわぁあ!っ近いわアホ!!!!」

ボコッ、

「…っすいません、」


久しぶりの隼人君に興奮して、ついつい大声を出したあげく、肩を勢いよく掴んで自分の方に引き寄せてしまったことは謝ります。
そうですよね。いきなり僕みたいなカッコいい顔がドッアップになっていたら、いくら隼人君だって驚きますよね。
でもっ、だからってだからって…!!

「顔っ殴らなくても…!!!」



「…わ、わりぃ骸。ちょ、泣くなよ…、」


「うっ、ぅう…」

しかも思いっきりグーで…!!

「ちょ、本当お前の唯一の取り柄である顔を、咄嗟と言えど指輪が一番機能するであろう角度で殴ったのは…、その、本当悪かった。頼むから泣くなよ道のど真ん中で…鬱陶しい。」


「……、」

さらっと酷い事言われてませんか僕?
それでも僕はめげません。
最後のほうの部分は、今すぐ記憶から抹消します。
僕の良いところは顔のみ!頭はよくないのですぐ忘れられます!さすが僕!イケメン!

「…それにしても、なかなかのパンチでしたよ。さすが、ボンゴレの部下であるだけはありますね、」


「ちょ、褒めんなよ…」

別に褒めたつもりでは…、
今のは皮肉ですよ皮肉!!!



そんな僕の心の声なんて聞こえているはずもなく、頬を赤らめて照れる彼の可愛いこと…!!!!

「クフっ、」


あまりの可愛さに衝天してしまいそうですよ。


「骸、本当にごめんな?」


そう言って顔を赤らめたまま上目遣いで覗き込まれたりなんてしたら…!!!


「もう痛くないので大丈夫です!」

僕のビューティフルフェイスから未だ流れ続けている血なんて、あってないようなものですよ!


そんなことより…


「隼人君、僕は今日、聞きたいことがあって来たんです!」


「ん?あぁ、いきなり元気になるなよ気持ち悪りぃ…で、何だよ?」


「……あ、はい何かすいません…、」
何か今日の隼人君、Sっ気が増してないですか…?


「なんかその…風の噂で、隼人君にこ、こ、こ…」


「こここ?」


「こ、こいっ恋人が、その出来たと…っその…、」


「恋人…?あぁ、雲雀の事か。」


雲雀…?雲雀雲雀雲雀…?っ、雲雀ィィィィィ!!?!


「雲雀というのは、まさかあの鳥頭のことですか!?」


「鳥?…えーと、雲雀っつーのは…」


「僕のことだよ変態ナッポー。」


「……、」

颯爽と現れたのは、ただいま噂真っ最中☆の雲雀恭弥ではありませんか…!


「……やはり貴方でしたか。」

さすがの僕でも落ち込みますよ。

「そうだよ当たり前でしょ。こんなじゃじゃ馬乗りこなせるのは僕くらいだからね。」



しかも、何という上から目線…!!!
まるで、まるで勝ち誇ったような…!!!


「いや、明らかに僕の勝利でしょ。キミが可愛がっている隼人を、君のいない間に僕のモノにされているんだよ?………ふっ、」



………コンノ野郎ォォォォォ!!!


「なぁにが勝利ですか!クロームに忠告されてきてみれば何故…何故こんなことに…!しかも最後の薄ら笑い!勘に触りました、謝ってください!!」

「あっ、やっぱクロームから聞いたのか。」
「謝るわけないだろう、早く消えなよ。視界の妨げだ。」

「っ隼人君!こんな鬼畜ドS変態のどこがいいというのですか!!!」

「えっ…どこって……だって俺、ドMだから…」

(嘘をつけぇぇぇぇぇ!!)

「さっきまでのドSっぷりはどうしたんですか!」


「キミのこと嫌いなんじゃない?この害虫野郎。」


「クッハー!雲雀恭弥!貴方だけは許せません!
隼人君、僕は彼が恋人なんて許しませんよ!」


「…いや、お前に許されなくてもなぁ、」


「こんな背の小さい男…恋人ならぬ小人で十分です!」


「っ、僕のデリケートな部分をピンポイントで…!!!
六道骸…!咬み殺す…!!」


「それに、この男は一度僕に負けているじゃありませんか!」


「あ〜そういやそうだ。」
「っ僕の一生の汚点をピンポイントで(ry



「僕より弱い男なんて………パパは許しませんよ!」



「「………は?」」









「……なんですかこの間は。」

何か僕おかしなこと言いましたか?



「お前…パパって、……」
「キミ…パパって、……」



「あぁ。親のように隼人君のことを愛しているんですよ。だから貴方のような男に…」



「俺はパパなんて言わない!」
(そんなふうに呼んでたのなんて7歳までだ!)
「隼人のパパはキミなんかじゃない!」
(同じ血が流れているなんて、考えただけで鳥肌が立つ…!!)


「果てろ…!!」
「咬み殺す…!!!!」


「っクッハー!!!」




たまに外に出たかっただけなのに、愛しの隼人君には男が出来、憎き雲雀恭弥には追い駆け回され…、



ちくしょう雲雀恭弥!次に会った時こそ必ず、叩きのめす…!!!

僕になんの挨拶もなしに隼人君に手を出すなんて、絶対に堕としてみせます…!!!






End

more...!

爪痕


 
久しぶりの逢引。
恭弥と会うのは何ヶ月ぶりなのだろうか。

 

だけど、
恭弥に着けられた背中の傷を見た瞬間、俺の血の気がサッと引くのが分かった。

 

 

 

 

 


 
ーーーーーーーーーーーーーーー
side、雲雀

 


 
 
久しぶりに見る恋人に、ふつふつと湧き上がる欲望に歯止めなど利く筈もなく、お互いシャワーを浴びる余裕すらなく、雪崩れ込むように行為に没頭した。
 

 

 

 

 

 
 
「……隼人、」
 
 
 
行為を終え、いつもなら簡単に意識を手放す隼人が、
今日は珍しく、意識を飛ばさず、僕に背を向けたまま、一言も発さない。
 
 
「…隼人ってば、」
 
 
 
さきほどから何度も呼びかけているのに、一向にこちらを見る気配がない。
 
 
「…何怒ってるの。」
 
 
そう言うと、びくりと肩を震わせる。
が、やはりこちらを向く気配はない。
 
 
 
「無理矢理何度もシたから怒ってるの?」
 
 
「………」
 
 
―――違うのか。
 
 
 
「…じゃぁ、乗り気じゃなかったのにシたから?」
 
 
「……」
 
 
―――これも違うか。
 
 
 
今日、隼人とあってからの事を思い出すが、やはり自分が何かマズイことをしてしまったようには思えない。
 
僕が部屋に帰ってきたときは、珍しく自分から抱きついてきて、
僕の欲望に火を着けるようなキスをしてきたのは隼人の方だというのに……、


だが、途中から隼人が行為を嫌がりだしたのも事実だ。
 
 
 
…一体僕が何をしたっていうんだ、
 
 
「……はぁ、」
 
 
ため息を吐くと、とたんに震える隼人の肩。
 
 
「…隼人、言わなきゃ分からないよ。」
 
 
「……俺が言わなきゃ、分かんないのかよ…」
 
 
 
「……」
 
 
やはり言うつもりはないのか。
僕に考えろ、と言ったって、
思い当たる節が全くない。
 
 
 
「…分からないってば、隼人教えて。」

 

「……」

 

「はぁ、……もう良いよ、めんどくさい。」
 
 
 
「っ、」
 
 
「…帰る。」
 
 
 
 
ベッドから起き上がり、床に散らばっている服を拾い集める。
 
 
隼人との行為をし終えた後、後始末もしずに帰ったことのない僕だが、
今日の隼人の相手はこれ以上しても無駄だと悟り、
このまま隼人を放置するのも気が引けるが、長期任務から帰ってきて疲れているのも事実。
これ以上構ってやる余裕もない。
 
 
 
 
「じゃぁね隼人、本当帰るから。」
 
 
「……」
 
 
「……はぁ、おやすみ。」
 
 
 
――――バタン、
 
 
僕が出て行くまで、こちらを振り向きもせず、
隼人は一言も発することはなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(なんなの本当………、)
 
疲れて急いで帰ってきたのに、
誘ってきたかと思えば、急に怒り出すなんて。
 
 
 
 
めんどくさい。
ほかっておけばいい。
 
 
そう思うのに、自分の足は、この部屋から遠ざかろうとはしない。
 
 
(――――惚れた弱み…か、)
 
 
 
それに、もし怒らせたのだとしたら、隼人は黙ってなんていない。
きっと怒鳴りつけてくるだろう。
 
…と、いうことは…
 
 
(傷付けた…かな、)
 
 
何を?と考えても思い当たる節は無い。
だけど、僕が隼人を傷付けたことは多分間違いないだろう。
 
 
 
 
 
 
(僕は本当に何をしたんだ…?)
 
 
 
 
今すぐにでも眠ってしまいそうな頭を必死に動かして、自分にあったのであろう落ち度を必死に探す。
 
 
 
(……分からない。)
 
 
ズルズルと扉を背にしてその場に座り込む。
 
 
すると、中からグスっと鼻をすする音が聞こえる。
 
 
(……泣かせちゃった、か…)
 
 
考えたって身に覚えだって無いし、
泣かれるなんて一番めんどくさくて関わりたくなんて無い。
 
 
でも、
 
「―――――隼人、」
 
 
 
キミだけは別。
 
 
 
「隼人、」
 
 
閉じたドアを再び開ける。
ベットに座り、驚いたように目を見開く隼人に近づく。
 
 
「なっ、」
 
 
 
「隼人、」
 
 
驚いて、肩を震わせ、シーツを肩まで引き上げる。
 
 
 
「帰ったんじゃ…」
 
 
 
「キミをほかって帰るなんてできるわけないでしょ、」
 
 
「…っめんどくさいって言ったじゃん。」
 
 
「言っただけ。君だけは特別。」
 
 
「………嘘つき、」
 
 
「?君に嘘なんてつかないよ。」
 
 
「…嘘、」
 
 
「…何が?」
 
 
「俺がっ、特別ってとこ…」
 
 
 
…何を言ってるんだこの子は。
君が特別だなんて、誰よりも一番君自身が知っている事でしょう?
 
 
 
「…隼人、言ってる意味が分からない。ちゃんと説明してよ。
でも、あんまり理解できないようなこと言ったら怒るからね。」
 
 
 
「…いやだ。言いたくない。」
 
 
 
「…隼人、」
 
 
 
「嫌だってば…」
 
 
 
「…本当、今この状態が君以外だったら容赦なく咬み殺してるところだよ。」
 
 
 
隼人だからまだ耐えられるものの、こんな要領の得ない会話なんて、この子以外だったら即効放棄してる。
 
 
 
「…俺だけじゃないくせに、」
 
 
「……?」
 
 
 
「っ他に、女いるんじゃないのかよ!」
 
 
 
「……は?」
 
 
 
「っ、」
 
 
 
それだけいうと、堰を切ったように涙を流す彼に、意味が分からず動揺する。
 
 
「は、隼人…そんな事で怒ってたの?」
 
 
「っそんなことってなんだよ!」
 
 
あ、しまった。
言い方が完全に不味かった。
隼人の怒りに拍車を掛けてしまった。
 

 

「俺はっ、俺にはお前しかいないから…!お前にも俺しかいないと思ってたんだよ!
でもっ、お前は違うんだろ…!!」
 
 
 
…言っている意味がやはり分からない。


「…僕には隼人しかいないけど。」
 
 
「っ嘘つくな!」
 
 
「ちょっと落ち着いてよ。嘘なわけないでしょ。」
 
 
「っ落ち着いてる!」
 
 
「いや、本当に隼人の言っている意味が分からない。」
 
 
 
この子は一体何を勘違いして、何を思いつめて泣いているんだろうか。
 
 
「っ俺の他にも、そういうことする相手がいるんだろ、…」
 
 
「…そういうことって、セックス?」
 
 
「……」
 
 
 
…黙秘は固定と取っていいのだろう。
僕が隼人以外の女を抱いているって…?
 
 
 
「そんな訳ないでしょ。意味が分からない。
何でそう思ったの?」
 
 
「……」
 
 
「隼人、」
 
 
「……」
 
 
「早く言いなよ。」
 
 
「っ、だって…」
 
 
「うん、」
 
 
 
「だって、恭弥の背中にっつ、つめの跡が…」
 
 
「爪の跡…?」
 
 
本当に身に覚えが無くて、ベットの近くにおいてある鏡で、自分の背中を確認する。
 
 
 
(……これのことかな?)
 
 
 
確かに、背中にはうっすらと引っかき傷のようなものが残っていた。
 
隼人と最後にあったのは数ヶ月も前のことだし、確かにこれは隼人につけられた傷ではない。
だけど、
 
 
 
「…隼人と離れてる間に、他の女を抱いたことなんて一度も無いよ。」
 
 
 
「っ、でも…」
 
 
「信じてよ隼人。」
 
 
「っ、……」
 
 
 
「僕には隼人だけだよ。10年間も一緒にいるのに、僕がキミの事セフレとしか思っていないとでも思ったの?」
 
 
「そ、うじゃないけど…」
 
 
「じゃぁ何、」
 
 

自然と強くなってしまう口調は許して欲しい。
ずっと隼人だけを愛し続けてきた僕の気持ちを完全に無視して泣くなんて許せない。


 
「ずっと離れてたから、その間にっ」
 
 
 
「他の女の所にでもいったと思ったわけ?」
 
 
「っ、」
 
 
 
あぁ、それで服を脱いだ途端、行為を嫌がったのか。
 
 
「確かにね、僕も男だし、誰かを抱きたくなる時だってあるさ。」
 
 
「っ、」
 
 
「でもね、隼人。もしただの欲求不満なら、好きでも無い男を抱くなんて面倒なことしない。そんなことするくらいなら、その辺の女でも抱く。
でも、僕はキミを選んだ。好きだからだよ隼人、」
 
 
「、」
 
 
「だからもう泣かないで。ちゃんと僕にもキミだけだから。
ほら、立って。まだ後始末してないんでしょ、シャワー浴びるよ。」
 
 
 
「っきょうや、」
 
 
「ん?」
 
 
「ご、めん…」
 
 
 
「……いいよ、僕こそごめんね。不安にさせたし、酷い事言っちゃった。ほら、もう泣かない。」
 
 
「うっ、」
 
 
 
「……隼人、今日はシャワー浴びて、二人で寝よう。それで、朝起きたら、一日中イチャイチャしよう。」
 
 
「…うん、」
 
 
 
 
「あと、この背中の傷は他の女につけられたとかじゃ絶対に無いから。信じて。」
 
 
 
「…分かった。」
 
 
 
 
 
全く。僕をこんなにも振り回して、こんなに面倒な手間を掛けさせるなんて、本当良い度胸してるよね。
 
 
それでも、離れられないのは…
 
 
 
(キミが僕の、特別だから。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
End
 
 
 

more...!

殺したいほど、





俺は今、すこぶる機嫌が良い。
いつもは眉間によっている皺だって、一切ないし、口元だって緩みっぱなしだ。




だって、滅多に外に出掛けたがらない雲雀が俺を映画に誘ってくれたのだ!




「ふんふ〜ん♪」


「…ちょっと隼人、はしゃぎ過ぎ。」


「ん〜?だって、ふへへ」


「全く…、」


ため息を付きながらも殴ったり怒ったりしないあたり、やはり雲雀も機嫌がいいのだろう。



「なぁなぁ雲雀!今日は何の映画見るんだ?」


「…人がグチャグチャになりながら死に悶えるやつ。」


「………」


あ、そういう系っスか。

俺最後までちゃんと見れるか…?
怖くわないんだけど、ちょっと苦手なんだよな…
いや、本当に怖くはないんだけども!


「何、隼人黙っちゃって。もう怖くなったの?」


「なっ、怖くねーよ!むしろ笑っちゃうぜ!」


「…笑うシーンは無いと思うけどね。」



うだうだしながら映画館につき、窓口で券を買う。


雲雀が来た、というだけで券売りのお姉さんが顔を赤らめたり、お金は要らないという店員に無理矢理お金を払ったり、(俺と遊ぶときは、必ず支払うと決めているらしい。)いろいろなハプニングが起こったが、上映時間にはぎりぎり席に着き、照明が落ちる。



「…隼人、」



耳元で呼ばれ、顔を向けると、ちゅっと、触れ合うだけのキスをされた。


「なっ、おい…!」



「大丈夫。暗いから見えないよ。それよりも…怖かったら僕の手握ってもいいから。」

口端を持ち上げるだけの笑みを寄越され、カッと顔に血が上る。


「だっ誰が握るか…!!」


視線を前に戻し、画面を見ると、隣でクスリと笑われた。






*******************



「おもしろかったね。」


「ぉ、おぅ…」

何が面白かったんだ。こっちは気分が悪いっつーのに。

映画の内容は、一人の男が、最初は自分の恋人を殺し、そこから何の関係もない多くの人をあの手この手で惨殺し、最終的に自分すらも、自分の手で殺す。という俺から言わせてもらえば、なんでこんな映画を作ったんだ、という様な内容だった。



「怖かったなら、手握れば良かったのに。」


「怖くなかったっつーの!」


「嘘、隣でビクビクしてたくせに。」


「っ、してねーよ!」


「くくっ、」


ちっ、ビクビクしてたよ悪ぃーかよ!
あんなグロテスクな映画なんて凝視し続けてられるお前の神経のがもっと怖いけどな!


「ねぇねぇ、僕としては、途中であった金髪の男を殺すシーンが一番好みだったんだけど、あの、チェーンソーで殺すのかと見せかけて…、」

「わーわー!もうやめろ言うな!!」

「え〜、言わせてよ。」


「やだっつってんだろ!」

「怖いから?」

「っそーだよ!だから言うな!」


「くくっ分かったよ。」


ちくしょう。俺をからかって遊んでやがるコイツ。
普段なんて、滅多に笑わないくせに、ニコニコほどしてないものの、目元が優しく緩んでやがる。

ちっ、その緩んだ目元を元に戻せ。
すれ違う女どもが、頬赤らめて、てめぇのこと見てんだぞ。気づけよアホ。

「…お前なんてパトラッシュで号泣するくせに。」

「…隼人、それは禁句でしょ。」


おっ、ちょっとムっとした。



「何ニヤニヤしてるの。物陰にでも連れ込まれたいの?」

「…いや、すんません。」

「ふんっ、ほらエレベーター乗るよ。」


ちょうど着いたエレベーターに乗り込み、5階を押す。


「ついでだから買い物して帰ろう。今日は何かを抱いてないと寝られない隼人に抱きまくらを買ってあげよう。」


「っ、寝れるっつーの!」

「…だっていつも抱きついてくるじゃない。」

「……」

「何、あれ無意識だったの?」

「……」


「ふーん」


あ、また嬉しそうな顔してやがる。
エレベーター、こいつと二人でよかった。
こいつのこんな嬉しそうな顔、他の奴になんて見せたくねぇしな。








――――――ガコン、

「うおっ、」
「わ、」 <
br>
「………」

「………」

「…止まった?」

「…止まったみたいだな。」


「……全く、何なの。」


そう言って非常用ボタンを押す。

『はい、どうされましたか?』

「エレベーター止まったんだけど。」

『そうですか。すぐに救助に向かいますので少々お待ちください。』


「そう、早くしてよね」


「うわー…なんか本当に閉じ込められてるって感じすんなー」

「馬鹿な感想はやめて。閉じ込められてるんだよ。」

「…これで電気まで切れるとか、うわー…」


「…もしかして怖いの?」

「………ぃゃ、」


「え?本当に怖いの?」


「………うっせ、」



「くくくくっ、」


「おまっ、笑うな!」


「くくっ、そうだよね。あんな映画見たばっかりだもんね。ほら隼人こっちおいで。そんな淵にいても怖いのは直らないよ。」


「……別に怖くねーけど…行ってやるよ。怖くないぞ!さ、寒いだけだからな!」


「…そう、早くおいで。」


地面に座り込んでいる雲雀の股の間に挟まれるようにして座る。
後ろから抱き込まれる形っつーのは何とも恥ずかしいが、怖さは若干収まるので、まぁいいとする。




「…ねぇ隼人、さっきの映画の話なんだけど、」

「それはもういいって…」

「そうじゃなくて。その金髪の男がさ、どれだけ切り付けられても、相手を睨むその姿が、なんかキミみたいだなーって」

「…?」

「そう思ったらさ、なんかその、殺人鬼の気持ちが少し分かるっていうか…」


「は?」


「いや、キミを殺そうとしたらあんな感じなのかなって思ったら、ちょっと…本当にちょっとだけ試してみたくなった。」


「…おい、」


「あんな感じでキミを殺すんだとしたら…凄く興奮するだろうなって…」


「っおい!」

ぐっと、俺の体に回された、雲雀の腕の拘束が強くなり、恐怖で体が震える。

「ひっひばり…!」

雲雀の声が本気を含んでいることを感じ、両腕の拘束から抜け出そうと試みるが、コイツの腕力に叶う筈もなく、無駄な抵抗に終わる。


「…冗談だよ。そんなに怯えないでくれる。
…若干傷つく。」


…冗談?


「っ冗談に、聞こえねぇんだよ…」


「…ちょっとだけ本気だった。」

嘘だ。ちょっとなんて嘘だ。
ほとんど本気だったじゃねぇか。


「8割ね8割。」


そう言って、ようやく腕の力が弱まる。

8割って…過半数超えてるっつーの。


「もう、映画よりもお前が怖ぇよ。」


「そうだよね。ごめん。」


「……やめてくれよ、たのむから。」


「やらないよ。キミが死んだら耐えられないもの。」


「そっかよ…」

体を入れ替え、前から向き合う形になる。


「死なないでね、本当に。」


「あぁ、死なないって。」


「ならいいよ。」


今度は正面から優しく抱きしめられる。


「隼人、」


ぐりぐりと肩口に頭を押し付けられる。

「…雲雀、お前本当にどうした、」

「別に何でもないよ…、」


そう言われ、顎を持ち上げられる。


「隼人…、」

あ、キスされる。
そう思い目を閉じかける――――、



ドンドンドンドン!!!
『大丈夫ですか!?今ドア開けますので!!』


「っおわぁぁ!」

ガン!


あ、あぶねぇ…こんなところで雲雀のエロい雰囲気に流されるところだった。

突如の出来事に、驚き過ぎて、先ほどの現状を打破してしまった。
恐る恐る雲雀のいた位置を見ると、そこには雲雀の姿はなく、その目の先にある壁に頭をぶつけていた。


……さっきのガンって音はもしかして…、

「隼人…僕を突き飛ばすなんていい度胸だね…」


ひぃぃぃぃぃ!


「それどころか頭突きまで食らわすなんて…やってくれるじゃない。」


…どうやら俺は、雲雀に頭突きを食らわした後に、突き飛ばし、その衝撃で頭を壁にぶつけたらしい。


「…、ココから出たら、買い物は止めだよ。家に帰ろう。」


「……」

「死にたいと思うほどの天国見せてあげるよ。」







救助の皆様、もういっそこのまま助けないでください。



この後、閉じ込められていたのが雲雀だと気づいた救助隊に死ぬほど謝られ、もともと機嫌が悪くなっていた雲雀にそれぞれ軽く咬み殺された後、

言われたとおり天国…いや、地獄を見せられたのは言うまでもない。








End

more...!

初恋の人11

 

恭弥と結婚してから数年、
今は大企業の若社長となった恭弥と、時をともに過ごし、もう何年になるのだろうか。


婚約を破棄してしまったり、襲われかけたり…といろいろあったが、今も風との仲は続いている。

 

 


「恭弥、今日は風との会食の日だろ。いつまでそうしてるんだよ。」


銀色の髪を持ち、両目が黒の女の子を抱き上げる夫に、早く準備をするように声を掛ける。

「分かってるよ。」


「ほら、隼、パパを放してやれって。」


「やー、」


「やー、じゃなくて…」


「隼はママに似て、甘えん坊だね。」


「なっ!俺は甘えたりしねーよ!」


「どうだか。
ね、隼。」


「ねー、」


やけに仲のいい二人に恭弥にはとてつもなく苛つくが、可愛い自分の子供を見ていると、怒り出すこともできない。

 

「……ママ、いじめちゃだめ。」


自分が恭弥と隼に虐められているとでも思ったのか、とてとてと後方から走ってくるのは、黒い髪と緑の目を持つ、男の子。

 

「恭、」


「パパ、早くいきなよ。」

ムっとしながら、恭弥を睨むこの子は、本当に恭弥と瓜二つだと思う。


「キミ…パパに向かってなんて言う口利くの。」


いやいや、お前らそっくりだよ。と言ってやりたいが、これ以上恭弥の機嫌を損ねても面倒なので、何も言わず、成り行きを見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、恭ももうやめなさい。恭弥、本当にそろそろ行かないと。」


「うん、分かってるよ。
ほら、隼、恭、パパがいない間、ママの言う事よく聞くんだよ。」


「はーい」
「…うん」


「じゃぁ、行ってくるね。夕方には帰ってくるから。」


「うん、気をつけて。」

2人の子供が見ていないことを確認してから、
朝の日を浴びながら、どちらともなく口付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしも、キミとあの日あの時出会わなかったら、きっと今の僕たちはココにはいない。
だけど、キミと出会わなかった未来なんて、想像できないし、ありえない。


だって、きっとコレは運命。


キミと出会うことのない世界なんて、絶対にない。

 

キミの運命の相手は僕しかいないんだ。
だから僕が、キミを幸せにする。

 

だれかに誓った訳じゃないけれど、
自分に誓った言葉だけは、必ず守る。

 

だからずっと、僕の側で笑顔でいてもらうよ。

 

 

 

 

 


初恋の人、End

more...!

初恋の人10

 


彼女の父親に、婚約の変更を頼みに行き、かつてないほど緊張した僕は、
部屋から出るなり、そのまま床にしゃがみこんでしまった。

 


(……………かっこ悪い。)

 

この僕が、
この僕が、人の親に挨拶しに行くだけで立っていられないほど緊張してしまうなんて…!

 

そんな僕を珍しく思ったのか、自分もしゃがみこんで下から覗き込んでくる隼人に、顔を見られてしまうのが嫌で、無理矢理腕の中に納める。

 


「恭弥…、」


不安そうに、話しかけてくる彼女には悪いが、今は顔を上げられない。
絶対真っ赤だから。こんな姿、見られたくない。

 

だけどきっと、心臓の音までは隠せていないだろうから、僕の気持ちは彼女に伝わっているんだろう。

 

 

 

 

 

 


僕を、こんなに乱しておきながら、
ただ、胸に抱いているだけで、僕を安心させることが出来るなんて、

 

 


そんな存在、キミしかいないよ――――――、







++++++++





「それにしても、両方ともすぐ承諾してくれて良かったよなー、」


帰りの車の中で、隼人のホッとした間延びしている声がする。


「うん、本当……」


「修羅場みたいにならなくて良かったよな!」


…僕と風は、若干なりかけたんだけどね。

 


「隼人、その緩んだ頬なんとかしなよ。運転手に見られても知らないよ。」


「おっと、それはマズイ。」

 

やはり、隼人の家の使用人でも、崩れた態度を見せないのか…、
よほど、厳しく育てられたんだろうな。

 


「っつーか、なんで俺、恭弥の家に向かってんだ?」


「そんなの、今日も泊まるからに決まってるでしょ。」


「え!?」


「隼人、昨日は手出さないって約束したから何もしなかったけど、今日は約束しないから、覚悟しといてね。」

 


「ちょ、え?冗談だよな?…おい、恭弥?おいって!」

 

何も答えないでいると、隣でぎゃんぎゃん喚く彼女。


片手で、彼女の口を塞ぎ、
「あんまり騒ぐと、ここでやっちゃうよ…?」
互いの顔が、ぼやけるほど、近く顔を寄せ、そう囁くと、

 

ボンっと音がしそうなほど、顔を赤くしてワナワナと震える。

 

そんな彼女に含み笑いを返し、視線を窓の外へと移した。

 

 

(―――――だってこれ以上見てたら、理性が抑えられないから)

 

屋敷に着き、母たちがいるであろうリビングにへと、向かう。

 

 

 

 

 

リビングに着くと、やはり人の気配がある。
迷わずそのドアを開くと、既に用意された食事がテーブルの上いっぱいに並べられていた。

 

 

「あら、おかえりなさい恭弥さん。隼人さん。」


「おかえり、恭弥、隼人」

 

「ただいま、……どうしたのこの料理、」


「あぁ、父様がせっかくだから、もう一度婚約パーティーをしようと言い出したので。」

 

「…そういうことね。」


イベント好きの父のやりそうなことだ。
特に驚きもせず、昨日と同じ席に座る。ただし、隼人の席は、僕の隣にしてあるが、

 


「隼人さん、どうだったの?上手くいった?」


「はい、大丈夫でした。」

 

母と話す隼人を見ると、頬を赤らめ、嬉しそうに話している。

 

「ちょっと、隼人……、僕と話すときより嬉しそうなのは気のせい?」

 

「は…?何言ってんだ恭弥?」


「本当、何いってるのかしら恭弥さん。」


「……母様にまで、嫉妬するなんて、」

 

「……うるさいよ、」

 

3人にそれぞれ言われ、なんとなく居心地が悪くなる。

僕が嫉妬?
そんなのするに決まってる。

 

だって、やっと手に入れた僕だけの女の子なんだから。

 

 

そう言ってやると、途端に赤くなる隼人に、あきれたような顔をする風。そして母までもが、珍しいものを見るかのように驚いている。

 

 


「…恭弥。そう言うことは、二人の時に言ったほうが良いと思いますよ。」

 

「………」


確かにそうだ。
現に今、真っ赤になった隼人が僕を睨んでいる。

が、その目には涙がうっすらと溜まっていて、可愛い。


そんな状態の隼人を風に見せてしまうなんて…、


「……ちょっと風、隼人見ないで。」

「嫌ですよ。せっかくなので見ておきます。」


「駄目。見ないで。」

「いいえ、見ます。」


「……(怒)」


「あぁ、可愛いですね隼人。」


「…っ、母さん僕達のご飯、後で部屋に運んでおいて、」


そう言い、これ以上は矢とを見られるのが嫌で、隼人を連れて、部屋を出る。

 


扉が閉まるときに、風と母さんの笑い声が聞こえた気がするが、
それを無視し、足を進めた。

 

 

今だ羞恥で黙り込む隼人を無理矢理部屋に押し込め、ソファーに座らせる。

 

「…隼人、」


「………なんつー恥ずかしいこと言ってんだよ、」


「うん、あの場で言うべきじゃなかったね。ごめん」


「お前謝る気無いだろ!」


まぁ、だって全部事実だから、誤る気なんて確かに無い。

 

 


「せっかく、…お母様がご飯用意してくれたのに…、」

 

「…一緒に食べたかったの?」


「そりゃ、」


「僕と二人じゃ不満なの?」

 

「…っそーゆう訳じゃないけど、」


「訳じゃないけど?」


「…お前とは、…その、これからも二人でなんていくらでも食べられるじゃねーか。」

 


ワォ、そういう意味ね。

まったく、可愛いこと言ってくれるじゃないか。

 


「…言っておくけど、今のは隼人が悪いんだからね。」

 

そう言い、横抱きにし、隼人をベッドへと移す。所詮お姫様抱っこというやつだ。


「っぅわ、おい!」


「僕を煽るなんて、上等だね。覚悟して。」


「ちょっと待て雲雀!ご飯、冷めちまう!」


「大丈夫、冷めてもきっとおいしいよ。」


「、じゃぁせめてシャワー…!」


「やだ。隼人の味するからそのままでいい。第一そんなに待てない。」


「ちょ、雲雀…、っほんとに…」

 

「…初めてなの?」

 

「………」

 

僕の質問に真っ赤になりながら、小さく頷く。
聞かなくても分かっていたけど、やはり、良い所の娘なだけあって、やはりそういった事は一切経験がないのだろう。

 

 

「…隼人、大丈夫。絶対優しくするから。」


「…でも、俺、何したらいいか分かんねぇ、」

 

「何もしなくていいよ。僕がやるから。」


「で、も………」

 

焦れる隼人の首筋にキスを落とす。

 

「隼人、」


名前を呼ぶと、自然と交わる視線を、どちらとも外すことなく口付ける。

 

「…っ恭弥、」

 

その言葉を最後に、隼人はそれ以上何も話さず、僕に身を任せた。







+++++++

 

 

 


半ば、失神するように僕の腕の上で眠ってしまっている彼女の頬をそっと撫でる。


優しくするとは言ったものの、途中から、自分の欲求が求めるがままに、彼女を抱いてしまった。
僕もまだまだ修行が足りないな。

 


無理させてしまい、目尻に残る涙の痕を、指先で拭う。
スースーと寝息を立てる、彼女の首筋には、先ほど自分がつけた、無数の所有印。
白い肌に、よく生える紅が、彼女の美しさをより一層引き立てている。


その無防備な姿に、もう1度という欲求が沸いてきてしまう。

 


今まで、抱いた女は何十といる。だけど、僕の理性をここまで崩し、余裕を無くさたのは、彼女が初めてだ。


(だって、今まで、本当に好きな女を抱いたことなんて1度も無い。)

 


そっと瞼にキスをすると、不意に開く瞳。

 

きっとまだ、寝ぼけているであろうキミに、どうしても今伝えたいことがある。


キミが次に目覚めたとき、覚えていなくたっていい。
いつか、思い出してくれなくてもいい。


ただ、聞いて――――、

 

 


「僕に、たくさんの初めてを与えてくれたキミに、
僕の未来を全部あげる。


だけど代わりに、キミが安らげる場所を、僕があげる。
寂しいときに甘えられて、嬉しいときに笑えて、悲しいときに泣ける場所。


だから、キミの未来を僕にちょうだい。
絶対、幸せにしてみせるから。」

 

 

 

 


end.

prev next